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6話:思いがけない平和な日々

 裏庭でのキスから数ヶ月、私とアランは学園では公認のカップルとなっていた。

 そして、キスマークは頑張って髪で隠していたけど、絶妙に隠しきれない場所だったので案の定、何人かにはバレていた。

 もしかしたら、結構バレていたのかもしれない……。


 おのれアラン、許すまじ!!

 そして、この事がきっかけでカップルだと、恋人同士で認識されたんだけど。


 数ヶ月経った今も、好きだとも、付き合おうとも言われてないし、私も言っていない。

 アランの対応から気に入られているとは思う。

 でも、アランの好きは怖いし、十分に絆されている今、私はきっとアランを拒否出来ないだろうという自覚はある。


 それに厄介な人たちも沸いてきた。

 通称アラン親衛隊。本人非公認のファンサークル的な何か。但し過激なやつ。

 ガチ恋NG、抜け駆けNG、アランはみんなのモノ的なものを掲げているんだけど、そもそも私そこの所属じゃないし無関係。

 ついでに言うと、アランはアイドルじゃないし。アラン自身はイメージ戦略で女の子には良い顔してたけど、私と一緒に居るようになって止めたみたい。


 まあ、単にイメージのギャップ作るならチャラ男でも、バカップルでも意外性はあるしスパイとかに見えなきゃ問題ない認識なんだろうなあ。

 なので、絶賛絡まれている今が非常にめんどくさい。


 ここ、図書館なんだけどなあ。五月蝿いな、このキーキー言ってる赤い髪の人。


「ちょっと!聞いているの?!」

「いいえ」


 他愛もなく勝手にエキサイトして行く赤髪の女生徒。そろそろ先生来ないかなあ。


「どうでも良いんですけど、ここ図書館なんでもう少し静かに話せません?

 キンキン声が耳に痛くて」

「あなたが怒鳴らせているんでしょう!!」

「はあ、最初から怒鳴ってませんでした?」

「だーかーらー!!」


 キンキン赤髪がドン!とテーブルを叩いたのをキッカケに数人動いたのを横目に見ながら私は飽きたな〜と思いつつ、目の前の人を見ない。

 良くまあギャンギャン吠えるなと思いつつも、疲れたと、思わずため息が漏れてしまった。


 やば、っと思った瞬間、思いっきり引っぱたかれた。


「ぃったあ〜」

「あなたが失礼なのがいけないんでしょう!これぐらいされても当たり前よ!!」

「ふむ。つまりはあなたはやり返されても当たり前と」

「なんでそうなるのよ!!」

「やったらやり返されるのは想定してなきゃ、ねえ?」


 にっこり、と効果音がつくような笑顔で答えてキンキン暴力赤髪女子と視線を合わせたまま立ち上がると、何故か引いている。

 おかしいなあ?目には目をは当たり前よね?


「あら、逃げるの?」

「誰が!!」


 その一言で真っ赤になって、顔も髪も真っ赤女子はサックリ釣り上げられるが、チョロ過ぎで心配になるよ。

 煽られて、まんまと乗ってしまった事を自覚するとまた手を振り上げた彼女を冷たく見ていたら、振り下ろす寸前で彼女の顔が赤から見事に青くなった。

 リトマス紙みたいだわ〜なんて暢気に見てたら、地の底から響くような絶対零度の声が背後から聞こえた。


「ねえ、その手、どうするつもりなのかな?」

「あ、あ、あの……!」

「ねえ、オレ、聞いているんだけど?」

「違うんです!」

「なにが?」


 耳元で聞こえる激低音のアランの声!!

 うわぁ、そんな場合じゃないんだけど、本当に声良い!!!!!


 ああ、女子の顔色死にそうに悪いけど、助ける必要性も感じないしな。

 うん、アラン、ほんと病んでなきゃマジで最高ー!!


「リリアナ?」

「うん」

「気持ち削がれるから大人しくして?」

「うーん。うん、激おこアランの声好きだからいいよ?」


 ちゃんと大人しくするって言ったのに、アランは深いそれは深ーーーいため息をついたあと、顔を手に当てて天井を見上げてしまった。

 解せぬ。

 目の前の女子も、砂か何か吐きそうな顔してる。おかしいな?


「リリ?」

「うん?」

「ちょっと、こっち向こうね」


 何で私怒られるてるんや、と思いつつ、笑顔で怒ってるアランほ危険なので大人しく従うと胸元に抱き込まれて逃げられなくされた!!

 く、苦しい、、、


「はあ、見ての通り、この子はオレの女なの。分かった?

 女で通じないなら、彼女、恋人、だから……この子傷付けたら許さないから。

 オレの本気試したいなら、試してもいいけど絶対後悔させるし、許さないし、お前たちに振り向くことは死んでもない」

「で、でも!!アラン君は学園のアイドルで……」

「はあ?オレ、そんな下らないものになった記憶ないけど?」

「前は!!みんなに、優しかったじゃない!!」


 必死に食らいつく女子の声だけ聞こえるけど、勇気あんなーとしか思わず、温かいので少し眠い。

 寝たら何されるか分からないから、必死で意識を保つ。早く終わらないかなぁ。


「前は、リリアナをちゃんと知らなかったからね。

 今はリリアナがいるから、他はいらない。そして、リリアナを害す奴は許さないから」


 うわあ、凄いセリフ!!!カッコよ!!

 所で、私初めて恋人って言われたよ?!マジかーーー嬉しいなあ。

 良かった!でも、本当に良いのかな?命のリスクは上がっているせいか、ドキドキが止まらないわ。


「酷いわ」とか何とか半泣きな声の後、バタバタと去って行く足音ががしてからたっぷり10秒数えてやっと話して貰えた。


「ぷはあ…… 苦しかった」

「リリ」

「もうちょっと手加減して欲しいんだけど?」

「リリ?」

「あ、ハイ……」


 あー……ご機嫌氷点下のままだわ。

 笑顔で怒ったままのアランがいつの間にか私の荷物をまとめていて渡して来るので、受け取りつつ周りにぺこぺこ頭を下げて図書館を後にした。

 よくよく考えるとあのキンキン女子に邪魔されて全然レポートが進んでいない気がするが、私の片手はアランに捕まれたままどこかに向かっている。


「アラン?どこに向かっているの?」

「……」

「アランー?私…… 怒らせるようなことした?」

「した」

「うーん…… あのキンキン声の子なら、私一人でも対応できたよ?」

「知ってる。でもわざともう1回叩かれるつもりだったろ?」

「まあ、うん。その方が彼女、墓穴掘るしね。私は自分でサックリ治せるし」


 そう言いながら最初に叩かれた左頬が痛いことを思い出して治そうと魔法展開しようと思ったら、アランがぶすくれた顔のまま頬に触る。


「ぃつっ」

「切れてる。爪が引っ掛かったんだろう」

「あらら、気付いてなかった…… って、いいっっ!!」


 怪我をしている所をさらに引っかかれ、痛い!!

 涙目でアランを睨むと無表情で目だけが爛々としているアランに絶句してしまった。


「オレ以外に勝手に傷付けられてんじゃねえよ……」


 そう言いながら治療してくれる。この病んでるは、また……。


「……アランはいいの?」

「お前はオレのもんだからな」

「理不尽では?」

「なんだ、文句ある?」

「流石にあるけど、治してくれてありがとう」


 私はそのままアランに連れられて、学園の端にある湖のほとりに来ていた。

 木陰の東屋に私は資料を広げ、アランは相変わらず私を枕にウトウトしている。この男がまともに勉強している所をみた覚えがないけど、成績いいのが腹立つ。

 レポートとかはどこで書いているんだろう?といつも思う。思うが折角準備してくれたので大人しくレポートを再開する。




 暫く集中し、レポートを進め7割がた終えた。ついでにアランが地味に重くて足がしびれてきた……。


「ふう、ここまでかなぁ……」


 アランにではなく、一人ごちる。


「本当に寝ているのかしら、ね」


 そう言いつつ、アランの髪を梳く。割とアランの髪を触っているのは好きだから、ついつい触ってしまう。


「アラン、無防備に見えるんだけどねぇ。きっと寝てないんだろうなぁ」

「……」

「でも、相手してくれないのつまらないし、悪戯しようかな♪」


 まだ無反応を貫くようだ。ふうん、じゃあちょっと吃驚させちゃおう。

 私は一瞬で魔法を展開すると、アランは飛び起きて私は押し倒されて魔法を展開していた右手を抑えられていた。


「リリ?」

「アラン、流石に過剰反応だと思うの。ほら」


 私はそのまま展開した魔法を実行するとシャボン玉をアランの顔に当てた。

 アランは驚いた後、苦虫を嚙み潰したような顔で私を見つつも落ち着いて行く。


「もう、私が使える魔法なんて大したものじゃないの知ってるでしょうに」

「リリ、お前、オレが反応するって分かってやったな?」

「うん、アランは魔力感知凄いのは割とみんな知ってると思うよ?」

「そうじゃない」


 そう言って久々に本気モードが半分入っている冷たいアランの視線にぞくりとする。

 ほんと、1つ選択ミスすると即死が待ってる相手なんだと再認識する。ここはどうやり過ごすのが正解だろう?

 しらばっくれる、かなあ。

読んでいただきありがとうございます。

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