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7話:油断大敵

 アランにマウントポジションを取られながらこの場をどう切り抜けるか内心で焦りつつも考える。


「お前は本当にどこまで何を知っている?」

「うん?アランが特大の猫被りで気難しいのは気付いてたってちゃんと前に話したよ?」

「ふうん?それだけ?」

「他にあるの?」


 探るような視線のアラン。

 少しも動揺するな、私が知っている内容は当たり前の内容だけだ、と自分に言い聞かせる。


「アラン?さっきの言い方だとまだ何か秘密があるみたいに聞こえるんだけど?

 まだ特大な地雷とかあるの?」

「はあ……  リリはたまにすごーく失礼だよね」

「ええー 私をこうやって押さえつけてるアランよりは失礼じゃないと思うの」

「確かにいい眺めだな」


 普通女の子がこの状況になったら色んな意味で危険だ。私だって乙女だけど、アランは女に不自由していないからまあ大丈夫だろうって安心もある。

 ……そうだった、アランは商売のお姉さん達には遠慮なく行くタイプだったわ。そう思い出したら腹たってきた。

 腹立ちついでに聞いておかないといけない事をつっこもう。


「所で、アラン?私たちって恋人だったの?」


 そう言うと珍しく驚いて目を見開くアランと言うレアなものが見れた。


「酷いなぁ、リリ。キスまでしてるのに」


 そう言いながら、何時もの調子でキスをしてくる?

 ほんと、こういうとこが、ズルいんだよね、この男。ろくな奴じゃない。


「私は好きよ。でも、アランに好かれているとは思ってなかったから…」


 意地悪く言うと、アランは楽しそうに目を細める。


「意地悪だな、リリ。オレが自分からキスするのはリリだけだし、好きじゃなきゃしないよ?」

「ほんと?」

「ああ。リリだけだから、さっきみたいに自分から傷付けられるような行動は止めろ。

 お前を傷付けていいのも、泣かしていいのもオレだけだ」


 真顔で言われて、本気の言葉だと伝えてくる。

 でも、凄いセリフだなぁ。


「リリ?返事は?」

「うん、次はしないよ。気を付ける……」

「うん?」

「えっ、どうしたの?」

「いや、言いたい事があるなら今話しちゃおう?」

「うーん、アランはいいの?」


 どういう理論だよ!と思うが、相手はアランだしなぁ。


「うん。リリはオレのだから。他には?」

「ううん、特にないよ」


 そう言って私は何事もなかったように笑う。今言う気は無い、私はアランの性欲処理は出来ないから独占欲を全開にするのは間違っている。

 大体この人はこの容姿を活かしたハニー・トラップだって気にもせずこなすタイプなんだから言うだけ無駄と言うものだ。


 …………本当は、嫌だけど。

 私は自分がアランにとって隠れ蓑でしかない事は誰よりも自覚している。勘違いしちゃダメ。そう、甘い言葉もキスも本気にしたらダメ…… やば、辛いなぁ。

 男爵令嬢として表情と感情の制御だけはしっかり仕込まれていて良かったとこの時ほど思った事は無かった。


 その後の会話はあまり覚えてないけど、アランはアッサリ私の上から降りて起こしてくれた。

 荷物もまとめるとアランが持ってくれて、そのまま手をつないで散歩しながら学生寮に戻って何事もなく夕食を終えて、やっと私は自分の部屋に戻ってきた。


 ストンと表情が抜け落ちるのが自覚できるけど、ここは私だけの部屋だから気にしない。ドアにカギをかけて、窓も鍵がかかっている事を確認してカーテンもきっちり閉める。

 メインストーリーはどこまで進んでいるんだろう?

 アランは確かこの学園のセキュリティを担っている魔法の解除とその魔法の入手を目的に入学、魔法薬の知識は彼の趣味として学んでいた設定だったはず。老獪な学園長は全てを把握した上でアランを入学させ、彼の出方を見つつ状況を確認して介入するつもりで泳がせている……という流れの、はず。

 ルイーゼの面倒を見る補助役を依頼された時に、アランに敢えてその事をほのめかして彼は非常に嫌な顔をしているシーンを見た記憶がある。アランの性格だから「手のひらで踊っといてやるよ、だがそのままだと思うな」と裏をかくように行動している。でも、学園長は一枚上手って言うのがアランルートでの話だった。

 ルイーゼがアラン以外を選んだ時のアランはどうなっていたのかは、プレイヤーには分からない。


 自分の存在をルイーゼに置き換えて推測すると、そろそろアランは学園のセキュリティを試すために私を放課後利用するはず。そこで初めて本来の姿を見せて、ルイーゼに呪いを刻み追い詰め始めるんだけど私はアランと同じ光属性だからかけにくいはず。

 どうするんだろう?

 そして、私は呪いをかけられたら、どうすればいいんだろう?


 覚えている限りの内容を書き出したノートを眺めつつ考えるが、解呪なんて習っていないし、私は魔力量は多くない。その代わり制御は自信あるからこそ魔道具や魔法薬を専攻しているんだけど。


「そうね、解呪は無理だから…… 今打てる手としては魔力の温存といざという時に魔石のように使えるようにストックするくらいかな。魔力はあって損はないもんね……」


 敢えて声に出して自分の考えが間違っていない事を確認しつつ、ノートを閉じて寝る準備をする。自分の魔力をストックするのはいつも身に付けているピアス、これは我が家の家宝の1つで地味な見た目に寄らず高品質の魔石なので魔力のストックにはもってこいだ。

 よし、切り替えは終わった!明日も学園があるし、寝よう!


 私は本当にアランとどうなりたいんだろう、という悩みには目を逸らし考えないようにする。

 自分の気持ちが分からない。でも、乙女ゲーのヒロインのように、好きという感情だけで全てを投げ出すことは出来ない。

 私には家族も、そして男爵領とは言え守らなければいけない領民もいる。


 反面、前世からの推しと言うだけでなく……、知り始めてしまったアラン個人に対して好意を抱いてしまっている。それを、私は否定できない。

 アランはこれからの予定をどう組んでいるんだろう?私は、それでどうしたいんだろう。


 答えの出ない悩みをベッドの中で振り切ろうとしては、また考えてしまい、中々寝付けなかった。



 そんな私の様子を監視する魔法に、私が気付くことは終ぞなかった。

読んでいただきありがとうございます。

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