番外編2:ディミシス・サウジーナ
魔法学院を囲む四国の一国、南のサウジーナ王国の第一王子として生を受けた私、ディミシス・サウジーナは祖国の南半分が砂漠であることから砂漠の緑化の研究を行うために魔法学院へと入学していた。
砂漠の緑化は様々なものが挑戦をしてきたが、やはりどれも一時的にしか成功しておらず、魔力や魔石が無くなると少しずつまた砂漠に戻ってしまう。
砂を土に、植物を育成しても、ネックとなるのはやはり水源の確保出会った。また、砂漠にある植物は自身の中に水はため込むが豊かな土地にある植物と違って地を固定するような根の強さを持っていなかった。
私は根本からの解決を行うため、この世界を巡る魔脈または龍脈と呼ばれる魔力の流れの修正から水を呼び込むことができないかと考えている。この話を学院長としたところ、興味を持って貰え、折角なので自分でその手法を探した方が良いだろうと学院への入学を勧められて入学に至った。
魔法学院は四国に囲まれているため、使われる言語はそのどれでもなく、共通言語と呼ばれる四国で独自発展する前の基礎となった言語で授業も全ての会話も行われる。四国の上位貴族以上は周辺国と共通言語は必修であるため、もちろん王族である私も問題なく習得している。
平民もこの学院に入学できる者であれば、恐らく片言でも使えるくらいの教育はされた者しかいないだろう。
また魔法学院は平民から王侯貴族までいるため、基本的に立場は平等、身分の持ち込みは学院内においては禁止とされている。これは学院長の方針でもあり、彼の女史曰く
「いちいち面倒ですもの、私から見ればみな子供でしかありませんのに。たかが実家の力で私をどうこうできる訳もありませんでしょう?」
と迫力ある笑顔で言われた。
それに甘ったれた貴族家の子供は少しは自分で自分の事をやる事で、使用人たちに感謝の意識や、平民も同じ人間であること理解するべきだ、とも。確かに貴族の中には自分たちを特別視し、平民を価値のないものとして扱う者もいる。そういった価値観の中で生きてきたのだから仕方ない一面はあるが、正しいものではないので、その是正のきっかけとしてこの学院での生活は意義があるだろう。
私も一学生として過ごして一年が過ぎようという頃、学院長から呼び出しを受けて学院長室に行くと他に5人の生徒がいた。学院長からの依頼で、断ってくれても良いが、受けてくれた場合には報酬を出すと言う。その依頼内容とは翌学年から入学する、特殊な魔法属性の女生徒のサポート、補助役だ。
その女性徒の魔法属性は「無」という、魔法史を振り返っても非常に稀な属性であり、「無」は「全」への可能性があるため各属性の生徒の中でも優秀なものにサポートをお願いしたいと説明された。
私はその女性徒が初ではない事に驚いたが、学院長曰く数千年ぶりの発見なのでほぼ初と変わらないさ、と笑っていらっしゃった。
そして、私への報酬は学院の裏にある湖の秘密の開示。どうやらこの場所は元々火属性に偏っていたため、水の精霊ウンディーネの住処を用意し、水の魔力を満たすことで土地のバランスを取っているらしい。これが応用できれば、我が国の砂漠の緑化も夢じゃないだろう。ただし、学院長から砂漠には水の魔力が嫌がる何かがあるから、そちらの解決と同時並行で進めるべきだ、との忠告もいただいた。
なんにせよ、無属性魔法も気になるし、自分にメリットの大きい依頼だけに断る選択肢は無かったので、その場で即答で受けた。
この1年様々な文献での土地の属性変化、精霊、設置型の魔法など様々なものを調べていたが、これだというものには辿り着いていなかった。様々な事象やケースについての報告書や研究書は見当たが自国への応用は出来そうになかった。
ここに来て、まさか魔法学院で既に行われていたとは灯台下暗しだった。正直学院長に試されていたんだろうとは思うが、同時に自分の魔法のレベルアップも出来ているので、それも狙ったんだろうと思うと文句も言えない。
そもそも文句を言った所で鼻で嗤われるだけだ。そういう方だ、あの人は。
改めて、周りの5人を確認すると、まあ面白い顔ぶれだ。魔法オタクで暴走し始めると面倒な残念イケメンと評判のカーティス・フランク、女生徒には気難しくちょっと乱暴なところが減点だが可愛い、男子生徒にはあいつバカだけど面白いよなと評判、火属性で火力だけは3人前、歩く火薬庫のエドガー・セイブル、土属性は逆に真面目で優等生、ちょっと融通は利かないがリーダー気質のブライアン・バーンズは流石高位貴族らしく優美で、その真逆で女性徒を常に侍らせ、華やかなで怠惰な雰囲気の派手なアラン・ガーロンド、そして最年少入学を果たした人見知りで人と関わるのが苦手なキース・プリミティ。更に、自分という何とも個性豊かな面子に何か起きそうな予感はして楽しみだ。
それに男ばかりで、どの男も癖はあるが見た目は一流と言うことは、学院長は恋愛もその女生徒の成長に必要だと考えているのが見て取れる。とはいえ、こればっかりは学院長の思惑通りに行くかな?と、この時は彼の女史とは思えない策だと思っていた。
無属性の女生徒、ルイーゼ・メリーベルと顔合わせをさせられたのは彼女の入学式の前日だった。
ピンクブロンドにオレンジの瞳が愛らしい女性で、やはり平民らしく屈託もなく笑い、感情を素直に表に出すのは可愛かったが、それだけだった。だが、無属性の魔力を見るのは初めてで興味深かった。
顔合わせの後、ルイーゼの魔法を見せてもらうことになり、魔法の訓練場で見せてもらうことになった。
「たぶん、上手く行かないから気を付けてね……」
「ルイーゼちゃん、何かあってもオレが治癒するから安心して」
「はい!では、いきます!」
そう言って魔法を展開しようとしたルイーゼの魔力は確かに「無」で言うなれば何も描く前の「真っ白なキャンパス」のように汚れなく見えた。
そのルイーゼが属性を変えようとすると、「無」だった魔力に属性の「色」が乗って行く。色のついた魔力は魔法陣を描き、発動しようとした時、色がまた抜けて行き、弾けた。
ボン!という爆破音と共にルイーゼの短い悲鳴が聞こえた。
「あいたた…… やっぱり上手くできない……」
「っ!!すごい!!!凄いよ、ルイーゼ!!!」
「えっ?ええ??」
なんとも不思議なものを見せられ、珍しく私も興奮したが、カーティスのはしゃぎように、一気に冷静になった。ルイーゼもドン引きしているが、その全てを無視してさっさと必要な治癒をするアランのマイペースさよ。ブライアンはおろおろしているし、少し落ち着け。
何気にキースもそわそわしてるし、エドガーも心配している。なんだかんだみんな良い奴等だ。
「ぷっ、ちょっと楽しくなってきたな」
私はそう、誰にも聞かれないように呟いて始まったばかりのこの楽しいメンバーでの学院生活が楽しみになっていた。
彼等とルイーゼなら、きっと思いがけない事件や発見などがある刺激的な学院での生活が待っているだろうと思える。
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