魔法吸収
⾷事が終わると、ティーニアは異空間から鉄で覆われているボックスを取り出した。
「これは?」
圧倒的重厚感があり⾼価な装飾品やお⾦などを⼊れておくアタッシュケースに少し似ていた。
「これは魔⼒吸収リング。 君の魔⼒を吸収してくれる物」
「魔⼒吸収?」
「まず訓練を⾏うにあたり、これを装着してもらうね。」
「この魔⼒吸収リングは私の友達が制作した特別製で、ルイ君の膨⼤の魔⼒でさえ8割に抑えることができる優れた⼀品なんだ。」
「へー」
絵空事で返答してしまったが、8割魔⼒を吸収される? ルイは、魔法の知識が乏しく全く実感が湧かなかった。
まず魔⼒吸収装置の説明をするね。
魔⼒吸収リングによる効果は、魔⼒タンクを外部に接続しているようなことなんだ。吸収されることにより普段の魔⼒量多くを預けられることになるの。魔⼒吸収リングを使⽤することで普段使っている⾃分の魔⼒タンクに空きが出るの。そのため、魔⼒を過剰に⽣成することになっちゃうの。
逆に魔⼒吸収リングを外した場合、魔⼒タンクに⼊りきらない魔⼒量となるため魔⼒タンクが必死に急成⻑をしようとするんだ。
1番良い⽅法としては魔⼒吸収リングに魔⼒が溜まり切ったら新たなリングを⽤意し、今までの物を装着した状態で新たな魔⼒吸収リングを着ける。そうすると、魔⼒タンクの
魔⼒オーバーという事が無くなり、魔⼒タンクに隙ができ魔⼒過剰とはならなくなるんだ。
ティーニアは、ルイの頭を2度ほど触りこう呟いた。
「ルイ君覚えておいて、このリングは触れた瞬間から膨⼤な魔⼒を吸い取っていくから基本的に使⽤者以外触れないの。」
「⼀応、外せないようにロックは設定してあるけど、このリングは特別性だから、ルイ君が⾝に付けてない時に他の⼈に触らせては絶対ダメだよ。」
彼⼥の強い⼝調と鋭い眼差しからルイはこれがどれほど危険なものなのか⾃覚した。
ルイは、緊張しながら鉄の箱の中に輝く吸収リングを右⼿の薬指にはめた。その瞬間視界が真っ暗になり、激しい頭痛そして魔⼒酔いによる吐き気を感じ椅⼦に座っていることが出来ず、その場に倒れこんでしまった。
なんとか、這いつくばりながら必死に声を出した。
「このリングを外して・・」
「だめよ、これが特訓なんだから。」ルイの悲痛な叫びもティーニアには届かず、そのまま意識を失ってしまった。
数時間後ルイは⽬を覚ますと、倦怠感と吐き気、頭痛など体への痛みが全て襲ってきた。
寝ていた時間が幸せだったと思い、再び眠りにつきたかったが、頭痛により⽬を閉じるのが限界であった。
―あ、あ、
部屋中にルイの悲痛な叫びが響き渡り、ティーニアが様⼦を⾒に来てくれた。
「ルイ君⼤丈夫? 何か持ってこようか?」
ルイはか細い声を出しながら⼀⾔答えた
「死ぬ。」
ティーニアは、ルイの寝ているベッドまで近づき、ルイの頭を優しく撫でた。
「あと数⽇すれば、慣れてくると思うから。」
ルイはふと⺟の温かさを感じ、再び眠りに⼊ることが出来た。
2⽇間は訓練も⾏うことが出来ず、ただベッドの中でうなだれているだけの⽣活を⾏っていた。⾷事もとれず唯々痩せてこけていくだけであった。
3⽇⽬はボタンを押すことで、ティーニアやリオさんが⼿助けをしてくれる⽣活を送っていた。⾵呂には⼊れなかったが、トイレに連れていってもらったり、⾷べ物を⾷べさせてくれたり何かと世話をたくさんしてもらった。
4⽇⽬ぐらいから少しずつ体を動かせるようになってきた。まだ気分も優れなく頭痛や倦怠感などは収まらない。何もやる気が起きない中で⼀つだけ楽しみがあった。それは、リオさんとの⾷事の時間だった。
「ルイ様お⾷事をお持ちいたしました。」
「⾷べさせて・」
リオさんはルイが不調だからか、元々そういう性格なのか、嫌な顔⼀つ⾒せず付き合ってくれていた。
「畏まりました。」
ルイも本調⼦ではなく、ほとんどリオさんと会話することができなかった。時々リオさんが話を振ってくれることに対して相槌で返事をしていた。ルイにとっては楽しい時間が過ぎていった。
10⽇程経ち、ルイはまだ本調⼦ではないが、不⾃由なく活動できるようになっていった。
少し残念だったのが、リオさんはもう⽢えさせてくれなくなってしまった。リオさんの
「アーン」を聞けないのが⼼残りだった。
その⽇の⼣⾷の時明⽇からの訓練について告げられた。
「ルイ君明⽇から訓練を開始するから。」