第2章2 母さんと親父
冒険2日目の朝を迎えた。
「んんー。朝かー。」
と両腕を伸ばしながら体を起こす。すると、うしろから声をかけられた。
「おはようアスト。」
と、笑顔で朝の挨拶してきたのはふわふわ浮いて、川から水を汲んできていた金髪が水面みたいに綺麗に光を反射している美幼女のミアリスだ。
「ミアリス、おはよう。」
そうアストも挨拶を返すと隣から小さい声が聞こえてきた。
「あ、すとくん、す、き…」
アストはスピカが寝言でも自分に告白してきて少し驚いた。
「アストー。スピカ様起こしてあげて。朝にとても弱いからミーが起こしても多分起きないと思う。」
スピカの朝が弱いと言うのは初めて知った。王宮では毎日アストより早く起きて、ミアリス曰く、ずっとアストの寝顔を眺めているらしいのだ。よほど昨日は疲れたのだろう。
「スピカー。朝だ、起きろー。」
「んんー。ミアリスやめてぇ。まだねるぅ。」
「ミアリスじゃない、俺はアストだ。アスト。」
「ア、スト?アスト君?わぁ!」
と、勢いよく飛び起きる。これにはアストも目を見開いて驚きを隠せていない。
「お、おはよう。スピカ。」
「アスト君!おはよう。ごめんびっくりさせちゃったよね。」
と、少ししょんぼりしている。
「大丈夫、大丈夫。俺も今起きたばっかなんだ。ミアリスが早く起きて水を汲んできてくれてる。」
「そうなんだ。ありがとう、ミアリス。」
「いえ。このくらいお任せください。スピカ様。」
このミアリスの発言にスピカは目を細める。
「あー!ミアリス敬語はやめるって言ったでしょ。」
「そ、そうでした…そうだった。ごめんなさ…ごめん。」
「そうそう、自然体のミアリスが一番だもの。」
と、満足そうにスピカが微笑む。
「朝食は持ってきた缶を食べよ。」
「ああ、分かった。用意しとく。」
と言い、アストが動き出す。しかし、立ったアストの右手が引っ張られ、止められる。
「アスト君、起こして?」
と、スピカが上目遣いでアストを見る。アストは渋々スピカを引っ張り上げる。軽いので大した力はいらなかった。
「ありがとうアスト君。私も手伝う!」
「助かる。」
そう言い、冒険が始まって初めてのアストとスピカの共同作業で、スピカは少し嬉しそうだ。
途中で水を汲み終えたミアリスも朝食の手伝いに参加し、早く準備を終わらすことができた。そして、魚が入っている缶詰、昨日の夜の焼いたけど食べきれなかった雑草みたいな草を食べた。
「この魚、くせぇな。」
「アスト、文句言わないで。しょうがないでしょ?」
「すまんすまん。わかったって。」
アストはツナ缶を想像したが、実際は少し臭い魚の缶だった。そして改めて、日本の生活が幸せなものだと思った。人間以外は。
そういえば、アストは転生というより召喚だったので、アストがいなくなってから時間は流れているのか。もし、流れていたら絶対に母さんが心配する。ちなみにアストは一人っ子である。母さんが自分のことで心配してほしくない。母さんはあの日から女手一つで育ててくれた。アストが中学2年生のとき、親父は行方不明となった。朝は普通に車で通勤して行ったが、もう帰ってくることはなかった。今でも親父の顔は覚えている。一度でいいから親父に会い、不登校になって心配かけてごめん。と謝りたかった。実はアストは美少女に嘘告白をされた日から不登校になった。それを親父と母さんは許してくれた。『クラスも変わるから3年になったらちゃんと学校行くんだぞ。2年のうちは家で休んでていいから。そうよ、アストの気持ちが一番だからね。』と、言ってくれて嬉しかった。涙が止まらなかった。だが、その次の日出勤してから親父は帰ってこなかった。だが親父がいなくても親父と約束したことは忘れない。3年になって再び通い、勉強した。
「アスト君?どうしたの?目の端に涙が溜まっているけど。」
「え?ほ、本当だ。ごめん、なんでもない。」
と、泣いていると分かりすぐ涙を拭った。
「疲れたら言うんだよアスト。無理はさせないから。」
「悪いな。心配かけて。」
そして朝食が終わり、再びハーマル大森林を進み始めた。
「そういえば、この森には森の守護者がいるよ。けど、こんな広い森で会う確率は低いから大丈夫だとは思うけどね。もし会ったら戦いは避けられないだろうね。」
「それフラグ?」
と苦笑しながらアストが呟いた。
瞬間、『キキーーー!』という甲高い鳴き声が聞こえてきた。
「な、なんだ!?」
「星獣!?」
と、アストとスピカが驚く。そして目の前を見ると3Mほどある額に星のマークが刻まれたでかい猿がいた。
「これは猿荒星獣だよ。ランクは一番下の下星級だからまだ大丈夫だよ。」
「ついに星獣と出会したか。」
「は、初めて見たわ。大きい。」
と、スピカは口を開けて驚いている。次の瞬間、猿が腕を振りかざし、こちらに向かってくる。
「皆!くるよ!」
初めての星獣との戦闘が始まった。




