表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/14

5話

神騎士が異世界を謳歌する


5話


 シーナとミリアが何か言いたげなのを尻目に俺は半分無視を決め込みながらゆっくりとしたペースで歩いていると、街の方へ向かっていたであろう馬車が通りの真ん中で立ち往生していた。その馬車は商人が使う様な荷台に幌のついた割に大型の馬車だ。馬も4頭馬車に繋がれている。初めて馬車というものを見たため俺は若干テンションが上がる。確かゲームの中でも馬車というものは無かったはずだ。

馬車の後方と両側には護衛と思われる男達が併せて5人、周囲を警戒しながら大きな窪みに嵌っている車輪を引っ張り上げようと馬車を押している。

御者台に座っている傷だらけの鎧を着た男もにイライラとした様子で頻りに馬達に鞭を入れていた。


「手伝おうか?」


俺は馬車を横切る際に御者台の男に声をかけたが、チッと舌打ちをされた。


「いや。結構だ。」


断られて手伝う義理もないので、おれはそのまま立ち去ろうとしたが男達のリーダーだと思われれる人相の悪い男が周りの連中に何やらぼそぼそ言っていた。


「危ない!」


ニーナの声が後方で聞こえたため、俺は咄嗟に振り向くと先程の人相の悪い男が小振りな斧で今にも俺に斬りかからんと斧を振り上げていた。左手に持っていた盾で斧を防ぐと、俺は腰に佩いている剣を抜き放った。


 シーナとミリアは馬車と男達を挟んで向こう側にいる。すると斧を持った人相の悪い男がニヤニヤしながら俺に向かって言った。馬車の周りの男達もそれぞれ剣や斧などを手に構えている。


「運が良かったなぁ。だが今の一撃で死んでた方が楽だったかもしれないぜ?この嬢ちゃん達は俺らが貰っていってやるからお前は大人しくここで死ね!」



どうやらこいつらは盗賊か何かのようだ。そうなるとあの馬車の積荷が非常に気になる。魔法で馬車ごとこいつらを焼き払ってもいいが、馬車に金目のものでも積んであったらもったいないな…などと俺は呑気に考えていた。

正直こいつら程度に負ける気はしない。5人程度なら瞬殺出来る自信があるし、シーナも恐らくこいつら一人一人よりは強いだろう。ミリアはきちんとシーナの後ろに隠れているからとりあえずは安心だ。



 ただ俺は少し迷っていた。確かにこいつらは悪党の様だし斬っても問題は無いだろうが俺はまだ人を斬ったことがない。先程魔獣を斬った際も不思議と恐怖感はなかったが、人間の命を奪ってしまうことには抵抗があった。

何かいい方法は無いだろうかと素早く考えていると、俺はある魔法を思い出した。その魔法の名前は〈ダークミスト〉。闇属性の魔法なのだがゲーム内では所謂ネタ魔法として有名だった。魔法の有効範囲はかなり広く周囲10mくらいは覆える程の灰色の霧を発生させ対象を眠らせる魔法なのだが、範囲が広すぎるためパーティーを組んでいる際は仲間まで眠らせてしまうある意味自爆魔法だ。しかも自分の魔力が高くないと効果がすぐ切れてしまう上に人間型の生物にしか効かない為、ほとんどの魔獣には効果がない。更にはSランクの闇の秘石を使わないと習得することが出来ない為ネタ魔法と言われていたのだ。俺も片手で数える程しか使用したことがない。


「シーナ!ミリア!少し離れていろ!!…〈ダークミスト〉」


魔法を唱えると辺りは灰色に霧に覆われた。霧で覆われているため視界が悪く殆ど何も見えないがドサッと言う音が霧の中から数回聞こえた。

霧が晴れると男達は全員眠っていた。あろうことか馬車から少し離れた場所に退避しているにも関わらずシーナとミリアも寝ていた。やっぱりある意味自爆魔法だなと改めて思いながら馬車の向こうで寝ているシーナとミリアを揺り起こす。

念のため男達は馬車に括り付けてあった縄で手足を縛っておいた。当然武器もすべて没収だ。目が覚めて魔法を唱えられたら厄介なので猿轡も噛ませておいた。何か書くものでもあれば額に『肉』と書いてやりたかったが生憎書くものは持っていなかった。残念だ。

没収した武器はどれもごく一般的な量産された武器だけだったので少し離れた草むらに放っておいた。シーナとミリアはまだ眠たそうにしていたが、俺が馬車に積んである荷物を確認しようとすると二人も興味があったらしく後ろから覗き込んでいた。


 馬車の幌をめくると中には半裸のまま手足を縛られ猿轡をした十代後半程の男が横たわっていた。恐らく盗賊?達に誘拐でもされたのだろう。眠っていたのはこの馬車も先程の〈ダークミスト〉で覆ってしまった為だと思うが。馬車に乗っていたのが金品の類では無かったので俺は少しがっかりしたが、この少年の猿轡と手足の縄を外して揺り起こし話を聞くことにした。


 暫くすると少年はうっすらと目を開き周りを見渡した後、自分の置かれている状況を思い出したのか物凄い勢いで俺から離れるように馬車の隅へ逃げ叫びだした。


「僕を如何する気だ!お前は何者だ!!!俺を〈フィストア〉の第3皇子と知っての狼藉か?王が黙っちゃいないぞ!!」


俺のことを外で寝ている盗賊?の仲間かなにかと勘違いしているようである。すると俺の後ろから覗き込んでいたミリアが声を上げた。


「義兄様!?」


「……もしやミリアか?どういうことだ??」


ミリアが事の顛末を皇子に説明をした。皇子も納得したようで俺に礼を言ってきた。皇子は半裸のままだったので俺は笑いを堪えていたが…


皇子の話によれば攫われたのは昨日の夜のことらしい。この皇子はしばしば夜の城下街で遊んでいたのだが、このことは城下でそれなりに有名になってしまっていた。それを知った盗賊たちは身代金目的に皇子の誘拐を企て、昨晩皇子がお楽しみの最中に誘拐をしたのだという。この盗賊たちはこの界隈ではそれなりに名の通った盗賊で賞金首になっているようだ。夜間は城門の警備が厳しい為、この時間になって盗賊たちは移動を始めたのだが運悪く、皇子にとっては運よく馬車が立ち往生してしまったため、そこに俺達が通りかかり今に至った訳だ。


 しかしミリアとこの少年が兄妹であることの方が俺は驚いた。しかも皇子がどうとか言っているのでミリアもこの少年も王族なのだ。そういうことはミリアもシーナも早めに言って欲しかった。俺は厄介事にはあまり手を出したくない性質であり面倒臭いことは嫌いなのだ。そもそもミリアが王族であることを知っていたら一緒にクエストなんて受けなかった。

しかし助けてしまった以上無視するわけにもいかない。幸いにもシーナは馬車を操縦することが出来る様なので操縦は任せることにする。外でスヤスヤと寝ている盗賊達も放っておく訳にもいかず荷台に積み込んでおいた。俺も馬車の荷台に乗り込み〈フィストア〉の王城に向かうことにした。ミリアはシーナと一緒に御者台に座っている。半裸の皇子は御者台に座らせる訳にはいかないので荷台だ。

とにかくこれ以上面倒な事には巻き込まれたくないのでニーナに頼んでさっさと街に戻ることにした。ちなみに窪みに嵌まっている車輪は俺が馬車を押したらあっさり抜け出せた。 


 街へ戻る途中、盗賊達が目を覚まし暴れだしたのだが、暴れている盗賊の頭を剣の鞘で強めに叩くと大人しくなった。その度に半裸の皇子が驚いて逃げだそうとするのが少しだけ面白かった。盗賊全員が頭を叩かれた頃、俺達を乗せた馬車は街の入り口に到着した。



--------------------------------------------------------------------------------


気付いたらユニークアクセスが1000人超えていました。

こんな駄作を読んで下さいまして本当にありがとうございます。


これからも宜しくお願いします。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ