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4話:被害者の会

 魔法薬クラスでの片づけを終えて、アランと2人カフェテリアに迎い、お互いランチを受け取ると言葉少なに席に着いた。


「リリアナ」

「うん?」

「悪い、オレが目を離したから」

「ううん、アランのせいじゃないよ」


 アランは珍しく困った顔をしていたが、私も疲れていたので無意識にサンドイッチの付け合せの色とりどりのピクルスわ無心でパクつく。


「オレ、今日の魔法薬、結構楽しみだったんだ」

「うん」


 好みそうだよなって思ってた。


「大事な所だから待てって言ってるのに、定着剤を勝手に入れて。しかも2番目に入れる方を」

「うわぁ……」

「いつも通り、ボン!

 でも、頑張れば昼休み半ば位で作り上げられると思って、あの時急いで計量してたんだ。

 そうしたら、いつも間にかリリアナの所に」

「アラン、らしくない顔になってるよ……」


 嫌悪が前面に出てるアランは珍しい。凄いなルイーゼ、外面用の猫が分厚いアランにこんな顔させるなんて。

 めちゃくちゃ悔しそうで、思わずよしよしと頭を撫でてしまった。


「あ、ごめん」

「いいけど、そんな凄い顔してた?」

「うん、悔しいって顔してた」

「それは、……お前に迷惑かける気は無かった。

 オレたちフォロー役は、迷惑料として予めそれぞれに報酬貰う事になってるから、オレが迷惑被るのは折り込み済みなんだ。

 でも、リリアナは違う」


 はあ〜、とアランがものすっごい重い溜息をついていると、魔法薬クラスの同級生達がやって来た。


「やあ、災難だったな」

「アランが制御出来ない女生徒っているんだな」

「リリアナさんも、親切がアダで返ってきちゃってご愁傷さま」

「リリ、放課後頑張ってね?夜差し入れ持っていくよ」


 口々に言う同級生の話す内容をまとめると、みんな一度はルイーゼと関わり大変な目にあっていた。だからこそ、事故が起きてもなるべく関わりたくない。

 ルイーゼ自身は勤勉で人柄も悪くなく、座学は優秀な方なのに、実技になるとてんでダメになる。もちろん、無属性だから各属性に合わせてから使用する必要があるのは分かるが、それ以上にただのポカミスが多いのが致命的。

 そして、悪意がないからタチが悪い。


 そう、彼女に悪意はないの。知ってる。

 なのにやらかす内容があまりに酷く、悪意がある方がしっくり来るレベルなんだ。

 だから、可愛いけど、みんな警戒している。巻き込まないで欲しい、と。

 私も思い知った、まさか自分の作業スペースに入り込んでしかも直接手を出されるとは思ってなかった。

 アランも私の手を止めたからグレーではあるけど、アレは相手が成績優秀なアランだからこそで、ルイーゼとは意味合いが違うし、直接何かはしなかった。当たり前だけど、それが礼儀だし常識だ。


 そんなこんなで、お昼休みはルイーゼ被害者の会の愚痴でほぼ終わってしまった。

 幸い?なのは、ルイーゼ本人はまだ解放されてないようで、彼女に私たちの愚痴が聞かれることは無かったのは良かった。愚痴でも、本人からしたらただの悪口になっちゃうから、お互いに気まずいしね。


 その日の午後の授業を終えてから魔法薬クラスへアランと向かうと先生が待って居てくださった。


「すみません、授業が終わり次第来たんですがお待たせしましたか?」

「いいえ、大丈夫ですよ。ただ……」

「先生?」

「はあ、被害者の貴方たちに申し訳無いのですが、本日の魔法薬の素材が後1人分しか無いので2人で作っていただいて評価したいと思います」


 物凄い苦虫を噛み潰したような顔をしていた先生を見るに、あの後更に何かあったんだろう。


「分かりました。私は問題ないです」

「オレもリリアナなら問題ないです。ただ、まだ2〜3人分の材料は少なくともありましたよね?」

「ええ、実は失敗した時用に今回は複雑なので10人分は多く用意していたんですよ。

 他のクラスでの失敗もあるので5人分は消費されていましたが、このクラスの分には余裕があるばすでした」

「まさか……」

「そのまさか、ですね。アランが自分の分の計量を終えてくれていて良かったですよ、本当に」


 先生の遠くを見る目に私とアランも思わず顔を見合せてしまう。

 ルイーゼ、一体何をやらかしたんだ?


「ルイーゼさんは、何故か4人分をそのまま使い始め、止めようとした時には基本となる薬草を雑に刻んで熱湯に突っ込んでいたんですよ」

「えっ?! 結構な量がありますよね?」

「ええ、なのでぎゅうぎゅうに押し込んで熱湯が溢れ……

 本人は軽い火傷をして、更に溢れた薬草から染み出した薬液が服に染みを作った事にパニックを起こしてひっくり返し、酷い惨状でした。

 学院長が見ているはずだったんですが、他の教師と少し話している間に勝手に始めたようでして。

 ふふふふふふ、今回の魔法薬クラスの損失は全て学院長の私財で補填させてやりましたよ!!」

「うわぁ…… ルイーゼさん、どうしたらそうなるんだろう?」


 そして、先生から黒いオーラが出まくっているのがヤバい。

 まだブツブツ言ってるのにドン引きしていた私を、アランはそっと離して魔法薬の作成に入る事にした。

 確かに時間を無駄にするのは勿体ない、と言うか先生もほんと災難よねぇ。


 下準備をさっさと終えて火を使う準備をする。

 アランは流石に魔法薬クラスの優秀生だけあって素材の扱いも丁寧で無駄がなく細かい。

 先ずは薬草の煮出しなので水と薬草を1対1で入れ火にかける。私が火の様子を見ている間にアランはそこに加える薬剤を確認する。

 1つ目の薬剤は先に計量しておいて問題ないが、2つ目は空気に触れると劣化するため直前に出すのがベストだ。


「リリアナ、色が変わって1秒だ」

「了解、入れます」


 綺麗なピンク色の薬液が出来た。色合い的にも完璧。

 即座にこしきに流し、内容物を取り除いた薬液の温度を確認して、一定温度を待ってアランが次の薬液を入れる。

 薬液は一気に鮮やかなブルーグリーンに変化して安定した。あとは粗熱をとって保存するだけだ。


 阿吽の呼吸でアランと私は器具の片付けを始める。

 そこに先生の怒声が聞こえて驚いて振り返ると、またしてもルイーゼがいた。


「またあなたですか!!

 今は実験中なのであなたは立ち入り禁止です!!これ以上私のクラスを壊さないでいただきたい!」

「そんなっ、私そんなつもりじゃ……」

「それでは、今すぐ帰寮して下さい。何をやらかすか分からないあなたは居るだけで邪魔です」

「で、でも……」


 思いっきり拒否する先生に内心感謝しつつ、恐らくこっちを見ているだろうルイーゼの方に視線を向けずに無視した。

 多少良心は痛むけど、またダメにされるのは私も勘弁なのよ……。


 あー、とうとうグズグズ泣き出したわ。私、この子苦手かもしれないなどと冷たい事を考えていたら、アランが動いた。

 流石にフォローかな?


「ルイーゼちゃん、気が散って迷惑だからほんとさっさと帰ってくれない?」


 あ、トドメ刺しに行ってたわ。流石だわ。

 ルイーゼはまたしてもショックです!って顔してから泣きながら走り去って行ったわ。

 うん、静かになったな。


 思わず、私、アラン、先生のため息が重なる。


「アラン、そろそろ粗熱も取れてると思うし詰めて終えよう?」

「そうだな」

「流石に2人は手早いし安定してますね。詰め終えたら確認するので声をかけて下さい。

 私は準備室などの施錠をして来ます」


 私とアランはそれぞれ自分の名前を書いた小瓶に出来上がった魔法薬を詰め、魔力を流して封をした。

 小瓶は割れにくい素材なので、仮にルイーゼがまた来て落としたくらいなら全く問題ないので安心だ。今回の事でとことんルイーゼへの信頼度はなくなったので、仕方ない。


 先生に2人で提出しもちろん問題なし、むしろ短時間での効率の良さ、片付けまでバッチリの最高評価を貰ってから急いで寮へと戻った。

 お夕飯を食いっぱぐれたらたまったもんじゃないからね!


読んでいただきありがとうございます。

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