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3話:急接近

 翌朝から、アランは私にベッタリになった。うん、何かしてくるとは思っていたけれど、ストレートに来たな。


「おはよ、リリアナ」

「お、おはようございます」

「固いなぁ。もっとフランクに行こう?」

「いえ、私にも体面が……」

「学院内なのに?」

「それでも、です!!」

「仕方ないなあ、ではお嬢様、参りましょう」

「くっ、ほんとどんな態度も様になるのズルいわ」


 そんな会話をしつつ、私たちは朝の授業を受けに学院へと向かった。

 ほんと、本性さえ無ければ、イケメンだし素直に喜べるんだけどなぁ。推しだけど、2次元だから推せてたんだよ、無条件に。


 そもそも私とアランは同じ属性、同じように魔法薬や魔道具を先行している事から実は同じ授業が多かった。主人公のルイーズは魔法自体の訓練が多いのでそんなに被る事はないが、魔法薬は受けているのでアランがその時は常にサポートとして側についている。

 アランが元々目立つ上に何かと話題に事欠かないルイーゼ、または他の目立つ女子生徒と一緒にいたアランが、今日は学院に着いてからも私とずっとつかず離れずで側にいたため、必然的に目立ってしまう。


 ようやくグループ作業で別れて、仲良い友人たちがやっと近づいて来られたのだが、まあ、興味津々で目がキラキラしているのを見るとうんざりするしかない。


「ねえねえ」

「私も訳分からないから何も説明出来ないよ?」

「ええーっ!でもきっかけは分かってるんでしょう?」

「まあ、と言うか昨日の件、見ていたでしょ」

「えっ、まさかアレ?あの子のフォローをリリアナがしてたから?」

「そそ。それより準備しないとお昼なくなるよ、今日の結構効率良くやらないと時間かかる魔法薬の組み合わせだよ?」

「うわっ!お昼に詳しく聞かせてね!」


 嫌だな、どう逃げようかなと思いつつ私自身も素材の確認を進めつつ計量と器材に入れていく。

 先生ガチで今日のは試験兼ねてるくらい時間いっぱいで何とか作り切れるかどうか。


 真面目に集中して作業を進める、次の段階は温度と攪拌で薬液の色が変わる、そのタイミングに合わせて定着液を入れて状態を保持しないといけない。

 植物素材のため、薄い緑の液体が淡いピンクに変わり、定着液を入れようとしたら誰かに手を止められた。

 その一瞬後に、綺麗なピンク色となった所で手を動かされて定着液が全量入りピンクの色が変わらない事を確認して火を止める。


「ふう」

「危なかったね?」

「ありがとう、危うく定着液を早く入れちゃう所だったわ。

 でも、良く気付いたわね?」


 振り向いて私の手を止めたアランを見上げると、相変わらず綺麗な顔が思ったより近くにあって後退りそうになる。

 後ろに器具があるので、勿論アランに止められたけど。


「うん、いつものアレが起きちゃってねえ」


 あ、察し。

 しかも、アラン割りと不機嫌だわこの反応。多分やるなって言った直後にやらかしてダメにしたな。

 こういう凝った魔法薬を作るのをアランは得意で好きだから、仕上げたかったんだろう。


「アランはどうなるの?」

「残念ながらオレの分もダメになってるから、放課後だね。

 まあ、こっちはいいからリリアナのはもう少しで完成なんだから仕上げちゃおう」

「そうね、ありがとう」


 アランが自分の作業台に戻るのを見送りつつ、私も作業を再開する。仕上げ用の薬液を作るには薬草を細かく刻むほど煮る時間は短く、かつ効力が高くなるからなるべく細かくでも無駄にしないように気を付けて刻む。


 先程の薬液とは別のビーカーに純水と共に入れて沸騰から10秒、綺麗な若草色になったら火から離して、こしきに流し込み色と内容物の確認をする。


 よし、不純物はない。これをピンクの薬液に混ぜたら完成だ。


「ルイーゼ!やめろ!!」


 アランの声に意識を取られ、横を見ると何故かルイーゼがいて私の作成した薬液の入ったビーカーを取ろうとしてた。


「ダメ!!」

「えっ、あっつ……」


 ルイーゼが持ったビーカーはさっきまで火にかけられていたんだ、当たり前だろうと思うが、そのビーカーを手放して……


 カシャーン!


 と、高い音をたててビーカーは落ちて薬液を辺りに撒き散らして割れた。

 私も火傷防止の手袋をして別のビーカーを持っていたので見ているしか出来なかった。

 折角、アランが助けてくれて綺麗に作れていたのに……。あ、やば、涙でそう。


「騒がしいですよ、何が起きて……って。

 はあ、また貴方ですがルイーゼさん!何故リリアナさんの所に……っ!!

 リリアナさん、怪我は?!」

「私は無事ですが……」


 先生は惨状をみると眉間を押さえて重い溜息をついていた。まあ、溜息もつきたくなるよね。


「リリアナさん、こうなっては仕方ない。その薬液もよく出来ていますが、そのまま置いておけないのは分かっているでしょうから申し訳ないですけど無害化して処分をお願いします。

 アラン、こちらを手伝って下さい。

 2人とも、申し訳ないですが魔法薬作成は放課後にまた来てください」


 私もアランも「はい」と答えて早速片付けを始めるけど、虚しいなあ。

 先生の言う通りこの若草色の薬液はすぐに劣化してしまう。作ってすぐに使用しないと効力が抜けてしまうため、すぐに使えなくなったからには処分するしかない。

 分かってはいるけど!!

 はぁ……。ため息が重くなるのは許して欲しい。


 一方先生は私とアランに向ける優しい顔から一変鬼のような顔でルイーゼを叱ってる。


「ルイーゼさん、私は、ハッキリ言ったはずです。

 周りの邪魔をせず、大人しく、作業を見ているように、と」

「は、はい!でも!」

「でも、など聞いていません。私の話が聞こえないんですか?それとも理解出来ないんですか?」

「いえ……」

「なのに貴方は、フォロー役のアランに迷惑かけるだけでなく、リリアナさんにまで迷惑をかけて!

 リリアナさんに恨みでもあるんですか?!」

「そんな!違います!!ただ、お手伝い出来たらと……」

「それでリリアナさんの薬液をダメにしているんですから、余計な事をしないのが一番の手伝いであることをいい加減に自覚してください!」

「酷い、そこまで言わなくても……」

「そこまで言わないと分からないから言うんですよ!」


 目に涙を溜めたルイーゼはチラチラと私とアランを見てくるが、流石にフォローの言葉もないので視線を逸らすと、ショックです!!と言わんばかり目を見開いた後、ポロポロと泣き出した。

 知らんがな。迷惑してるのは私とアランだし。

 私を悪者にしようとしないで欲しい。

 まあ、周りみんなルイーゼを冷たい目で見てるから心配ないけど。


「ルイーゼちゃん、今回ばかりはオレもフォロー出来ないかな?」

「アラン、なんで……」

「だってオレも何度も言ったよね?火も薬剤も使っているから離れて見ているだけにしろって」

「アランまで、酷い……!」

「どこが?リリアナの魔法薬は完成目前だったのに、ルイーゼちゃんが全部台無しにしたんだよ?

 あれは優秀な評価を取れる出来だったのに、もしかしてワザと?」

「違いますっ!!」

「そ、まあいいよ。オレたちはまだ片付けあるから」


 それだけ言うとルイーゼの事は無視してアランは私の片付けを手伝ってくれた。

 その間にルイーゼは先生に何処かへと連行されて行った。……恐らく学院長室だろう、壊されるものもないし、学院長怖いし。


 ようやく片付け終わった頃には授業も終わり、私とアランはお互い疲れた顔でお昼を取りに向かった。

読んでいただきありがとうございます。

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