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2話:避けられない嵐

 その夜、結局私はカフェテリアに居た。この学生寮のご飯は美味しいし、正直、嫌な事は早く終わらせたい。

 早く終わらせて、「こんなもんか」と興味を失って欲しい……。

 希望的観測だけど。


 ざっと見渡してもアランは見当たらなかったので、気にせず自分の食事を取って空いている席でさっさと食べ始めることにした。

 居ないもんは居ないしね。私悪くないし、時間とか約束してないし、と自分に言い訳しつつ。


 私が食べていると案の定アランが来た。


「やあ、昼間ぶり〜」

「こんばんは」


 当たり前のように隣に座る。

 おい、なんで隣りなんだよ?!普通お話するなら正面でしょ?とは言えない。言いたい。


「あ、あの……」

「うん?どうかした?」

「分かってやってるんでしょう?距離が近いです……」

「うん、ワザとだよ。内緒話、しやすいでしょ?」


 そう言ってウインクするアランの破壊力は抜群すぎる!!イケメンが過ぎる!!!

 可愛いカッコイイ、絶対私今顔が赤いけど、止められる訳もなく。


 終始アランに翻弄されながら、他愛のない話をしながら食事をする。

 知識としては知っていたけど、アランは本当に話が上手くてジョークを混ぜながら楽しく会話が進む。気付けば警戒していた事も忘れるくらいに普通に楽しくて、自然と談笑しながら私たちは食事を終え、もう少し話そうとバルコニーに出ていた。


「ねえ、そう言えばいつからオレの目が笑ってないのに気付いたの?」


 内心来たー!と思いつつ、元々ここは正直に話そうって決めてたから、大丈夫。

 嘘はアランには見抜かれる。アランの目を騙せる自信はない。


「割と早々にかな?アランは色んな女の子たちと居てにこにこしてるけど、そんなに楽しくも無さそうだなって思ったのが最初だよ」

「そっかー。でも、オレ、リリアナちゃんと話した記憶ないんだけど?」

「うん、ほぼないと思うよ。同じクラスだから、授業関係で一言二言くらいじゃないかな?」

「ふぅん、それなのにそんなにオレの事、見ていてくれたんだ?」

「っ!!」


 そこで猫のような目になるな!!色気出すなし!!!

 明らかに揶揄うように、煽るように、愉しそうに目を細めるアランの表情は実に誘うようで色っぽい上に、分かってやっている。

 そう、分かっているんだけど、顔面偏差値が高すぎて目が離せないのが悔しい!


「ねえ、そんなに、オレの事が気になるの?」

「ち、ちがっ!!あ、アランは、目立つから、目に入るのよ……」

「そっか。オレ、リリアナちゃんの好み?」

「くぅっ……!!この確信犯!!

 か、格好いいと、思っているわ。これで満足!?」


 推しに推していることを暴かれるなんて、なにこの羞恥プレイ!!

 もう、アランの顔見れないと顔を背けると、抱きしめられた!?はっ!?なにこの状態??

 私を捕まえている腕が思いの外力強くて、大きくて、相手が男性なのだと改めて意識させられて益々身動きが取れなくなる。


「ねえ、リリアナちゃん?」

「ふぁいっ」

「まだ、()()()、あるよね?」


 あ、しまった。

 そうだよ、この人相手に油断なんてしちゃいけないのに、知らんぷりするにも固まってしまった!!

 どう、逃げよう……。


「お、女の子は秘密は常にあるわよ!

 というか、離して!!」

「うーん、ダメかな~。だって、逃げちゃうでしょ?

 それにリリアナちゃん、柔らかいし、いい匂いするから離したくないな〜」

「え、ちょ、セクハラ!!!」

「あっはは!そうだなあ〜 秘密を1つ教えてくれるなら、離してあげてもいいよ?」


 嘘だな。内容次第では泳がせてくれるんだろうけど、無罪放免は中々されないだろう。

 とは言え、この状況のままなのは心臓がもたないし、アランが面倒になったら別の手段に訴えてくるのは分かっている。

 仕方ない…… 出せる情報を出そう。


「うーーー。……ルイーゼさん、よ。

 貴方と居るから、少し、羨ましかったのよ、本当は」

「えっ、でもオレの事こわいって」

「そうよ、目が笑ってなくて怖いけど、カッコイイもの。そりゃ、羨ましいでしょ?」

「へぇ、それは嬉しいな」

「もう!話したんだから離してよ!!」

「無理」

「はぁ?!」

「こんな可愛い事言うリリアナ、離せないでしょ〜」


 軽いパニックになりつつ暴れても、細身なのに力のあるアランに抱きしめられている私はもがくだけで逃げ出せない。

 しかも今、私の名前、呼び捨てにしたよね?!

 ダメだってーーー!!!これ以上フラグいらんから!!

 なんで猛スピードで好感度上がってるの?!


「ううーーーっっ」

「はは、リリアナちゃんを堪能したし、今日は逃がしてあげるよ?」

()()()?」

「うん。だってお前、まだ()()だろ?」


 一瞬にして雰囲気の変わるアランにぞくりと背筋に寒気が襲い、言外に隠している事を吐けと言われているが、そんなもの認める訳にはいかない。

 隠し過ぎないように、自然に……。


「な、ないって!!」

「そっか。じゃあ、オレが納得するまで付き合ってもらうね。よ・ろ・し・く・ね〜」


 言うなり、さっさと去って行ってしまうアランに私はぷるぷると怒りに震えるしか出来なかった。


「なぁんでーーーー!!!」


 本当に、何でこうなった?!

 誰か教えて!!! 私はどう対応するのが正解だったの?!



 それから5分後、ようやく立ち直った私は失意を抱えつつも部屋に戻る。明日から私の生活はどうなるんだろう?

 アランが納得するまで付き合うって、何をすれば、何を話せば納得して私を開放してくれるんだろう?


 何事もない明日が来ることを切実に祈りつつ、無理だろうなと諦めつつ、私は現実逃避をするために早めにベッドへもぐりこんだ。


読んでいただきありがとうございます。

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