第六話 トレーニングの約束
「ん...」
アラームの音に起こされ、小さく声をあげる。
いつもの目覚めだが今日は土曜日だ。
教会は週休2日制で、表向きは民間警備会社として立ち入り禁止区域の警備をしている。
とはいっても吸血鬼は国家機密なので、国から支援金を貰ってはいるのだが。
「あ~...」
正直言うと起きたくない。平日と同じ時間に起きたので、眠い。
朝の弱い人間にはこれ以上ないほどの苦痛だ。
しかし、今日は予定がある。
奏とトレーニングの約束をしたのだ。
起きなければ。
「ふぁ...」
身体を起こし、あくびをひとつ。一日が始まった。
洗面所へ向かい顔を洗い、朝食の準備をする。
簡易的なものでいいだろう。
「ごちそうさまでした」
朝食を食べ終わり、服を着替え、色々準備をし...気づけばドアの前に立っていた。
「...準備はえーな。俺...」
「...ん?」
久しぶりに胸が踊っている自分に突っ込みをいれながら、ドアを開けた。
背の高い後ろ姿が見えた。
「一晃か」
「おうおう珍しいな。お前もトレーニングか?」
「あぁ。奏と約束をしたんでな」
「ふーん」
一晃はなぜか気持ち悪い笑みを顔に浮かべながらこちらを見た。
「な、なんだよ」
「いやぁ、なんでもないぜ親友。お前もがんばってんだな」
「また訳のわからないことを」
そんなこんなでシミュレーションに到着し、中に入った。
シミュレーションルームは各課にいくつかあり、主に戦闘のトレーニングで使われる。
シミュレーションとあるように、実戦ではないのだが
体を魔術で換装することにより、それに近い感覚でトレーニングができる。
換装後の肉体が死亡したり、大きな怪我を負ったりしても、
実際の肉体には一切影響がないという優れものだ。
シミュレーションルームにに入ると見覚えのある人影が見えた。
「おはよ、奏」
「あっ、おはようございます。トーマさん」
「ごめん、お待たせ」
「私も今来たところです」
テンプレみたいなやり取りを終え、俺たちはシミュレーションの準備を始めた。
「内容はどうします?」
「調査のシミュレーションでいこう。」
「はい」
その他もさまざまな設定があるようだ。
「ふむ...ステージも種類があるんだな。」
「あっ、この廃ビルとかどうです?今後のことも考えて」
「確かに。調査はそういうとこが多いもんな」
「他の設定は...初期設定で大丈夫だろ」
ステージ選択やその他の設定も終えると合図のアナウンスが耳に届いた。
『設定完了。換装を開始できます。』
「よし、準備は良いな、奏」
「はいっ!バッチリです」
「それじゃ、行こう!」
そう言って力強くシミュレーション開始のボタンをタッチすると、
俺たちの体が光に包まれ...
『換装開始...完了しました。』
初めてのシミュレーションが始まった。
(こいつらカップルみたいだな...)
一晃は訝しんだ。
活動報告上げました。近況について+αです。