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第1章8 苦手の克服

「じゃあ、まずはヘルクレスに伝えにいって、スピカ様も旅に同行するから国王様に許可をもらいにいかないとね。」

「わかった。」

「わかったわ!」

 と、2人が口を揃えて言う。

「ヘルクレスはどこにいるんだ?」

「多分今はハーマル大森林で星獣の討伐をしていると思うよ。」

 聞き慣れない『星獣』という単語にアストは眉間に皺を寄せる。

「その、星獣ってやつはなんなんだ?」

「ミアリス私に任せて!アスト君、星獣っていうのは人を襲う大きい動物のこと。星獣にも強さのランクがあって、下星級、中星級、上星級、極星級、凶星級があるわ。その上星級から上が星をもってる。」

 アストはスピカの説明を聞いてやっぱ魔獣みたいなやつはいるんだなと思い、旅も気楽なものではないと改めて感じた。

「ありがとう。すぴか…さん?」

「っ!スピカでいいわ!」

 スピカはアストに名前を呼んでもらえて嬉しそうな顔をした。

「多分もう少しでヘルクレスが帰ってくると思うから待ってよう。」

「ああ。」

「うん!」

 ミアリスの声がけに2人が口を揃えて言った。


 しばらくするとヘルクレスが帰ってきた。

「おーい!ヘルクレスー。」

 と、ミアリスが呼ぶ。

「ミアリスにアスト、スピカ様まで?どうしたんですか?」

「ミアリスから報告したい事があるらしいの。」

「ミアリスから?」

「そうなの。実はアストと星の契約を交わしたの!」

「星の契約!?成功したと言うことか!なんとめでたいことだ!」

 と、ヘルクレスは信じられないものを聞いたと言う顔でアストとミアリスを見ている。

「そうなんだ。だからそれを伝えようと思ってな。」

「そうか。伝えてくれてありがとう。」

「それともう一つ。ミーとアストとスピカ様で蠍座を探しに行く旅に出ることになったの。」

「え!?スピカ様まで!?そんな急に…でも、スピカ様の意思というのであれば尊重致します。それと、提案がごさいます。」

「何?」

 と、スピカが息を呑む。

「一ヶ月後にしたらどうでしょうか?アストも戦えるように私が剣の基礎を教えます。スピカ様は星冠を授かったばかりなのでその力がうまく扱えないと思います。ですから、二人とも少し修行をしてみたらどうでしょうか?」

「そうね。ミーもその方が良いと思う。ミーもアストの力を使いこなさなくちゃ。」

 と、ミアリスがその提案に同意する。

「剣を使えるようになるのか!それは楽しみだ!」

 と、剣を使えることを聞いて興奮しているアストも同意のようだ。スピカは…

「私もそれが良いと思うわ。そうしましょ!」

 と、三人が同意する。

「では、そうしましょう。私はこれで。アスト、明日から剣の修行を始める。気合を入れておけよ。」

「ああ!」

 と、アストが元気よく答えた。


「一ヶ月後っていっても、国王様には挨拶に行った方がいいと思うんだけど。」

「私もそう思うわ!早くお父様に伝えに行きましょ。」

 と、ミアリスの意見に同意したスピカは勢いよくアストの青い右腕に抱きついてきた。

「アスト君?腕に抱きついも良…」

 と、そこまで言ったスピカの声が違う声に掻き消される。

「うわぁ!やめろ!」

 と、アストは怒号と共に右腕に抱きついているスピカを振り解いた。スピカが倒され「きゃっ!」という悲鳴を上げて地面に尻餅をついた。そしてスピカは桃色の綺麗な目に涙を浮かべ、

「ご、ごめん…アスト君…」

 と、謝罪したが、アストには聞こえていない。もう既にアストは走り出していて、この場にいないからだ。

「ちょっ!アスト!」

 とミアリスがアストを呼ぶが聞こえない。アストは恐怖の対象から逃げることに必死なのだ。

「うぅ〜ごめん、アスト君。」

 と大泣きしながらアストに謝るスピカ。それをミアリスが慰めるようにして、

「スピカ様!ごめんなさい。アストは美少女が苦手だと伝えていなかったミーが悪いです。申し訳ございません。」

「いいの、ミアリス。もう私、嫌われちゃったみたいだから。うぇ〜〜〜ん。」

 と、スピカらしくない弱音を吐きながら大泣きしている。

「と、とりあえずアストに謝りに行きましょう?」

「ゔん、わかったわ。」

「星の契約によってアストの位置がわかります。おそらく、部屋に戻ったのでしょう。ほら、行きますよスピカ様。」

「ゔん。」

 と、涙でぐちゃぐちゃになった顔を拭ってスピカが立ち上がった。


 一方その頃アストは…

「反射的に倒してしまった。申し訳ないことをしたな。」

 と、部屋で反省していた。アストとってスピカは160ほどある巨大な虫みたいなものだ。それがいきなり抱きついてきて、アストは耐えられるわけがなかった。そんなことを考えていたらドアをトントン叩く音がした。

「入っても良いですか?」

 と綺麗な声が聞こえてきた。スピカの声だったのでアストは身を固くした。

「い、いいですよ。」

 アストは謝りたいと思い、入室を承諾した。

 ガラガラとドアが開いてスピカとミアリスが入ってきた。

「「ごめんなさい」」

 と、二人の声が揃った。スピカとアストは驚いて目を丸くしている。

「さ!お互い謝ったんだし、ここは握手で仲直りしよう!」

 と、ミアリスは握手を勧める。アストはスピカの方を見て、目がほんのり赤くなっていて泣いたことがわかった。だから、これ以上泣かせるのは可哀想と思い、握手することに渋々同意した。そして右手を出す。

 そのアストの行為に身を丸くし、嬉しそうに

「いいの?」

 と、アストに確認した。

「あ、あぁ。」

 二人の右手が1つになり、仲直りした。しかし、二人の顔は対照的で、スピカはとっても嬉しそうににっこりしているが、アストは視線をスピカからずらし、ミアリスの方を助けを求めるような目で見ている。

「まだまだ、苦手を克服するのには時間がかかるかな。」

 そう呟き、ミアリスはアストの助けを求める目を無視して微笑ましげに二人を見ていた。

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