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7話


神騎士が異世界を謳歌する


7話


 50年に一度行われるという王宮闘技大会の参加資格を得るという事は実はこの国では大きな意味があった。俺はまだこの時には知らなかったのだがこの闘技大会の勝者もしくはその推薦者はこの国の政治の中で大きな発言権を得る事が出来る。それは国の中では王の次に政治において権力のある宰相になる権利を得られるからだ。ただし参加資格を得られるのは王の血縁者と現在国の要職に就いている者に限る。参加資格を得られた者は自分または推薦者が闘技大会に出場することが出来るのだ。

闘技大会の参加資格は特例として一般参加から1枠だけ予選を勝ち抜いた者のみ出場することが出来る。だがフィストア王国1200年の歴史の中でも一般参加から優勝した者は未だかつて一人もいないらしい。それどころか1回でも勝ち抜いたものですら数える程しかいないようだ。この大会に向け各々の大臣や王族たちは優秀な冒険者のスポンサーになったりお抱えの衛兵などを育成しているため、一般参加から勝ち抜いた参加者は殆ど勝ち目がない。しかも優秀な冒険者ほど王宮の宰相になることに魅力を感じる者が殆ど居ないため、一般参加の参加者は錬度が低い者ばかりで全くと言っていいほど今まで注目を浴びる事は無かった。



 話は今俺達が王と謁見していた場面に戻る。王は眼の前にいる人物がミネア王妃の娘だということをシーナの話を聞くまで気付いて無かったようだった。眼の前の人物がミリアだと言うことを告げられ大層驚いた様子で先程の回答をするのに困っている様子だった。すると王の隣にいた現宰相であるミゲルと名乗る男がシーナに向かって話し始めた。


「そなたは確かに元王女ミリア様に間違いない。だが3か月前にミネア王妃が死去した際に王宮との縁を切られこの城を出て行ったはずだが?それを今更闘技大会に参加させろとは虫が良過ぎるのではないか?この国に於いて闘技大会がどういう位置を示しているものなのかそなた等も知らぬわけではあるまい。そんなに参加したいのであれば一般参加枠から出場したら良いではないか。」


シーナは睨みつける様にミゲル宰相の方を見ていたが下唇を噛み、悔しそうに俯いてしまった。ミリアも困った様子で助けを求める様に俺の方を見ている。だが俺にはどうする事も出来なかった。闘技大会がどのようなものなのかですらこの時俺は知らなかったのだから。俺もどうしたら良いか判らないでいるとシーナは思い立った様に王と宰相に向かって話始めた。


「望みは何かと聞かれたので答えた迄です。今回の件の報酬としては釣り合わないのでしたら話は無かった事にして頂いて結構です。」


シーナは悔しそうに一歩下がり、出過ぎた真似をして申し訳ありませんとミリアに一言だけ言って下を向いてしまい、悔しさの余り小さく肩を震わしているのを俺は見てしまった。ミリアも悔しそうにはしていたが、気丈に宰相を鋭い眼光で見つめていた。俺もなんとかしてやりたいとは思ったが、現状がよく判っていない俺には解決策を見つける事は出来なかった。


「どうやら私達の願いは聞き届けられない様です。これ以外の望みは私達にはありません。ご迷惑をまた掛ける様な事になってしまって申し訳ありませんでした。」


そう言って俺にペコリと頭を下げミリアも一歩下がってしまった。俺も正直どうしようか悩んだが取り敢えず貰えるものは貰っておこうと思い王に願い出た。


「なんか良く判らないんですがこの二人は先程の願いの他には無い様なので、う~んどうしようかな……まあ持ってても困らないんでジュエルください。そうだな…3千万ジュエルくらいでいいです。それが無理ならSSランク以上の秘石でもいいですよ?」


俺は少しだけ吹っ掛けてみた。皇子の命の値段と比べれば安い報酬だとは思うが、大した難度でも無いクエストだと考えると破格の値段ではあるだろう。しかし先程シーナとミリアの願いを受け入れなかった事を引き合いにすればいけるだろうと俺は踏んでいた。

その額を聞いて大臣は苦々しい顔をしていた。だが先程断った手前断るわけにはいかないとでも考えているのであろう。正直俺としてはSSSランクの秘石が欲しかったのだが、この地域周辺では秘石が高級である事を鑑みてこの王宮では用意できないだろう。それならば多少妥協してでも現実味のある金額を願い出た方が勝算があると思っていた。

王も始めはかなりの金額に驚いた様子だったが、腹を決めた様に一度深呼吸して


「では報酬として3千万ジュエルをそなた等に与える。」


と言い、何やら人を呼んですぐに俺達の眼の前に3千万ジュエルを用意してくれた。俺達は王に礼を言うと魔法の子袋にジュエルを仕舞い込み改めてもう一度王に向かって礼をして謁見の間を後にした。そしてそのまま王城を出て街にある宿へ向かい、俺は二人に詳しい話を聞く事にしたのだ。



 宿に着くと既に日は傾き始めていた。だが以前シーナとミリアは俺の後ろをとぼとぼと歩き元気のない様子だった。宿に到着するなり俺はまず二人に先程の報酬を山分けしようと提案し、一人1千万ずつ均等に分けた。ミリアもシーナも要らないと一度は返されそうになったが、先立つものは必要だからとなんとか受け取って貰いその代わりと言ってはなんだがと言って二人に王宮との関係を詳しく聞くために話を聞くことにした。詳しい話の顛末はこうである。

今から約3カ月程前、ミリアの母であるミネア王妃は何者かの手によって殺された。王宮の調べでは一緒に死んでいた闘技大会に推薦するためにミネア王妃が招いた冒険者と心中したという結果だった。だがその話をミリアもシーナも信じる事が出来なかったのだ。

何故ならミリアとシーナから見たその冒険者とミネア王妃は間違いなく恋仲では無かった。確かにその冒険者とミネア王妃は古くから付き合いがあり、ミリアもとても良くして貰っていたがミネア王妃は人徳があり各所にそう言った知り合いがいたので特別な仲であるとは考え辛かったのだ。

しかしミネア王妃が所謂不倫をし、その相手と心中をしたことでミネア王妃は王に背く重罪を犯したとされミリアは王宮には居られなくなってしまったのだ。幼いころからミリアの側近として一緒にいたシーナ共々納得のいかないまま王宮から追放されてしまった。それからシーナは幸いにも王族の近衛隊に属していた事もあり、それなりに腕が立った為冒険者になる事にした。行くあての無いミリアもそれに乗じて冒険者となったのだ。

だが王妃の無念を晴らすため二人は独自に王妃が殺された理由について調べていた。するとある情報を入手したのだ。それは前回の闘技大会直前にもこれと同じような事件が起こっていた。それも今回の事件と同じように有能な冒険者を雇った当時大臣職を務めていた者が冒険者共々毒殺されるという事件だった。この事件も結局犯人は捕えられずに迷宮入りしている。そして今回の事件も前回の事件も最終的な判決を下したのは宰相である。しかも当時も今も同じミゲルの一族から選出された宰相だった。

この事からシーナもミリアも今回の事件の黒幕はミゲル宰相であると踏んでいた。ミゲル宰相は保身のために闘技大会で優勝しなければならずもし優勝できなかった場合は宰相の座を優勝者に譲らなければならないからだ。2大会連続で闘技大会で優勝者を輩出しているミゲル家は100年間宰相という職に着き続けている。だがミゲル家には黒い噂が絶えなかった。資産家でもあるミゲル家は宰相の座を利用して国内ではかなり荒稼ぎしているようだ。その事からも宰相の座に相当執着している事が判る。



 その話を聞いて俺も間違いなくミリアの母を殺害したのは現宰相だろうと確信した。そして俺は二人に協力すべく申し出た。


「一般参加なら闘技大会に出場する事ができるんだよな?だったら予選勝ち抜いて闘技大会に参加すればいいんじゃないのか?もし二人にやる気があるなら俺と一緒に鍛錬するかい?俺もある程度強いはずだから二人に協力は出来ると思う。とは言っても闘技大会のレベルがどれくらいのものなのかは知らないんだがな。」


俺がそう言うと二人は始めきょとんとしていた。だが俺の言った言葉を理解すると同時に二人は俺の方を真っ直ぐ見て、お願いしますと頭を下げてきた。早速明日からLv上げの始まりだ。期間は約半年、俺も目の前の二人もどこまで強くなることが出来るんだろうか…。


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読んで頂けると嬉しいです。




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