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8話:終幕への序章

週末なので2回更新です

 何気ない毎日が続く中、私は少しずつアランに試されているのを感じる。

 そして、私がゲーム内で把握している2ヶ所の学院の防衛システムの近くに行く事が増えた。たぶん、当たりはつけたかもう試したんだろう。


 なので、私は知らんぷりする。実際今世で見た事はないし、ゲーム内でも見たとは言えない状況だったしなぁ。うん、やっぱり私は何も知りません。

 結局、学院の外れでイチャイチャしているだけのバカップルでしかなかった。誰に遠慮する必要もなく推しを観察出来るので、私はただただ幸せな時間ね!と開き直っている。


 でも、にこにことし過ぎたのか、アランが何かを指で弾いて、顔にぶつかりそうだったので避けて、ふふんとドヤってやった次の瞬間だった。


 GYAOOOOO!!!


 何処か機械めいた咆哮と共に飛竜的な何かがこちらを怒りも露に睨んでいる。


「きゃあああ!!なにあれ?!アラン!?!?!!」

「あーあー、リリアナが避けるから」

「私なの?!と言うか、襲ってきてるんだけど!!」

「うん」


 そんなバカな会話をしている間にも飛竜と思わしきものはぎこちなく羽を動かして飛んでくる。


「運がいいね、リリ。翼の付け根に当たったみたいだね?」

「いやいや、アラン、どんだけ恐ろしい魔法を使ったの?」

「うーん、当たったらリリが大変な事にはなってたね?」

「死んでるから!!!あんなのの翼壊せる魔法当たったら人は死ぬから!!」

「そうとも言うね?」

「そうとしか言わないから!あれ、責任もってどうにかしてよね?!」


 言い合いをしつつ動く気のないアランに文句を言いつつ、唯一私の魔法で意味のありそうな結界を展開する。

 もどかしそうに飛んでいた飛竜が火かと思いきや、雷を吐き出してきたが、なんとか結界で凌げた。


「アラン!!私が戦闘力がゼロなのは知ってるでしょう?!」

「仕方ないなあ、ここで大人しくしてるんだよ?」


 何故か嬉しそうに飛竜に対峙するアラン。

 この人なんだかんだ戦闘民なのは知ってたけど、私を巻き込むなし!!ルイーゼの半分以下の魔力しかないんだから、勘弁してよね、ほんと。


 アランは飛竜とナイフと呼ぶには長い、でも剣としては短い武器で遊んでいた。いや、甚振っていると言うのが正しいかもしれない。

 飛竜がどんどんボロボロになっていって、ある程度アランの興味が失われたところで、飛竜の足元に魔法陣が現れゴン太ビームで焼かれて倒れた。


 ようやく飛竜が動かなくなり、私のなけなしの魔力も尽きかけていたので助かった。

 ホッと息をついたとき、飛竜が私の方を向き、目があった。


「ひっ」


 ブレスを食らうと身構えたが、飛竜の口を縫いつけるナイフが上から刺さり、私は寸での所で事なきを得た。


「油断大敵だね?リリアナ」

「ご、ごめんなさい……」


 見上げたアランの目は爛々としていて、久々の戦闘が楽しかったのかもしれない。


「リリ、見てごらん?」

「え?なに?」


 アランに言われるままに覗き込むと、飛竜の切られた体の中が見えた。

 うえっ、と避けそうになったが、その切り口の中が光、回路のようなものが見えた。

 しかも、外傷が修復されつつある。


「な、なに、これ……」

「うーん、オレも分からないけど、学院長に叱られそうだなぁ」

「はい?」


 言ってる事おかしい、よね??


「アラン、コレ、何か知ってるのね?」

「正確には推測はついてるけど、確定じゃないから知らない」

「知ってて私を巻き込まないでよね!!」

「リリ」


 分かってますよ!最初から巻き込む気満々なのは!!!

 でも、もう少し、反省というか申し訳なさとか、あるっしょ?!


「ごめんね?」

「可愛い表情しても許さない!!っていうか、学院長にはアランが説明してよね!!」

「リリアナ」

「い、や、よ!!」

「残念、悪いとは思ってるんだよ?」


 そう言うと、アランの姿は消えた。


 比喩でもなんでもなく、文字通り消えた。

 綺麗さっぱり。



 つまり、あの男、途中から幻影を展開して遠距離から私と会話して、そのまま逃亡しやがった!!

 嵌められた!!!



「アランのバカーーー!!ぜーーったいに、許さないから!!!」


 私の叫びは虚しく夕暮れの空に消えていった。



 その日、私が学生寮に帰ったのは深夜近くだった事だけは記そう。

 結局一部始終を学院長は確認していたので、お咎めはさして無かったものの、私の魔法の扱いが甘い、緊張感が足りないと唐突な指導が始まったのだった。

 魔力が少ないからこそ出来る戦闘とか、状況の把握と利用とか、もう魔力がさして残ってなくてしんどいのに。


 それもこれもアランのせい、許さん。

 けど、1つ巻き込まれた私が不憫だったからと、とある魔法の原理を教えて貰った。

 これは、きっと私の切り札になるから、しっかり調整して、使えるようにしないと。


 帰寮した私は泥のように眠り、翌朝は思ったよりスッキリしていた。

 けれども、アランは許さないので、話しかけてくるアランを完全に無視してやった。

 幸い今日は魔法薬のクラスがあるから、アランが放課後まで拘束されるのは確定だ。



 久々に私は1人を満喫していた。

 もちろん、アランが居ないのでここぞとばかりに絡んでくる女子は鬱陶しいが上手く撒けばいいしね。

 今回は中々しつこかったので、夕方になって裏庭に逃げてきた。


「はあ…… その情熱を他に割いて欲しいわよね。

 アランの行動は私には制御出来ないって言ってるのに。私の言うことなんて、アランが聞く訳ないのに」


 思わずおもーいため息が出てしまう。


 思えば、アランとの付き合いも長くなってきた。こんなに続くとは思ってなかったなぁ。

 思いの外幸せで、今の立場を満喫してしまっていた。でも、このままだと私の存在がアランの足枷になりかねない。

 アランの任務達成状況と私への好感度次第だから、見極めが難しい。アランには大分気に入られている、とは思う。

 だからこそ……


『しおどき』


 という単語が頭を過ぎる。分かっていた。

 分かっていたけど、前世からの推しで、今世でも心底惚れ込んでしまったアランから離れ難い。

 それでも


「ふぅ…… やっぱり、距離置くしかないのかなぁ」


 そう独りごちていると、いつの間にか来ていたのかアランに背後から抱きしめられた。

読んでいただきありがとうございます。

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