第2章1 冒険の初日
三人はハーマル大森林に入る前の平原を歩いている。
この冒険の目的は、ミアリスは母様を殺したシャウラ大砂漠にいるとされる蠍座を探しだし、仇を打つこと。スピカはラクバト王国から外の世界のことはほとんど本でしか知らなかったため、身をもって体験してみたいと思ったことと、アストと一緒に過ごすこと。アストはこの世界のことを知り、心の底から信頼できる仲間を得ることである。
するととつぜん、スピカが手を繋いできた。
「アスト君!一緒に森に入ろうね。」
と、スピカが上目遣いでこちらを見てくる。この一ヶ月でスピカと手を繋ぐことは毎日のようにあったので、もう慣れた。アストもスピカのことを信頼はしているので、別に嫌ではないが、嬉しいと言えば嘘になる。
「お、おう。」
三人はハーマル大森林の前に立った。
「さあ。入るよ!」
と、ミアリスが言い、三人はハーマル大森林に入った。
ハーマル大森林を歩いて3時間ほどが経つ。
「あのー。スピカ?そろそろ手を離してもらっても…いい?」
「あっ!ごめんね。わかったわ…。」
と、渋々スピカが手を離す。
「この一ヶ月で私本当にアストのことが好きになっちゃったみたい。優しいところとか、正義感があるところとか…以下省略」
「よかったねアスト。ラクバト王国の国王の娘から好いてもらえるなんてね。」
「あ、あぁ。」
アストは誰かに好きになってもらったことがなかったので、これは素直に嬉しいが、相手が絶世の美少女となると話が変わってくる。中学のあの美少女とは違うとわかっていても、まだ苦手なものは苦手だ。だが、段々と克服していこうと前向きな風に考えることはできるようになった。
「絶対この旅で、私を好きになってもらうから!覚悟しててねアスト君!」
「お、おう。」
アストはスピカに何をされるのかわからないので少し怖いが、覚悟はしておかないといけないことは伝わった。
「俺が誰かを好きになるなんて…ないと思うけどな。」と、口の中だけでそう呟くのだった。
ハーマル大森林に入ってから、10時間ほど経った。太陽のようなものは沈み、月のようなものが昇っている。昼間調達したミアリス曰く食べても問題ないとされる怪しいキノコや、アストから見たらただの雑草にしか見えない草などを三人で焚き火を囲んで焼いている。道中、サダル海に繋がっているとされる川を見つけ、それに沿って歩いているので、水はひとまず問題なさそうだ。
「このキノコ意外とうめえな。」
「いったでしょ?見た目の割に美味しいんだよ。」
「ね!美味しい。このよくわからない草も美味しいよ。」
と、アストにくっつきながら焼いた草を食べているスピカ。
「スピカ様も喜んでいただけたようでよかったです。」
「ミアリス、敬語はいいのよ。アスト君に話しかけるみたいに私にも話してほしいわ。」
「わ、わかりました…わかった。スピカ様。」
と、言いづらそうにミアリスが言う。
そんな感じで食事を終え、寝る準備に取り掛かる。アストは白色の寝袋、スピカは桃色の寝袋、ミアリスは黄色の寝袋をスピカ、アスト、ミアリスの順に並べている。王宮で寝る時もこの順番で寝ていた。両手に華というやつだろう。アストは望んではいないが。
「じゃあ、おやすみアスト君、ミアリス。」
「おやすみ。」
「おやすみー。」
といい、三人とも眠りにつき、冒険初日は幕を閉じた。




