第四話 覇王見参
前話の最初に抜け落ちていた部分があったので訂正しました。
すみません。
...同時に、少年の首を一本の剣が護った。
「若い芽を摘むでない。」
少年を護ったのは、教会長、巌流慶喜であった。
「うぅ...。」
トーマは体を起こすと、奏を連れ逃げ出す。
「うん。良い判断だ。」
岩使いの吸血鬼は距離をとった。なぜなら...
「オイオイオイ。」
「何でアンタが居んだよ。」
「''覇王"巌流...!!」
「覇王か。懐かしい名前で呼ぶなぁ。」
見かけはただの老人である。
同時に強者にはこう写る。
絶対的な、猛々しき覇者であると。
「土属性魔術かね。」
「できれば...逃がさしてほしいんだけど。」
「目の前を獲物を逃す狩人がどこにいる。」
慶喜の目が変わる。獲物を捕えんとする狩人の目だ。
「ですよね~。」
吸血鬼が防御の体制をとる。
「小手調べと行こう。」
慶喜の剣が眩い光を放つ。
「光刃!」
まとった光を斬撃として放つが、この光刃は
トーマのそれとは全く異なっていた。
「ハハ...。鉄筋コンクリートだぞ...。」
寸前で回避した吸血鬼には当たらなかったが、
鉄筋コンクリート製のビルと腕を一本切断してしまった。
「上出来だな。」
「恐ろしい。いや、末恐ろしいね。余計戦いたくないよ。」
「何を恐れる必要がある。血戦術の基礎も基礎だぞ。」
魔術と血戦術は異なったものだ。
魔術は方式を覚え理解するもの。
血戦術は忠誠を捧げ、供物を出すもの。
魔術は方式を描く絵の具として、血戦術は天使に捧げる供物として。
どちらも魔力が必要である。
魔術は方式を扱う以上、型に当てはめることしかできない。
それに比べ血戦術は基礎以外は信仰する天使によって、固有能力が異なる。
そしてそれらの全ては2つの基礎能力を習得する必要がある。
『聖釘』形状を自在に変化させることのできる飛び道具。
術式発動の範囲設定などもできる。そして、
「『光刃』...本来は一瞬の斬撃のはずだろ。」
「簡単な話だ。纏わせているのだよ。特殊な剣にな。」
「名刀『閃響』だったよな。」
「中の金の芯を使っているわけねぇ...面白い。」
『閃響』の内部には金の棒が入っている。
金は魔力を集めやすい。その集めた魔力をひたすらに光刃にしていく。
それにより閃響は、他を凌駕する硬度と鋭さを誇る。
「さて、左腕斬られたし帰るとするかね。」
「逃がすと思うか。」
「逃がす逃がさないの次元じゃねぇっての。」
彼の背後に、暗い影のポータルが出現する。
「それじゃバイバーイ。」
「待て!!」
慶喜は剣を振ったが、もう遅かった。
獲物の体は影にのみ込まれている。
「遅かったか。」
「トーマくん達が無事だと良いが...。」