都市フリスタ
「転移魔法」
⼊国審査所同様に⼀瞬でルイは知らない場所にたどり着いた。
⼈通りは無く、裏路地に出た。
⼀本通りを変えると、⼈通りが多く近代的な都市が現れた。そこは、フリスタという都市で、神の国の中で3番⽬の⼤都市であった。
道はすべて整備され近代的な建物が⽴ち並んでいた。店は⽊と藁で出来た露店を構えているわけではなく、家の様な作りをしていた。特に、ガラスの使⽤が多く⾒られ、店の様
⼦が⼀瞬で分かるシステムは画期的であった。
ルイは、フリスタの町を歩いていると妙に視線が気になった。美しい容姿を持っているティーニアへの熱視線だろうか。それとも⾼貴な⾝分を表す貴族とは不釣り合いな⽣地は
⽳だらけでボロボロな服を着ているルイへの偏⾒か。
ティーニアも視線の多さが気になっていた。いつも、容姿が優れているため他⼈から注⽬されることは多いが、今⽇は普段の視線とは違った感じだった。
「ルイ君、服を買おうか。」
ティーニアがそう提案してくれたことは嬉しかった。すこし、ティーニアと並んで歩いているのが不釣り合いで気まずかったからだ。
「服を着替えたい。」
ティーニアは、いろいろな⾼級呉服店に⼊り、⼦供⽤の服があるかどうか尋ねて回った。
「この⼦に合う服が欲しいんだけど。お⾦はいくらでも出すから。」
ティーニアは無茶な要求を通し、店員にルイの服を⾒繕ってもらった。
数点の品を店員が持ってきてくれた。
「この服も似合う、こっちも良い。」など⼈を着せ替え⼈形のように扱い、2時間ほど服選びに付き合わされた。結局ティーニアは、豪華絢爛な服屋のルイのサイズに合う服と少
し⼤きめの肌着を全て購⼊した。総勢300着合計⼤⾦貨1枚の値だった。
この国は、⻘銅貨、⽩銅貨、銀貨、⾦貨、⼤⾦貨の5つがある。⻘銅貨10枚で⽩銅貨。
⽩銅貨10枚で銀貨1枚。銀貨100枚で⾦貨1枚。⾦貨100枚で⼤⾦貨1枚。 ⻘銅貨1枚でリンゴなどの果物が買える程で、⼤⾦貨にもなると家が⼀軒建つ。
ティーニアは、ルイの洋服を揃えるだけで家⼀軒を買える⾦額を出したのだった。
服屋の次は間髪⼊れず⾐類の他に新しく魔法具や家具、⾷器類に、雑貨、⽣活⽤品などの店を数軒回りさらに3〜4時間ほどで買い物を終えた。彼⼥は魔⼒量が多く異空間収納を使⽤しても収納量は膨⼤にある。そのため、買った荷物を⼿で持たなくて良いのが唯⼀の救いだった。
「疲れた。」
流⽯に6時間近く歩きっぱなしで⽴ちっぱなしだった。ティーニアは、物を買うのが好きなのか全く疲れた姿を⾒せず買い物をしていた。
そんなルイを⾒かねたのかティーニアが「休憩しよう」と提案してくれた。
通りかかった喫茶店に⼊った。
古典的な内装にコーヒーの焙煎の深い⾹りで、少し⼼が落ち着いた。
メニューにはコーヒーや軽⾷のサンドイッチそれからデザートのパフェやケーキなど美味しそうなものが載っていた。
その中でルイの⽬を光らせたものがあった。特に今⽇は疲れもあってかすごく「パフェ」というものを頼みたかった。
― パフェお持ちしました。
隣の席でもパフェが届いており、涎がたれそうになるほど輝いて⾒えた。
「ルイ君注⽂決まった?」
「うん」
そう⾔うと義⺟は店員を呼びつけ注⽂をし始めた。
「私は、ブレンドコーヒー⼀つとこのカツサンドをお願いします。ルイ君は?」
ティーニアの注⽂が余りに⼤⼈だった。ルイは⾃分がパフェなどと⼥性や⼦供が頼みたくなる⾷べ物を注⽂することが恥ずかしくなり「コーヒー1つお願いします」と⾔ってしまった。
「サイズはどうなされますか?」
サイズなんてメニューに書いてあったのかルイは急いでメニューを⾒直した。S・M・L と
いう記載があり、指をさし「これで」と Lサイズを頼んでしまった。
「Lサイズですね」
「アイスかホットかどうなされますか?」
店員のたびたびの質問にルイは焦りながら、「ホットで」と答えた。店員が去ると、訳
の分からない物ばかり選択して何が来てしまうのかという不安でいっぱいだった。
数分もするとティーニアのブレンドコーヒーとルイのホットコーヒーが届いた。
⾒た⽬が真っ⿊で深々とした匂いが⾹ってきた。ルイは、注⽂したかった⽢そうな商品とは正反対のものが来てしまい、明らかに落ち込んでいた。
物は試しという事で、ルイは試しに飲んでみることにした。
「アッツ」店内に響き渡ったルイの叫びが、周りのお客さんの視線を集めた。
ルイは、顔を真っ⾚にし、恥ずかしくなりそのまま俯いてしまった。
「ルイ君熱いから気を付けて」
後から⾔われてもと思いながら、コーヒーの苦味も相まって苦しかった。
ルイとティーニアは談笑しながら数時間が過ぎていった。ティーニアは、ルイが飲み終
わるのを待っているのだが、ルイのコーヒーは⼀向に減る気配はなかった。
ルイを⾒かねたのかティーニアは、⽩いザラメ状の物と⽜の乳を取ってくれた。
「ルイくんこれを使うと良いよ。」
半信半疑でこの2つを⼊れてみると、味がマイルドになり苦くなくなっていた。
あれだけ苦戦したコーヒーというものに打ち勝ったのだ。コーヒーも飲み終わり気がつくと⽇も落ち帰るには良い時間帯になっていた。
「ルイ君もう帰る?」
ルイは、流⽯に疲れが出て、家に帰りゆっくり過ごしたかった。
「帰ろう」
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