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1話

神騎士が異世界を謳歌する


1話


 どうやら俺は気を失っていたようだ。気がつくと周りが随分騒がしい。俺は自分の部屋にいたはずなのだが……と周りを見渡してみる。どう見ても自分の部屋では無い。6畳のワンルームの部屋にいるはずの俺は何故か中世のヨーロッパのような雰囲気を持った恐らくは教会のような場所にいた。

片膝をついたまま何かに祈っているような格好だ。それよりも一番に違和感を感じたのは俺の身に付けているものだった。先程まで俺は間違いなく自分の部屋にいて、高校生の時から愛用しているジャージを着ているはずだった。だが今の俺の格好は鎧だ。ご丁寧に腰には剣まで佩いている。

前方を見上げると壇上には神父の様な恰好をしたおっさんがいた。おっさんは突然俺に向かって声をかけてくる。


「これであなたは≪神騎士ゴッデスナイト≫に転職しました。あなたの冒険者としての道に幸多からんことを祈ります。」


(はぁ?何言ってんだ?このおっさん。でも待てよ。さっきのセリフどっかで聞いたことことがあるな。……って【ロストグローリー】じゃねぇか?そういえば今の俺の格好も【ロストグローリー】で俺が使ってたキャラクターの『ミスト』か!!俺もしかして異世界来ちゃった?ってことはここは神殿?)


 俺は立ち上がってもう一度周りを見渡した。神官のおっさんと周りには巫女らしき人がいる。たしかにここは俺がゲームでパソコンの画面から見ていた【ロストグローリー】の神殿と一致していた。振り向くと、ちらほら冒険者と思われる恰好をした人々も見える。


「うおぉ~~~~やったぞ~~~~~~!!!!」


周りにいた人たちが一斉に振り向き俺の方を向くがそんなことは気にしない。俺は常日頃から思っていたのだ。現実がゲームの世界になって欲しいと。日々の生活がいっぱいいっぱいな現実から抜け出したいとずっと思っていた。俺の願いは叶ったんだ。ここが俺の現実になったんだ。

そう考えると居ても経ってもいらなかった。


 とりあえず神殿をあとにして街へと出てみる。やはりここは【ロストグローリー】の世界だ。街の人々やそこら中に歩いている冒険者達。どう考えてもドッキリにしてはスケールが大き過ぎる。なんせ神殿の前にはゲームの中と同じ様に大きな城があるのだ。まず日本ではあり得ない。

俺自身の格好もかなり変化していた。まず一つ目が長髪になっている。顔はまだ鏡を見ていないので

判らないが、髪は間違いなく背中辺りまである。さらさらヘアーだ。少しだけ引っ張ってみるが確かに俺の頭から生えていた。断じてカツラなどではない。ちなみに前までの俺は、短髪でほぼ坊主のようにしていた。身長はあまり変わっていない様に思う。元々180㎝程あったため大きくも小さくもなってはいないようだ。身体つきはかなりがっしりと筋肉質になっている。この体であれば多分力も相当強いだろう。こんな重そうな鎧を着ているのに殆ど重さを感じない。本来の自分であればこんな重そうな鎧なんか着ていたら動けないはずだ。

腰にはゲームと同じように魔法の子袋がぶら下がっていた。ゲーム内の仕様ではここに持ち物が入っているはずだ。LVとステータスによってこの袋の中に入る量が変化し、手を突っ込むだけで中の持ち物が取り出せる便利な袋である。試しにMP回復剤を取り出してみたが問題なく取り出せた。この世界のお金であるジュエルも問題なく取り出すことができた。暫くの間は手持ちのジュエルだけで生活できるだろうから問題はないだろう。


 ただ俺には明確な目的がなかった。生活するだけであれば当面のジュエルは持っているし、かといっていきなり冒険に出る訳にもいかない。ゲームと同じ世界とはいえ、さすがに命の危険を冒すような真似はしたく無いからだ。ゲームと全く同じであれば死ぬことはなく、死んでも神殿に転送されるだけのはずではあるが確証が無いうちは何とも言えない。さすがに何も判らないうちからそれを試す勇気はなかった。

とりあえず俺は街のはずれにある酒場に向かうことにした。やっぱりゲームでいろんな人の話を聞くのは

酒場が定番だと考えたからだ。酒場までの道順は覚えているが、現実には初めて見る街並みをきょろきょろと眺めながら酒場へと向かった。


 酒場は冒険者で溢れていた。ゲームの仕様でもこの酒場というのは重要な役割を持っており、所謂

クエストと呼ばれる仕事を冒険者が受けるための施設でもあるからだ。きょろきょろとしながら酒場に入るなりお約束と言わんばかりに冒険者だと思われる酔っ払いが絡んできた。


「お~兄ちゃん。どこの田舎もんだ?見ない顔だがここはガキの来る場所じゃねぇぞ?ガキは帰ってミルクでも飲んでな。」


酒臭い吐息を吐きながら一昔前の不良のような歩き方でこちらに向かってくる。


「俺はガキと言われるほど若くもないんだがな。それよりも酒臭い息を吐きかけるんじゃねぇ。胸糞悪い。」


つい言ってしまった。俺は元々不良の様な連中が大嫌いなのだ。それも自分より弱そうな相手を捕まえて喧嘩を売るような奴等が一番許せない。


「あ?喧嘩売ってんのか?俺が騎士のソルド様と知って言ってんだな?」


「そんなこと知るか!このハゲ!!」


言ってしまった。売り言葉に買い言葉とはまさにこのことだ。俺は前の世界でも頭に血が上ると余計な一言を言ってしまい、喧嘩になってしまうこともしばしばあった。まさかこの世界に来てそれほど時間も経っていなのにこんな展開になるとは自分でも予想できなかった。


「てめぇ!!表に出ろ!痛い目に合わねぇとわからねぇようだな。実力もないくせに口だけ粋がってる奴は捻りつぶしてやる!」



俺はかなり頭に血が上っていたが勝てるであろう心算はしていた。それは喧嘩売ってきた奴の装備を見れば一目瞭然であった。伊達に5年も【ロストグローリー】をやっていたわけではない。あの酔っ払いが装備しているのはLV50前後の兵士がよく装備しているプレートアーマーだ。騎士と言っていたが転職して

間もないのだろう。この世界で俺が知りうる限りの最強装備をしているのにあの程度の酔っ払いに負けるはずがないと考えていた。

しかしそんなこと知らない酒場にいた周りの連中は、ざわついていた。


「やめといた方がいいぞ、兄さん。あいつはこの辺りじゃちょっとばかり名前の知られている冒険者だ。最近上級職の【騎士】になったってのも本当らしいぞ。」


とわざわざ忠告までしてくる奴もいた。先程俺に絡んでくる前に、あの酔っ払いが絡んでいた冒険者になったばかりだと思われるかわいい神官風の女の子にまで声を掛けられ、やめた方がいいですよ。と忠告された。しかし負ける要素がほとんど無いと考えていた俺はにこりと笑い、


「ご忠告ありがとう。でも心配いらないですよ。」


と言いながら指をポキポキと鳴らしながら待ち構えている酔っ払いが待つ店の外に出た。

俺が外に出るとほぼ同時のタイミングで酔っ払いが腰に差していたブロードソードを抜き斬りかかってくる。しかし俺にとって酔っ払いの動きはあまりにも遅い動きに感じた。俺も佩いていた剣を抜き酔っ払いの剣を弾くと酔っ払いのブロードソードは甲高い音キンっと言う音を鳴らし真っ二つに折れてしまった。俺の剣には傷一つ付いていない。

そのまま俺は剣を酔っ払いに突き付けると先程まで赤かった酔っ払いの顔色は一気に青褪めた。


「まだやるか?」


と酔っ払いに問うと酔っ払いは激しく首を振り、俺が剣を鞘にしまうと同時に一目散に逃げ出してしまった。一部始終を見ていた周りの野次馬達から歓声が上がり、嬉しかったがなんとも気恥ずかしい気持ちで俺は酒場に戻り、カウンターの向こうに立っている店主であると思われるおねーさんに話を聞くことにした。



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読んで頂けると嬉しいです。




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