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【100話完結!】国民的アイドルを目指していた私にとって社交界でトップを取るなんてチョロすぎる件  作者: にわ冬莉
恋愛編

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第33話 アイドルだった私、オーディション続行

「だからって……こうなる?」


 翌日である。

 選考会の時間である。


 私は半笑いで呟くしかなかった。


 集合場所に集まったのは……五名。しかもその内の四名は女性。つまり、シートルの方は、一名しかいないということで……それは当然ながら、


「ケインだけ……とは」

 ランスも驚いた顔で会場を見つめた。


「うっわ、だいぶ減ったな、こりゃ」

 アルフレッドが広間に入るなり、言った。


「まぁ、想定内ってことで!」

 私がそう言って頭を掻くと、

「どこがだよ」

「どこがですかっ」

「そんなわけないだろう」

 三人が寸分狂わぬタイミングでツッコミをくれた。すごい! 息ピッタリ!

 とまぁ、そんなことはいいとして。昨日の今日で集まってくれた五名を、私はこれ以上の審査をすることなく『研究生』として受け入れることにした。


 一旦ここで衣装チェンジ。ジャージってものがないから、私考案の練習着。これも商品化したいって言ったんだけど、タリアに『需要がありません!』って言い切られたのだわ。まぁ、そっか。


「じゃ、アッシュお願い~!」

 音楽隊に、ダンスの曲を演奏してもらう。まずは女性二人が、シートルの二人と組んで踊る。子爵令嬢である二人は無難にこなしているように見えた。うん、無難……なんだよねぇ。


 そして次の二人。

 こちらは一般の部……というか、貴族ではない二人。ブティック「リベルターナ」に出した張り紙を見て来てくれたらしい。一人は宿屋の娘さんで、もう一人は子爵家のメイドさんって言ってた。


「えっと、お二人はその、ダンスの経験はありますか?」

 よくわかんないけど、庶民でもこの手のダンスってするのかな?

「私は……全然」

 宿屋の娘……ニーナ・バレスが恥ずかしそうに俯く。

「ああ、いいんですよ、出来なくても! 確認したいだけなんです」

 慌てて付け足すと、もう一人……子爵家のメイドだというカンナ・シャオンも、

「私も、目にすることはありますが踊れません」

 と言った。


「そう。では簡単なステップを教えますので、やってみてもらえますか?」

 私は、アイリーンと組んで社交ダンスではなく、マーメイドテイルのダンスをやって見せる。ボックスステップからのスライド、ジャンプ横っ飛びして、クラブ。クラブはカニのように蟹股内股を繰り返し動かしながら動くステップなんだけど、普段こんな動きしないし、難しいだろうな。


 そう、思ってたんだけど、


「こう、かな?」

 ニーナ! 宿屋のニーナが、瞬間、マスターした!


「うっそ」

「すごいですわっ」

 アイリーンですら、マスターするのに半日掛かりだったクラブをっ。

「じゃ、これは?」

 私、ポップコーンっていうステップを踏む。これはまぁ、スキップの進化系みたいに、キックする感じのステップ。この世界にはスキップって動きがないから、リズムに乗ってジャンプしながら片足で立つ、っていうのがよく理解出来ないみたいなんだけど。


「え、難しいですね。よっ、とっ」

 私の動きを見ながら何度か繰り返すうち、形になってくる。数十回繰り返し、これもマスターしてしまう。この子は……勘がいいっ。というか、天才かも~!


 そんなニーナを見て、オーリンも負けじと真似をする。何度も、何度も。それでもステップは踏めない。そのうちだんだん涙目になり、その涙をぐっと拭った。


「オーリン、大丈夫よ。普通は出来なくて当たり前なんだから」

 私が声を掛けると、アイリーンも気付いたのか、続ける。

「そうですわ。私だって何日も練習して、やっとできるようになったんですもの。ニーナが特別なだけですわ」

「でも……、」

 オーリンは悔しそうに眉をひそめる。

「でも私は、なんとしてもマーメイドテイルに入らなくてはいけませんのでっ!」

 転びそうなほど足をもつれさせながら、動きを繰り返す。


「じゃ、四人は一度休憩にしましょう。今度はケインの番、ね?」

 オーリンをなんとか宥め、話題を変える。名を呼ばれ、ケインはスッと背筋を伸ばす。


「まずはアイリーンと組んでダンスを」

 アッシュに合図を送り、社交ダンスを見せてもらう。

 まだ十四歳とはいえ、公爵家の子息だけある。優雅で美しい動き。アイリーンとの息もピッタリだ。それに……、


「かっわいぃ」

 つい、呟いてしまう。だってケインてば、ものすごく楽しそうに、幸せそうに踊っているの! アイリーンを見つめるその顔とか、本当に優しくて……。


「なんだか似合いのカップルだなぁ」

 隣で見ていたランスが呟く。

「年が同じだからバランスがいいだけよ」

 私、ついそんな言い方をしてしまう。

「ケイン、いい子じゃないか。公爵家の次男だぞ? アイリーンにピッタリの、」

「それを決めるのはアイリーンだから」

 ランスの言葉を遮り、私は強くそう口にした。実際、決めるのがアイリーンではないとしても、ランスだけはそんなこと言っちゃ駄目。絶対!


 私が口を出すことでもないってわかってるけどさ、でも、アイリーンには幸せになってほしいな……。


「はい、二人はそこまで!」

 フロアの二人を呼び戻す。


「みんな、今日はお疲れさまでした。これから少しずつ練習を重ねて行って、同じ舞台に立てるよう頑張りましょうね!」

「はい!」

「よろしくお願い致します」

 ニーナとオーリンがそう、返す。が、何故か貴族二人組は無言。あれ?


「……リーシャ様」

 その二人がおずおずと前に出て、互いに目配せをしながらぽつりと話し始めた。

「あの……実は私たち…、」

「ん? なに?」

「えっと、ダンスはあまり得意ではなくて」

 目を伏せ、なにかを言いたそうにもじもじしている。


 ……もしかして。


 私、閃いてしまった!


「もしかして、歌の方っ?」

 私の言葉に、二人がパーッと顔を高揚させる。


「はい!」

「そうなのです!」


 そっか、歌いたいんだ!

 ずっと『歌とダンス』って思っていたんだけど、そうか、別々でもいいんだ。


 私、ワクワクしてきちゃった!



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