鎖の絆
「僕は君以外はいらない。君の望むようにするといい。
僕はノアール、貴方の名前を呼びたいんだ教えてもらってもいいかな」
「私はヘーレー・リタ・エニグマ。長いからリタでいいわ。
貴方の全てをもらう貴方は私だけのものよ。
代わりに私の全てをノアール・・貴方にあげる」
『 □△▽☆●◆■▲▼★◎◯ 』
彼女が聞き取れない言葉を呟いた時、ノアールを縛っていたロープと従属の首輪が消え、彼女とノアール二人を引き寄せて繋ぐように鎖が巻きついていく。しばらくすると巻き付いた鎖は2人を覆うとだんだん消えていき、手に指輪が残った。彼女は魔法を使ったのだろう。
「今日は素晴らしい日ね!ノアール」
「これは・・?
僕が誰かに贈り物をもらう日が来るとは思わなかったな・・」
彼女は嬉しそうにノアールの周りをくるくる様々な動物に姿を変えながら回っていた。
ノアールはそんな彼女を不器用に笑いながら見つめ、いろいろと考えていた。
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彼女が僕をどうしたいのかはわからないが、喜んでもらえているようでとてもうれしい。
人間はみな醜い・・リタのように綺麗な存在は見たことがない。
僕も彼女のように綺麗な存在に産まれたかった。
どうか僕のせいで彼女が汚れる事がありませんように・・
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「早く私たちだけの素敵な場所を作らないとね
何かやり残したことはある?戻ってくるのは面倒だから全部済ませてから行きましょ
今は私が動けなくしているのだけれど、ノアールを傷つけた奴も見ているだけだった奴もこれから傷つけようとしている奴もみ~んな殺していく?」
彼女はノアールに抱きつき今にも倒れてしまいそうなノアールの体の状態を確認し、そっと治療しているようだった。彼女がなでたところからほんのり光が出ている。
「僕が大切なのはリタとリタに貰った指輪だけ・・・
それ以外は全部・・どう・・でもいい・・それより・・ごめん・・限界みたいだ・・」
強引に着替えさせられたり、引きずり回されたり、椅子に縛られたりと長年塔に閉じ込められていておりロクなものを食べていない彼にとって負荷が多すぎて限界だったようだ。そのまま気絶するように寝てしまった。
「おやすみ。私のノアール」
リタは大きくてとても寝心地の良さそうなクッションを魔法で出してノアールを寝かせた。
クッションの端に座り、とても嬉しそうにノアールの頭を撫でた。
「ノアールは興味がないようだけど、ちょっと遊んでいこうかしら」
クッションごと浮かせて王城の上空に移動すると、王族や貴族、平民達がどこに居るかを確認した。
それぞれの様子がシャボン玉のようなものに写っている。
王族や貴族はみな奇妙な道具を使って結界を張ったり見えにくくしているようだ。
「そうね~平民たちはとても怒っているようだし、彼らに任せようかしら。でもあの道具があったら負けてしまいそうね・・昔作った私のいらないおもちゃをあげてみようかしら」
リタはまるで着せ替えおもちゃのように数人の平民のもとに突然強そうな剣、装備、杖などを与えた。子供のように楽しくはしゃいでいる。
「やっちゃえ~」