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➆ 激怒



 

「キメました! ルナ、冒険者になる!」


 先程までネガティブ全開だったルナが、突然立ち上がり宣言する。


 目を星のように輝かせ、ガッツポーズする姿には燃え上がるような闘志を感じる。


 この会話の流れと雰囲気で、よく言い出せたな。

 何というかルナは空気を読めない、天然な気がする。


「冒険者になって、いろんな所に行って、いろんな経験をして、いっぱい敵を倒して……強くなりたいです!」


 いきなりは辞めたほうがいいと思う。

 強くなるためにルナに戦闘を経験させてあげたい、それに色んな場所を観光させたい気持ちもあるけど、まだ早いような……


「とても良い考えだと思う!」


 ク、クラリスさん、なぜ?


「冒険者ギルドには冒険者専用のトレーニングルームがある。 さらに模擬戦用の場所もあり、己を鍛えるにはうってつけだ」


「いや、でも、ルナは最近まで手足が動かなくて、やっと良くなったばかりですよ」


「だから、いいんだ。 別に、いきなり魔物や冒険者と戦わなくてもいい。 とりあえず冒険者になってトレーニングと経験を積むだけでも価値がある」


 そういう考え方もあるな!

 うん、ルナを鍛えるなら冒険者ギルドありかもしれない。


 さすが歳上のお姉さんだ。

 俺よりも聡明な考え方をしている。

 まぁ〜たぶん俺の2、3個上ぐらいだと思うけど……レディーに歳の話は失礼になるから禁物だ。

 

「ルナやってみようか!」


「はい! がんばりましゅ! あっまた噛んだ」


「ははは、ルナは姫様にそっくりだ! よし分かった。 草原地帯にゴブリンが出たという報告もしたいから、私もギルドに付いて行こう」




◆◆◆



 冒険者ギルドの扉の前で立ち尽くす。

 この後の展開が俺には読めている。

 この扉の先には筋骨隆々な男どもがいて、ルナみたいな新入りは虐められて、金をむしり取られる……絶対そうだ。


 俺みたい戦闘できないタイプでは、ルナを守りきれない。

 問題が起きたら、クラリスさんに頼るしか……


 俺は意を決して、扉を押して中へと入る。


 視界に入って来たのは、筋骨隆々の男達ではなく女!


 女女女女女女女女女女女女女


 見渡してみたが女性しかいない!?


 ああ、そうだ……こっちの世界では女性の方が強いのか。

 だから、冒険者は女性だらけ。


「私は先に用事を済ませて来るから、受け付けで登録をするといい」

 

 言い終わるとクラリスさんは二階へと階段を使って上がっていった。

 

 とりあえず安心した。

 女性ばかりならルナが虐められる事はないだろう。

 俺も用事を済ませるか。


「おいおい! 可愛い兄ちゃん、男がこんな物騒な所に来るもんじゃないんだよ。 」


 え、なに、この展開……


 何か分からんが、筋骨隆々のセクシーな女の人に絡まれた。


「えっと、すいません。 俺じゃなくて、こっちの女の子が冒険者になる……」


「そんな事どうでもいんだよ! 俺はな、Bランクのハンターだぞ! 分かるよな。 この町で二人しかいないBランクなんだからよ」

 

 うーん、ごめんなさい、全然分かりません!!!


 俺も、まだ、この世界に来たばかりで勉強中の身。

 Bランクがどの段階の強さのか見当がつかん。


 でも二人しかいないって事は相当強いのかな?


「え〜と、あの〜凄くお強いんですね!」


「あったりまえだ!!! 分かってんなら話は早えー、俺の男になれ」


 こんだけ美人でセクシーな人から、告白されたら凄く嬉しいけど、こんな横暴な人とは付き合いたくない。


 できれば俺はクラリスさんのような優しい大人のお姉さんとお付き合いしたい。


「嬉しいですけど、ごめんなさい、俺には気になる人が……」


「てめぇ〜! 俺の誘いを断るなんて! ぜってい許さねー!」


 や、やばい、怒らせてしまった。

 

「ごふっ!?」


 気づいたら、床に抑えつけられていた。

 何て速さだ、反応できなかった。

 立ち上がろうとするが、足で抑えつけられて、動けない。

 圧倒的パワー、これがBランクのハンターか。


「ご、ごめんなさい」


 とりあえず謝るが、全く許す気がないようだ。

 今度は首を掴まれ無理やり起こされる。


 ぐう、くっ、苦しいぃぃぃ……


 俺の首を掴んでいる手を解こうと両手で試みるがビクともしない。

 そうか、この人は綺麗だから物理攻撃力が高いのか。

 非力な俺では、どうにも、できない……


「おいアバズレ! その汚い手でお兄様に触れんな!」


 ルナ、馬鹿そんな口のきき方したら、お前までやられる。

 こんな怪物みたいな女、相手にしたら駄目だ。


「あああ!!! 新入りのクセに先輩にたいして、口のきき方がなってねえじゃねえか!」


 ハンターの女が俺から手を離し、標的をルナに変更する。

 ルナは睨み付けられも、全く微動だにしない。

 それどころか、いつも、お茶目で、天然で優しいルナから殺意を感じる。


「礼儀ってもんを教えてやるよ! その身体になっ!」


「アバズレが喋んな! てめえの、そのブサイクな顔をさらにブサイクにしてやんよ!」


 き、汚い、とんでもない汚い悪口を吐くルナ。

 いつもと違う、怒り狂ってる。


「もゔ許さねえ!!! 頭にきた!」


 手をグウにして拳を作りだす……相当怒っているご様子だ。

 不味い……このままじゃルナが殺られる。

 

「おらっ! くらえ!」

 

 繰り出したパンチがルナに向かう。


「っう、ルナ……にげろっ」


 喉をえげつないパワーで握られていたせいで、声が掠れる。

 必死に声を出したが、ルナは逃げない。


 ルナは『綺麗』のステータスがやたら低い、あの女ハンターの怪力には適わない。


 近接ではルナが不利だ……


「逃げない! お兄様のために戦うって誓った!」

 

 迫りくるパンチを片手で受け止めてしまう。

 ステータスで負けてるのに平然と受け止めて、お返しにパンチを腹にヒットさせる。


「ぐふぅ!? ぅぅぅ俺が、こんなガキにぃぃ」


 女ハンターは腹を抑えながらくの字に倒れ込む。

 ルナのステータスにそれ程の力があるとは思えないが、かなり苦しそうな表情をしてる。


「……くっそが! くそくそくそ ぜってい殺す。。。」


 ルナを睨み付けながら、ゆっくり立ち上がりバックから何かを取り出す。


「殺す殺す殺す! ドレスアップ……」


 なっ!? 本気で殺る気だ。


 女ハンターが手に持つドレスアーマーが光る。




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