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【100話完結!】国民的アイドルを目指していた私にとって社交界でトップを取るなんてチョロすぎる件  作者: にわ冬莉
新人編

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第52話 アイドルだった私、次の舞台の依頼を受ける

「何かいい案はありませんかっ?」

 目の前で私に祈りを捧げているのはブティック『リベルターナ』のオーナー、タリア。急遽お呼びがかかり、やってきたわけなんだけど……、


「そう言われてもなぁ」

 彼女の呼び出しの理由は、私がデザインしている、ノア、というレーベルのドレスの件。おかげさまでマーメイドテイルの公演を見た貴族のご令嬢を中心に売れ行きは順調だそうなんだけど。


「そこをなんとか!」

 マーメイドテイルを知らない人にも広めたいのだそう。


 そんなの、口コミで良くない?


「一気にワーッと宣伝できる方法、ないかしらっ? 店のお得意様集めてコンサートとか。ね?」

 これは……、


「……もしかしてタリア、お客から何か言われた?」

 私が半眼でタリアを見ると、肩を震わせ、

「え、ええ~?」

 と明後日の方を見て誤魔化す。

 なぁんだ。もぅ。


「つまり、私たちの公演を見たいっていうお客が複数いて、何とかならないか、って迫られてるってことぉ?」

「あらやだ、リーシャ様ったら話が早い!」

 けらけら笑って手を叩く。


 う~ん。


「今やマーメイドテイルはマクラーン公爵のものだからなぁ。私の一存ではなんとも……」

「だ・か・らぁ。何とか頼んでもらえないかなぁ、って」

 ああ、可愛く私を見上げるの、ずるい。

 最初からそのつもりだったんじゃないっ。


「けど、そんなにお客取っちゃって困らないわけ? お店、大丈夫なの?」

 そもそもそんなに大きな規模ではない店。たんまり注文が来ちゃったら、縫製とか納期とか、大丈夫なんだろうか?


「それなんですけどぉ、実はもう少し規模を大きくしたいなぁ、って思っててぇ。王都からもうちの店にドレスを買いに来るような」


 野心家だなぁ……。


 リベルターナは、ここら辺一体の貴族がドレスを仕立てに来る人気店だ。とはいえ、ド田舎の小さな町のブティックであることに変わりはない。そもそも人口が少ないのだから、店の規模を大きくするためには、都市部に店を構えなければならないわけで……。


「いっそ王都に支店でも出せば?」

 などと、軽い気持ちで発言したわけだけど。


「……リーシャ様!」

 タリアにガッと手を握られる。

「ええっ?」

「それっ! それです!」

「なっ、なにっ?」

「王都に、店!」

 目をキラキラさせてそう言ってくるタリアに、私は今更ながら『しまった』と思う。


「ねぇ、マクラーン公爵様って、この業界にご興味あるかしらっ? リーシャ様、その辺もうまいこと探ってもらえません?」

「出資を頼むってこと?」

「だぁって『ノア』はリーシャ様のブランドですよ? ということは、マーメイドテイルとも深く関係しているわけで。そもそもマーメイドテイルの衣装はうちで作っているわけですし?」


 うわぁ……、

 なんて腹黒いの、タリア!


「……まぁ、ダメ元で話してみるわよ。で、もし公演することになったら、どこでやるわけ? エイデル家?」

「もし可能なら、タルマン公爵家!」

「タルマン公爵?」

 初めて聞く名だった。まぁ、私が知らないだけかもしれないけど。

「マクラーン公爵はご存じだと思う」

「そっか、同じ公爵だもんね」


 爵位のある人たちって、横の繋がりどうなってるんだろう? 派閥とかあったりしないよね?


「約束は出来ないけど、話はしてみるわ」

 そう告げると、タリアは飛び上がりそうな勢いで喜んだ。

「ああ、よかった~! せっつかれて困ってたのよ! お得意さんだし」


 まったく。


 マクラーン公爵がなんて言うかわからないけど、商売に結び付く話なら悪い顔はされない……わよね、きっと。


「あ、そう言えば話は変わるけど、シャルナ……じゃない、お義母様に任せきりになってる下着の方って、どうなの?」

 もう、売り出しているはずだ。

「あ、それね。……うん」

 眉を寄せ、タリア。

 え? もしかして芳しくないのっ?

「私、幸せ過ぎてどうにかなりそうだった」

「……は?」

 タリアの告白に、脳がついて行けない。


「あの、シャルナ様と一緒にお仕事ができるだなんて! あの、シャルナ様のデザイン画が見られるなんて! あの、シャルナ様の、」

「あ~、はいはい。それは楽しそうで何よりでしたっ」

 途中で話をぶった切る。

「噂ってすごいわよ~。夫人たちの間にあっという拡散されて! 盛りブラは年配の方に人気が高いわ。とにかく形が綺麗になるし、コルセットほど苦しさもないし。何よりデザインがとても美しいんですもの!」

 目をキラキラさせるタリアを見て、安心する。シャルナも大活躍ってことで、何よりだと思う。


 どうも、私の助言通りに、お仲間数人を募って事に当たっていたらしく、最近は外に出ることも増えていた。好きなことを仲間と楽しくやっているシャルナは日に日に輝きを増し、それを見たマドラもまた、嬉しそうな顔をするようになった。二人で長いこと話し込む日もあるようで、お互い、いい刺激になったのだろう。


「これから、季節ものの下着なんかを作ったらどうか、って話まで持ち上がっていてね。どんどん話が広がっているのよ!」

 なるほど、季節もの!

「それ、いいわね!」

 女性は足腰が冷えると病気になる、って聞いたことあるし。


「リーシャ様のおかげで、私もシャルナ様も本当に楽しく仕事をすることが出来ているわ。どんなに感謝してもしきれない!」

「やだなぁ、大袈裟な」

「あら、大袈裟だなんて! 本当のことだわっ」

「そう? そんなに感謝してくれながら、次のお願いしてくるなんて、タリアって策士なのねぇ~?」

 私は、わざと厭味ったらしくそう言ってみる。と、


「だぁって、リーシャ様なら何とかしてくれるでしょう?」

 敵もさる者。悪びれもなく、笑顔でそう言ってのける。


「マーメイドテイルの公演、実現させてね! お店のお得意様たちみ~んな招待する予定だから!」

「はいはい」


 なんとかマクラーン公爵にお願いして、この話を通すしかないなぁ。


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