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2話

神騎士が異世界を謳歌する


2話


 酒場の中に戻ると周りはざわついていた。聞き耳を立てて周りの人々の話を聞いてみると、どうやら先ほど逃げて行った酔っ払いは、この辺りではそれなりに強い冒険者だったようだ。

酒場のマスターである胸元の開いた際どい服に身を包んだおねーさんにも話を聞いたが、この辺りでは兵士から騎士に転職出来る程のLVである冒険者はあまりいないらしいのだ。この地域の魔獣は弱いため力のある冒険者は相応の魔獣のいる地域に行ってしまう為らしい。ゲームの設定でも今俺がいるこの城下街≪フィストア≫は始まりの街であるため、当然町周辺の魔獣も弱い。それゆえに戦闘力を持たない冒険者以外の者はこの街に多く集まるため、それがこの街を大きくしている要因の一つであるようなのだ。実際ゲームの中でもこの大陸で一番大きな街であるとされ、この街のマーケットや露天などはいつもプレイヤーで賑わっていた。



 とりあえず俺は『神騎士』になってから自分のステータスを確認していないため、ステータスの確認方法が知りたかった。先程は安易に喧嘩を買ったが、実は不安要素も俺の中にはあったのだ。それは転職したばかりである俺のLVは1になっている筈だからだ。幸い装備にLV制限が無いのでこの装備をしている限りそうそう俺に敵うものはいないとは思ってはいたがステータスはLV1なのである。

実際この世界で自分のステータスを確認する方法を俺はまだ知らない。もしかしたらそういった類のものは無いのかもしれない。ただLVだけは酒場で確認できることをマスターのおねーさんから先程教えて貰った。酒場にはスフィアと呼ばれている魔法の水晶球が必ず置いてあり、LVが満たない場合はクエストを受ける事が出来ない様にするためクエスト受注の際には必ずLvを確認するからだ。

ただしLV以外にも冒険者ランクというものが存在し、これもEからSSSまで存在する。冒険者ランクが高ければ、LVに関係なくクエストを受ける事が出来るらしい。ちなみに兵士の場合はEランクからスタートして実績を残せばBランクまで上げることができる。

騎士に転職した場合はCランクからスタートとなり、最上級職の場合は初めから無条件でSランクとなる。

俺は最上級職であるためSランクだ。


マスターにお願いしてスフィアでLVを確認させて貰ったのだが、予想通りLvは1だった。俺がLV1だと言うことにマスターは驚いていたがジョブは神騎士だと言うと納得してもらえた様だった。しかし神騎士というジョブは冒険者にもあまり知られていないようである。この辺りの地域では魔法騎士や戦騎士ですらかなり珍しいため、実際にはマスターのおねーさんもピンとは来ていないようだ。


 それともう一つ。この世界には俺が認識していた意味でのギルドは存在しない。この世界にあるギルドと言えば、冒険者ギルド、商人ギルド、海洋ギルド、王族ギルドなどで、所謂冒険者が所属するコミュニティとして徒党を組むためのギルドは存在しないようなのだ。冒険者は必ず冒険者ギルドに所属し、パーティーを組むことで徒党を組んでいる。その中間に組織は存在しない。

俺も冒険者ギルドにはまだ所属していないので、これを機に冒険者ギルドに所属する事にした。冒険者ギルドに所属していない冒険者はクエストを受注することができないのだ。今までクエストをせずに神騎士にまでなったのかとマスターのおねーさんに聞かれたがそれは秘密と答えておいた。

そんなことよりもマスターはこの酒場から最上級職の騎士が登録を行った事が嬉しいらしく、とても上機嫌だった。



 とりあえず俺は自分のステータスが確認する事が出来ないため、おおよそでも自分のステータスを確認すべく、討伐系のクエストを受けてみるつもりである。今日は既に日も暮れていたので、宿をとり明日の朝から出発する予定だ。この町周辺の魔獣討伐のクエストなので特に大きな問題は無いだろう。今回の討伐クエストは通常3人でパーティーを組んで行うクエストなのだが、このクエストの対象ランクがDだという事もあり、今回は特別に一人で請け負うことを了承してもらった。

まだ宿をとっていないことをマスターに伝えると、マスターは宿まで手配してくれた。この地域の冒険者を仕切っているだけあってその辺りにはとても顔が利くらしい。俺はマスターにお礼を言って酒場をあとにした。



 宿までの地図もマスターに書いて貰ったので迷う心配もない。とはいってもこの街のことはゲームではかなり詳しく知っていたので迷う心配は無かったのだが。

俺は宿までの道程、歩きながら今日一日で判ったことを頭の中でまとめていた。まず先程わかった個人の主催している所謂ゲームの中での認識であるギルドは存在しないと言うこと。しかし恐らくはこれから先、冒険者の派閥みたいなものに出くわす可能性はあるだろうと思われる。どんな世界でも人は必ず群れるからだ。俺自身もこの異世界に飛ばされ、正直なところ不安もあったためいいギルドがあれば入ろうと思っていた。しかしギルド自体が存在しなかったため、そもそも無理な話だったのだが。

もう一つはPvPプレイヤーキルの規制が無いということ。酒場のマスター曰く、街の自警団的な存在はあり、王宮直属の近衛騎士団が警察機構を取り仕切っているらしいのだが、冒険者にはあまり取り締まり自体が適用されていないらしい。

というのも冒険者は近衛よりも戦闘能力が高い場合がままあり、王族も冒険者に税を求めない代わりに冒険者は冒険者が取り締まりをせよという暗黙の了解がこの街には存在するのだ。冒険者ギルドもこの暗黙の了解に乗っ取り、あまりにも素行が悪い冒険者に対してはクエストの受注をさせないなどの制裁を加える場合もあるようだ。しかしながらあの酔っ払いのおっさんが幅を利かせていた通り、力の強い者の意見が通りやすい傾向があるようだ。

実際最上級職のLV100の冒険者が街中で暴れた場合、50人のLV50の初期職の者たちが束になって向かっていったところで恐らくは傷一つ付けることはできないであろう。あの酔っ払いの態度もこの世界では認められてしまうのだ。だからといって見境なく暴れても良いという事はないのだが。


 論点が逸れてしまったが、ゲームの中では街中でプレイヤー同士が口論以上の諍いを起こすことは物理的に不可能だった。そもそも街中では所定の場所以外でのPvPは禁止されていたためである。しかし先程の喧嘩があった通り、PvPなどという概念すら存在しているかどうかすら怪しい。俺も他の冒険者も現実に存在する人だからだ。

まだ未確定ではあるが、俺の考えでは冒険者が死んだ後神殿で復活することはないと思っている。もし復活するのであれば冒険者自身が死を恐れなくなり先程があの酔っ払いが俺に対して恐怖したこと自体が嘘になるからだ。ただし回復魔法や蘇生魔法が存在する為、人に怪我を負わせることに対しては罪悪感が低い事も伺える。

やはりこの世界で平穏に生きていくにはある程度の腕っ節も必要ということだろう。


 そんな事を考えている内に俺は酒場でとってもらった宿に到着した。宿では食事が用意されており思いのほか美味だった。料理は日本食的であり箸もあった。見慣れぬ食材もいくつかあったがそこは眼を瞑るとしよう。美味いのであればいいじゃないか。案内された部屋も簡素ではあったが、冷蔵庫に似たものも

存在して快適であった。ちなみにこの冷蔵庫の様なものは魔力で動かしている。その名もズバリ冷蔵庫だった。こんな偶然もたまには存在する。

夜でも魔法による照明がある為、思ったよりも近代的ではあるがとにかく暇だった。何もすることがないので、今日はさっさと寝てしまうことにする。やはり慣れない世界で疲れていたのかあっという間に意識が遠のいていく。

今何時なのかイマイチ判らないが早起きした方がいいだろうななどと思いながら俺は睡魔に身を委ねた。



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読んで頂けると嬉しいです。




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