金魚の目
下をつつく事が苦手なあの子は、いつまでも上でパクパク。それでも食べる事が上手なあの子は、流れ着いた餌に喜んで食らいついていた。
小さな口に大きな餌。収まりきらないソレを必死で食べていた。
つい食べ過ぎて、いつも昼間にはぐったりと休んでる。それを初めてみた時は具合が悪いのかと心配した。それでも夜には動き出して、あまりよくない糞を排泄していた。
一緒に暮らしていたお友達は先に旅立った。
それからは赤い仲間と二人暮らし。いつも後を追いかけていた。
キミが家にやって来てからもう数年経つ。ふっくら丸い身体は、初めて出会った時と変わらない。ヨチヨチ泳ぎの必死な姿が堪らなく愛おしい。
キミは昨晩、旅に出た。
水槽のそこで横たわりながら、何度も何度も口を動かしていた。
ごめんなさい。何もしてあげられない。
キミがつついていた水面に、今日も砕いた餌をまく。
揺れる水面から見ていたキミは、今日から自由に泳げるね。
今度はきっと、もっと大きな世界で暮らせるよ。
キミのお墓は友達と同じように、レモンの鉢植えに拵える。姿が変わってしまうけれど、いつか私が手を伸ばすよ。今度は私が上をつつく。