必殺!伝家の宝刀!
よろしくお願いします。
サブヒロインの名前をあい→あいりに変更しました。
この世界での成人は20のままでお願いします。
皆さんお気付きかもしれませんが、美澪は(本人無自覚の)超絶美少女です。微笑みかけたらよっぽどの人じゃない限りおちます(笑)。
私は塚本あいり、陽実高校の1年生だ。好きな教科は数学と体育、苦手なのは昼休み後の古典。大好物はチョコレートで、餡子はそんなに好きじゃない(もちろん食べられるけどね?)。鼻筋の通った鼻、小さい顔、ぱっちりと大きな二重、金に染めた腰まである長い髪、細い身体。全体で見れば十二分に可愛いと言われるであろう私の容姿は、いつも隣の子によって薄まってしまう(とはいえ十分自分の容姿に自信は持っているんだけど)。
爽やかに降り注ぐ日光を、今日も今日とてレフ板いらずの美澪の白い肌が反射した。肩下までの黒髪、綺麗にカールしたまつ毛、涼やかでかつ切れ長な一重、高い鼻、足の長さが際立つ身長の高さ(170はある)。オリエンタルビューティーに西洋要素を組み合わせたみたいなほんとによくわかんないほど美人な相棒は、今日も今日とて自分の容姿に無頓着だ。もっと磨けば光るのにな、と勿体なく思いながら彼女の陰に隠れる。何故こんな状態で回想を挟んだのかーーーそれは数分前に遡る。
✻ ✻ ✻ ✻
カフェを出て歩いて数分。女子制服姿に戻った美澪と喋りながら歩いていると、私の最推しとも言える人達らしき姿が、目の端にうつった。
これはもしや、と思って駆け寄ってみると、やはり彼らであった。全国巡っちゃいましょツアー(メンバー命名)敢行中の彼らがもうそろそろうちの方にも来てくれないかなと思っていたら、ドンピシャだったのだ。尚、今だからこそこんなに落ち着いて話してられるけど、当時は内心カーニバルである。
「かっこいい……………」
思わず溢れ出た言葉に、周りにいた数人のちりめんず(※ちりめんちゃんねるのファン名)らしき人達がものすごい勢いで首を縦に振っていた。流石に登録者数300万人超えにもなると、ファンの人もかなり多いみたいだ。
改めて(直視できないけど)ちりめんちゃんねるの方へと視線を向けた。
まず目に入ったのがリーダーのアオ。
身長181cm、神奈川県出身の24歳。お兄ちゃん系イケメンである(そんなジャンルあるか知らないけど)。さらさら黒髪センター分けと左目の下にあるほくろが色気をダダ漏れさせてる。学歴もすごくて、首都圏最難関私立を卒業している。肩幅広くて腰が細いとかもうどうすればいいのって感じです(小声)。
続いては私の最推しで、グループ内一の盛り上げ上手であるカイ。
きれいに染め上げた銀色の短髪をワックスでツンツンと逆立てている。身長175cm、大阪府出身の24歳。アオと同い年だけどカイの方が少し誕生日が早いので、予想外のことが起きてアオがテンパった時に頼るのがカイである。たまに出る大阪弁がレアで可愛い(?)と話題。ニコッと笑うとめっちゃ犬っぽい。ユツバにあげている踊ってみた動画の振りは彼がつけていることが多い。チャンネルの中では1番ダンスが上手い。
最後に、末っ子キャラのレイ。
20歳になったばかりの新成人。ほかのメンバー2人と年齢が離れているため、弟キャラでいることが多い。
襟足短めのピンク髪(インナー黒)をいつも無造作にセットしている。ダンス練習動画でたまにおでこ出して髪を縛った姿を公開してるが、その度に数多の死者(強火オタ)が出るらしい。普段はあざとい系のふわふわとした喋り方だが、出身が九州なので、キレたりすると口調が強くなることもある(ここギャップ萌え!)。身長160後半と小さめだが、メンバーの中では1番食べる量が多い。
『ちりめんちゃんねる』は以上の3人で構成されている。それぞれが高いダンススキルを持っており、個人での世界大会優勝回数は幼少期から複数回。初めてグループを組み出場した世界大会では入賞で終わったため、目下の目標は世界大会優勝である。チャンネルでは、そこまでの過程と息抜きをメインに(息抜きという名の企画の方が多くなりがちなのは気にしない、)配信している。最近では、東京での撮影に飽きただかで全国遠征を敢行中。今回この駅前にいたのもその企画の一環と思われる。
……………どうしよう、w○kiかってくらい詳細な解説をしてしまった。いかんいかん、推しの美声を聞き逃さないようにしなければ!
「じゃあ次インタビューに答えてくれる人いるかな〜?」
最最推しの言葉に、瞑想明け(?)の私は咄嗟に手を挙げた。むしろ挙げてしまった。
「じゃあ………そこの、制服姿の可愛い金髪の子!カメラの前まで出てきてくれるかな?」
まだぼんやりとしたままの状態で推しと目があい、さらには指名を受けたことに驚愕する。え、まじで当たったの??!!
「わ、わたしですか?!」
絶対涙目の自信あるよ、うわああああどうしよう!!!
「うん、そうだよ〜。もし良かったら隣の子と一緒においで!」
このカイの言葉に脳天を撃ち抜かれた私は、伝家の宝刀を呼ぶことに決めたのだった。
ーーーーーというのが、事の真相である。
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「ではでは、コレからインタビューを始めていきたいと思います!」
アオの言葉を皮切りに、カメラと全員の視線が私とあいりに向いた。ここまで来たならしょうがない、相棒は今機能してないから私が何とかするしかないか。
「じゃあまず、高校生ですか?」
「はい」
「高校何年生?」
「2人とも高一です」
「そうなんだねー、大人っぽいからもうちょっと上かと思ってた!何高所属かとかも聞いていい?」
やっぱり来た、と思った。普通のユツバーなら聞かない個人情報も、彼らは距離を詰めるために聞いてくる。勿論その情報を配信するかはこちらに許可を取ってからではあるらしいが(以上さっきの観覧時間での調べより)、周りに人がいる以上下手に知られたくない。こういう時は……
「そうですね〜、内緒ですっ!知りたかったら、後で個人的にでも聞きに来てくださいね!」
精一杯あざとく、そして媚びないけどファンであることを伝えるように。それに魅惑の笑み(※当社調べ)をのせれば……
「………ッ」
これまでの自分のことを知って欲しい!というファンとの反応と違って驚いたのか(ファンでない知らない人からの質問内容と考えれば当たり前の反応だが)、ちりめんの3人とも息を呑んだような様子が伝わってきた。
女子なら思い通りになるなんて思うなよ!という悪意を隠しながら、魅惑の笑み(笑)を続け、これを幸いとカメラの前から立ち去ろうと試みる。
「インタビュー、終わりみたいなので帰りますねっ!わざわざありがとうございました♪」
「あッ、ちょっとッ……」
メンバーやクルーたちの呼び止める声を無視してあいりを引き摺りつつ歩き出すと、まるでモーゼの十戒のように人垣が割れて行った。ありがとうございましたー!とにこやかに笑いながら帰ろうとすると……
「……ちょっと待ってッ!これだけ受け取って!」
慌てて走ってきたアオから腕を掴まれ差し出されたものを目にした私は、思わず眉間に皺を寄せた。
「名刺なんて受け取れませんよ。しかもコレ、メアドとかまで書いてあるじゃないですか」
自分の想定以上に嫌そうな声が、辺りに響いた。
私の言葉を聞いたファンらしき人々が、「名刺……?」「共演した人誰にも渡したことがないって言うアオがなんで……?」と騒ぎ出した。
「……っ突然ごめん!でも、受け取って欲しいんだ!」
必死なのかかなり響くアオの声によってさらに大きくなったざわめきがめんどくさく思えて、取り敢えず受け取ろうと手を差し出す。
「分かりました、とりあえず受け取ります。それじゃぁ、失礼します」
最後の言葉に満面の笑みを添えて歩き出した私は、一度も後ろを振り返ろうとしなかった。
カシャッッーーー
人垣の中にいた誰かによって撮られた写真が今後どんな騒動を起こすか、当時のわたしはまだ気づいてもいなかったーーーー。
「あーーーー!!!!私結局アオたちと喋れてない!!!」
「うるさいな、あいりのせいで大変だったんだから!」
ありがとうございました。
これで序章が終わりになります。次から本編です。
尚、諸事情により更新がしばし空くことと存じますが、次も読んでいただけると幸いです。