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自動申告は楽だけじゃない…

裏金そのほかの問題により国会議員にのみ、AIによるマイマイナンバーカードを使った所得の自動申告がおこなわれるようになったニホン国。楽して申告~とおもっていた若手議員たちとは裏腹にやきもきの裏金疑惑のトップ5にいたハギュウダン議員ら、その不安は的中し…

 2月下旬から3月初旬。北半球、中緯度あたりの地域では、春の花がようやくほころびはじめ、気温も日に日に高くなり、春の訪れに心躍る…はずだが。ここ、ニホン国では、個人事業主他、所得の申告の時期でもあり、昨年の収入やら経費やらそのほかもろもろの計算だの記帳だの、記録の整理だのに右往左往する人々。そんななかで

「あー、今回は自動申告で良かったです、ボク初めてなんでわけわからなかったし」

と、窓辺のテーブルに陣取って、呑気にコーヒーを飲んでいるのはジコウ党若手議員サンカイ四世。昨年、長年にわたるジコウ党への政党助成金やらパーティー券収入やらの問題で、自分宣伝本を何千万も出して購入するわ、他不適切使用、不適切発言、不適切行動で追及されて引退したサンカイ元事務局長の息子。引退直後の選挙でギリギリセーフで当選、だが議員会館よりはジコウ党会館の喫茶室の方が居心地がよいらしい。

「そーだよなあ、裏金問題とか言って、大騒ぎになったけど、結局、今年からの申告はマイマイナンバーカードを利用する自動申告で方がついたからね。議員は何をするにも、ペン一本、コンビニで買うのもマイマイナンバーカードになったし、なにしろ報酬貰っても他の口座に一円たりとも移せない。妻に渡す生活費もマイマイナンバーカード、しかも妻のカードも申告対象だから、おかげで無駄遣いをしなくなってくれたからね、いいこともあるよ」

と、先輩らしいことを言っているのはオオイズミ・チンジロウ議員。彼も世襲議員で、大臣になろうとロクな事やねえ、口を開けばわけわからんセリフばかり、といわれても馬耳東風。一歳になったばかりの娘の写真をスマートホンの待ち受けにして、目を細めている。

「可愛いお嬢さんですねえ。報酬も政党助成金もマイマイナンバーカードで全部もらって、支払いもそれ、健康保険も、民間の保険も銀行振込も議員は一体化でいいって、反対する人も居たらしいけど、便利でいいですよねえ」

「そうだよねえ。ゴウノ・ダメタロウ大臣がマイマイナンバーカード推進してたんだから、議員が率先してやれば、よかったんだよねえ。国民も納得して、逮捕とか追及とかモそれ以上されなかったし。娘や息子と一緒の時間も増やせたし、なんでアベノ派のハギュウダンさんとか反対したんだろうね」

「さあ、やっぱり、後ろ暗いところか、あったんでしょうかねえ。この間の選挙ついに落選しちゃって、その、議員会館にすら、来なくなったとお聞きしますけど」

バッターン

ドタドタドタ

黒のスーツにサングラスという出で立ちの男女が喫茶室のドアからいきなり入ってきた。

その数、数十人、左手には黒いスーツケース、右手にはスマートフォンを持ち、喫茶室にいた、議員らに近づき

「何々議員確保!」

「〇×議員確保!」

といって、議員の両脇を抱え込み、部屋から次々と連れ出していった。事実上、拘束された議員たちだが、あまりのことに声もだせず、ポカンとした顔で、部屋から連れ出されていく。

「ど、どういうことです!」

と、慌てふためくサンカイ四世の両側にも黒服の男女二人が立っていた。

「サンカイ四世議員確保!」

「オオイズミ・チンジロウ議員確保!」

と、あっという間に彼らも部屋を連れ出された。


「ど、どういうことだ!議員を不当に拘束、こ、これは法律に違反!」

鉄格子のついた車両に押し込められ、何時間も揺られて、ようやく外に出されて、入れられたのが、巨大なドーム状の建物。中は暖房がロクに効いていないが、収容された人数の多さに寒さはそれほど感じない、むしろ暑いくらいである。サンカイ四世が周りをみてみると、左隣はオオイズミ・チンジロウ議員、右隣はジコウ党元アベノノ派元議員のハギュウダン。よくみると知った顔があちこちに、どうやらジコウ党議員、秘書、元議員らが一堂に集められているらしい。他党、西の地域で幅を利かせていたメイジの党らの議員や野党ミンミン党タマギギ派といった顔ぶれもちらほらいるらしい、乱暴な言い方はメイジの党も元幹事長マツイダだろうか、ヤクザかなにかといった怒鳴り声が聞こえてくる。

『いいえ、違反を繰り返していたのはアナタ方です。ワタクシ、自動申告用に開発されたAIシンコです。申告のため、全国会議員の議員報酬、文書交通費などの使用法を精査し、その結果、法的に問題、いやはっきり法律違反といえる使用法の議員が多数いることが判明しました』

サーと血の気が引いたような顔になったハギュウダン元議員。“だ、だから、AIなんかに任せたら、ダメだって言ったんだ。忖度なんかしてくれないし、絶対全部バレるってえ、いくら国民の怒りを抑えて確定申告を無事に終わらせるためとはいえ、閣議決定で自動申告を決めるなんてなんてことをしてくれたんだああキジダダ内閣、え、延命のためとはいえ…”とブツブツつぶやくその様はかなり不気味、それをみてオオイズミ議員もブルブルと震えだした。サンカイ四世は二人の様子におろおろしだす。

『しかも、政府与党であるジコウ党議員。前年のいわゆる裏金問題もあり、前年、前年度の収支も調査しました。銀行、土地家屋、支援者との会合の店やらほか行きつけの店やら利用する通販会社の売買記録、子供名義の貯金にいたるまで重箱の隅をつつきまくり、素粒子レベルという調査結果、申告の漏れ多数であることが判明しました。なかには意図的に隠したと思われるものも多数、特にジコウ党アベノ元総理に関係する議員、会社社長、大学経営者なども関係した大規模な法律違反が長年にわたって行われていたと分かりました』

頭を抱えるハギュウダン元議員。オオイズミ議員は座り込んでいる。サンカイ四世は二人の様子をみて呆然としている。

『そして、議員でありながら長期にわたり納税の義務を怠り続けるという憲法違反を続け、しかも与党という立場でありながら長年そのような状態を容認いや、すすんで違反を推奨し続けたともいえるジコウ党、そしてそれをまねた野党議員、それをほう助した財界人、マスコミらの罪は大変重く、また彼らにより今のニホン国衰退ともいえる現状となったと判断し、通常の5年前よりも以前の申告についても対象、特に世襲議員はその罪が重いと判断しました』

固まるハギュウダン元議員とオオイズミ議員。間に挟まったサンカイ四世も彫刻のように動けずにいる。

『長年の悪質な行為により、ジコウ党を含めニホン国のいわゆる世襲議員とその親族は六親等と三等の姻族にいたるまでニホン国の戸籍はく奪、非世襲議員およびほう助した財界人、芸能人、学者らはその家族、ただし15歳以下の家族は親族以外の養子に出す、児童相談所に預けて新規に戸籍を作成することを許可することしました』

「なにいううのよおおお、この馬鹿リベラルうう、私がニホンジンじゃないなんてえええ」

と叫びだしたのは長年の差別発言他問題続きの言動のミズタ・ミャクミャク議員。何やら暴れているのは、サンカイ四世にもわかったが、何しろ人が多すぎるし、第一こんなとこで騒ぎを起こしてどうするんだろう、今まで裁判でも負け続け、身内やら似非右翼ネトキョクウやらのヨイショなしには何もできないくせにと静観していると

バッと天井にミズタ議員の顔が大写しになった。

プロジェクションマッピングだろうか、しかし髪をふりみだし、目を吊り上げ、ネトキョクウの姫というより鬼婆の形相、こんな顔、こんな状況で見せられたら、余計気持ちが沈むんだけどなどと思いながら眺めているといつのまにか黒服に囲まれて抑えられ首筋に注射を打たれていた。

『中には、このように精神疾患の症状を呈している方もいるようですので、戸籍はく奪とはいえ、病院に収容し適切な治療は受けさせます。むろん、治療後に本人、家族に費用はきっちり負担していただきます。それと戸籍はく奪といっても、すぐさまニホン国から追放というわけではありません。その条件は…』

と、それを聞いて完全にサンカイ四世らは気絶した。


後編に続く


いっそ、報酬はすべてカードの電子マネーで紐付きにして1円の使用も明らかにするようにすれば、記帳も領収書の保管もいりませんけどねえ、特に議員さんたちは使途明らかにしないといけないんですけどねえ。

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