物語は突然に
チョークが黒板の上で滑り、田中先生の声が教室の中に響き渡る。
ボーっと外を眺めていたら後ろからつつかれた。
「なあなあ建一、このあとゲーセンいかね?」
後ろの席の康介だ。
「いいじゃんいいじゃん、コインゲーでもやるか?」
康介がにやける
「それもありだなあ、でも湾岸もおもろいし…でもクレーンゲームも…こりゃあゲーセンの最終定理だな!」
二人揃ってクスクスと笑う
「おいそこの二人!授業中だぞ、静かにしろ」
田中先生が眉間のシワを寄せてこっちを睨んでくる
「すいません」
田中先生はくるっと黒板の方を向いて板書を始める。
「でもさあ、やっぱたいこもいいよなあ」
また話し始める
さすがにそろそろやべえだろ…
「いい加減にしろおま…」
先生の怒鳴り声が途中で切れたと思うと
「あっぶね!」
康介のみみぎりぎりをチョークが通過した。
「おいおいついに先生ガチギレさせたんじゃねえの?」
いろいろ言われるんだろうなめんどくせえな…と思いつつ体を前に向ける
黒板の前をみる。
「あれ?先生いねぇじゃん、どこいったんだよ」
さっきまでいたはずの先生がいない。
「どこいったんだよ」
「生徒にチョーク投げるとかやばすんぎ」
「こりゃあ開示だな」
康介がそう笑ったとき、まさにその時、
がっしゃあああああああん
ピーピーピーピーピー
外がなにか騒がしい、鈍い音が響き渡っている
「おいなんだなんだー?交通事故かあ?」
「なになに?」
クラスの全員が教室を出て道路に面している廊下の窓をみようとする。周りを見ると他のクラスもみんな覗きに来ている。
「おい…これやばくね?」
最初に見たときに出た言葉がそれだった。
眼の前の光景が信じられなかった。こんな光景見たことない
「キャーーーーーーー」
ワンテンポ遅れて女子たちの悲鳴が校内に響いた。
無理もないだろう
道路は一台たりとも走行している車はおらず、歩道に乗り上げ学校のフェンスにつっこんでいたり、電柱にぶつかっていたり、追突していたり、
「先生に言ったほうがいいんじゃないの?」
クラスのリーダー格の男子が言う
「そんなのもう気づいてるに決まってるだろ、こんな大事故」
また一人が言う
「でもじゃあなんでサイレンも何も聞こえないの?普通なら来るはずでしょ?」
陽キャ女子が言う
「ちょっと先生に知らせてくるからみんなはここで待機ね」
学級委員が職員室に向かって走っていった。
不穏な空気が廊下を満たしていた。
「なあ…田中先生なんで急にどっかいったんだ?」
一人が不安げに言う
そして視界がかすかに暗くなった
「てっ停電!?」
廊下の蛍光灯がすべて消えて薄暗くなる。
「交通事故で電球が倒れて断線したんじゃない?」
一人が言う
一気に動揺が広がる
「ねえなんでこんなことなってるのに警察も消防も来ないんだよ」
「人が全然いない…車の中にまだ取り残されてるのかも!?」
「おれ…助けに行ってくる!」
一人が声を上げる。
「じゃあ俺も…」
「俺も」
「早く助けないと…」
そのあと何人かが声を上げて最初の一人に続く
「俺も行く!」
自分も走り出した。
階段を駆け下りる。廊下を走る。上履きを脱ぎ捨て靴を履いて学校から飛び出した。
「おい、どうだ?人は?」
一人が言う
「いないな、全くもっていない…」
車内を覗いていたやつが言った
「そんなはず…」
「いったん教室に戻るぞ」
リーダー格がいった。
「わかった」
「了解」
道路に背を向け学校へ戻る。
とことことあるいて下駄箱に向かっていると学級委員と残っていた生徒が走ってきた。
「みんな聞いて!」
学級委員と残った生徒の顔がどこか暗いし涙ぐんでいるやつもいる。
「どうしたっていうんだよ」
リーダー格が心配そうに言う
「…先生が…ていうか、大人が…誰もいないの!!」
場の空気が凍りついた。
「…ちょっとまってくれよ、なんでいなくなるんだよ」
「そうだよなんで」
震えた声で問いかける
「それが…わからないんだよ…」
学級委員が小さな声で答えた。
「だから一旦家に帰って家族の安否を確認しようって言う話になったの」
一人の女子が言う
「…なるほど」
リーダー格が言う
「じゃあ、みんなで帰宅しよう、もうこれは普通じゃないことは明白だ。」
一人が声を上げた
「そうだな」
大勢の生徒が駐輪場に向かう
「いそげいそげ!!」
「もうなんなんだよ」
そんな独り言があちこちで飛び交う
「もうどうしよう…大人いないってことは電車動いてないじゃん…」
電車通学の生徒が途方に暮れている。
「とりあえず行くだけ行ってみよう?」
その生徒の友だちが言う
「うん…」
ぶっとばせ!もっと早く!早く!
俺は自転車をできる限り、飛ばした。足の骨が砕けそうだ。
道中、車は事故りまくってて、例のごとく子どもしかいない
「これはおれんだよ!離せよ!」
そんな言葉が聞こえてきた
声の方をみる。コンビニがある
「これはお店のものだよ!
「知らねーよそんなもん、大人がいなくなったら飯もなくなるってことだろ?少しでも持っておかないと」
男子中学生が必死な形相でコンビニ飯を袋に詰め込んでいた。
さっきまで止めていたもう一人の中学生も店の奥へ入っていった。在庫を持っていくのだろうか
すこしでも…急がないと!




