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【100話完結!】国民的アイドルを目指していた私にとって社交界でトップを取るなんてチョロすぎる件  作者: にわ冬莉
新人編

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第49話 アイドルだった私、次の目論見を話す

 ニーナは家族と、オーリンはカンナ御一行と共に帰っていった。迎えが来たルルとイリスも、ご家族と合流していた。私は少しだけ、挨拶をしたけれど、ヴェスタ子爵もザック子爵もいい人そうだった。


 いいなぁ、家族って……。


 ふいに、母の面影が頭を過る。


 でもさ、仕方ないじゃない? 私がどう思おうが、元の世界に戻る方法なんてわからないし、そもそも……乃亜は生きていない可能性の方が高いもの。


「では、リーシャ」

 名を呼ばれ、顔を上げる。

「あ、はいっ。マクラーン公爵、今日はありがとうございました!」

 メンバー全員で公爵を見送る。ケインは何故か一緒に帰らず。

「なんで一緒に帰らないんだよ、ケイン」

 アルフレッドに聞かれ、

「僕はこのあと、個人レッスンをするので」

 と胸を張る。

「えっ? これから?」

 さすがの私も、ステージ終えた後でまた練習ってキツい、なんて思ったら、ケインがパッと手を挙げる。


「問題ありません。誰をも付き合わせたりはしませんので」

 などと申しており。


「ねぇ、ケイン。(はや)る気持ちはわかるけど、焦って練習重ねても急に上手くはならないわ。今日はおうちに帰って、ご家族にきちんと評価をしてもらいなさい」

「……評価?」

「そうよ。お父様やお母様だって観客でしょ? あなたのどこが素晴らしかったか、何が足りないかをきちんと聞くの。それってとても大切なことよ?」

「それは……、」

 俯くケインに、ランスも声を掛ける。

「だな。マクラーン公爵は俺たちの後ろ盾でもあるわけだし、今日の公演の感想を詳しく聞いて、公爵の本音を俺たちに報告してもらえると助かるよなぁ」

 チラッとケインを見て、そう言った。


 うまいっ。


 ……でも、それも一理あるわね。マクラーン公爵の率直な感想とか、この先をどう考えてるかとか、本音を聞き出すのってケインなら出来そうだもん。


「なるほど……本音。それは確かに、僕にしかできない事ですね」

 ケインがその気になる。

「わかりました。では僕は家に帰って自分自身の評価、それに父の本音を探ってまいります! 皆様、お先に失礼します」

 ペコリ、と頭を下げる。

「あ、うん。お疲れ様!」

「では、アイリーン嬢。今日も素敵でした」

 ケインがアイリーンにウインクをし、店を後にした。


「……あいつ、若いくせにやること男前だよなぁ」

 アルフレッドが頭を掻く。

「男前っていうか……キザ?」

「ですわねぇ……」

 そんなこんなで、新人は全員、帰っていったのである。

「で、俺たちも帰る?」

 ランスに聞かれ、


「えっと、ランスはアイリーンをうちまで送って行ってくれないかな?」

「え? なんで?」

「えっ? お姉様?」

「私、ちょっとアルフレッドに話があって」

 チラ、とアルフレッドを見上げる。『わかってるでしょ?』と目で訴えると、気付いてくれたのか、

「あ、そうそう。ちょっと話あるって言われてて」

 と、合わせてくれる。


「そっか。じゃ、先に出るわ」

「うん。アイリーン、あとでね」

 パチン、とウインクを送ると、アイリーンはなんともいえない顔で頷いた。

 並んで出ていく二人を見送る。


「……あんなんで何とかなるのか? あの二人は」

 アルフレッドが溜息交じりに言った。

「さぁ? わかんないけど。最近二人きりになる機会もなかったし、たまには二人きりで話す時間があってもいいかな、って」

「だからケインを先に帰したのかよ?」

「それもあるけど、ケインの場合、単に無理して練習させたくなかっただけよ。怪我でもされたら困るじゃない」

「なるほど。じゃ、俺たちも時間置いて、帰るとするか!」

 などと口にするアルフレッドの服の裾を掴み、私はニヤリと笑う。


「そうはいかないわ。話したいことはね、ちゃんとあるの」

 それはそれ、これはこれ、なのである。


「え、なに?」

 明らかに警戒するような目つきで私を見るアルフレッド。随分と私を理解してくれていると見え。

「そろそろさ、あんたたちも歌ってみたくならない?」

 そう、切り出す。

「……えっ? マジでっ?」

「大真面目よ」


 今のところシートルの二人は踊り専門だ。歌う曲がないから、という理由もある。が、『愛のうた』でアッシュが曲も詩もイケる、という事が分かった今、新曲を出すことはそう難しくはない気がする。……ま、大変なのはアッシュなんだけど。


「歌いたい!」

「でしょう?」

 私は再びニヤリと笑う。ただ……、


「で、二人は歌えるのよね?」

 めちゃくちゃ音痴だったりしたら、この話は流れる。いや、流す!!

「あ~……そういや、人前で歌ったことはないからそれはなんとも」

「じゃ、ちょっと歌ってみてよ」

「え? 今ここでっ?」

「そ。即席選考会(オーディション)ね」

 容赦なく、言い放つ。


 アルフレッドは渋い顔をしていたが、私の顔を見て諦めたのか、ふぅ、と大きく息を吐き出し、どうやら覚悟を決める。


。oOo。.:*:.。oOo。.:*:.。oOo。


気が付けば君は僕の中にいて

知らぬ間に君は僕を支配してた

君のいない日々など考えられず

君の姿見つめては頬を緩める


失くしたくないから

いつもそばにいて欲しくて

触れていたいから

いつも手を伸ばすけど――


。oOo。.:*:.。oOo。.:*:.。oOo。


 ほぇぇぇぇぇぇ!


 私、あまりの衝撃に思わず顔が紅潮するのが自分でも分かった。

 これは……、


「なにしてるんですかっ!」


「え?」

「へ?」


 飛び込んできたのはアッシュ。で、何故か険しい顔でアルフレッドを見ている。


「リーシャ様に何をする気だ!」

 私を抱き寄せ、叫んだ。


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