0080.森を散策
平日はいつものようにレベルアップに励み、週末にはダンジョン入り口を出た先の森に来ていた。
「ちょっと遠いが村みたいなところがこの先に探知出来たので、そこまで行ってみないか?」
女性陣は怪訝そうに森を見ながら。
「草が凄く長いねんな。入る隙間が見えへん」
「こういった木の多い所は草生えて無いんじゃないのか?」
何の偏見だ? 聖。
「実際生えてんのやから、しゃあないやろう?」
「ねえ、お兄ちゃん何とかならない?」
こいつら何でこんなに不満そうなんだ?
こんな人気の無い所こんなもんだろ?
今着ている防具は全身銃弾すら弾く安全性があるんだが?
たかが草が生えているせいで今日の予定が無くなりそうだ。
まあ確かにこの草を分け入るのは嫌だと言う気持ちは分からんでもないけど。
「仕方ない。何とかしてみよう」
俺は焼失魔法を放ち森の入り口付近に生えている草を焼失していくと森の中にまでは草が生えていないようだった。
森の中は薄暗いが所々に日が射し苔が生す静謐な雰囲気を持つ所だった。
森の中に探知出来ていた動物たちはすごい勢いで逃げていくのが分かる。
「いいわあ、こういった所を散策してみたかったんや」
「ラノベに出てくる冒険の森はこんな感じだと思っていました」
美香と芽衣が満足そうに言う。
なるほど、こんな感じの森を散策したかったんだな。
周りには日光を遮る位には大木が生えているが、その中でも少し広い開いた木々の隙間から見える良く晴れてどこまでも高く遠くまで見渡せる澄んだ空。
雲もあまりなくそこには公害による汚染など全く感じさせない。
異世界だというのをすっかり忘れそうになるくらいゆったりしている。
そう言えばこの世界で雨に遇った事がないな?
森の中だと言うのに大気は少し乾いた感じがする。
その割には土は湿っていて苔が大量に生えている。
代わりと行っては何だが魔力が隅々にまで満ちていて、森の木々まで魔力を内に秘め活用しているのが解った。
きっと大気中から直接水分を魔力で集め大きく育っているのだろう。
雨に遇わないのもなんだか納得がいった。
一見平和そうに見えるこの森も実は魔物や野獣が闊歩する厳しい森だ。
気を抜くことは出来ない。
緩やかな降りに向かって歩いていると前方から魔物が数体迫ってくる。
迷宮で言えば第二層の狼より少し魔力が多い感じだ。
「来るのは魔物かな? 少し違う気もするが」
「これは魔獣が迫ってきているビャ。皆注意するビャ」
そうか、魔獣か。分からん。
「ガウ、魔獣って?」
「ダンジョンの魔物は魔力が形を成したものビャ。魔獣は獣が魔物寄りに変化した奴らビャ。体があってダンジョンの魔物と同じ魔力を纏った奴らビャ。魔力が同じなら体が在る分、魔獣の方が何倍も手ごわいビャ。体もデカく屈強そうなのでその分も強いビャ。ただ、得られる魔力は少ないのでタカ殿の言うレベルアップには向かないビャ」
えっそれで第二層の狼より多いって、かなり強いって事だな。
「それって、不味いんじゃ?」
「ポキとケイ、アンの敵ではないビャ。もちろんタカ殿の敵でもないビャ。動けなくするので、皆で倒してみるといいビャ」
さすがこの中で最も長く生きている元小悪魔。
頼りになるなあ。
「ガウってすてき」
「頼りになるなあ」
魔獣が迫るというのに、妹も聖も余裕があるなあ。
グワーオオン!
「来たぞ!」
それは角が生え、牙も長くおどろおどろしい感じの熊の魔獣が三頭だ。
「数もちょうどいいビャ。タカ殿の手を煩わす事もないビャ」
「そうね。アン、ガウ行くわよ」
「はいニャ」
「はいビャ」
ケイとアン、ガウの三人は猛然と熊の魔獣に襲い掛かっていった。
三人の力は圧倒的で、あっという間に動けなくされた熊の魔獣が並んだ。
「強さは第四層の狼並みでしたね。今の聖さんなら勝てるでしょう」
「確かにそんな感じニャ」
生きた体があると言うのは大したアドバンテージが有るんだな。
俺が今まで勝ててきたのも生きている体があるおかげか。
「劣悪魔も生きていたのであれ程までに強かったんだな」
「あれは半死半生だったビャ。半死半生も両方の利点があるから中々強いビャ」
「それでは皆様、今のうちに」
「えっ、なんやダンジョンの魔物より生々しいなあ」
「お兄さん、少し気持ち悪いです」
まあ、俺も正直気持ち悪い。
「では、私が」
ミルスが一歩進み出て「炎よ」と火魔法を魔獣に浴びせかける。
ジュワーと肉の焼ける音と臭い。
これは! 確かに魔物とは違う。
「皆、無理しなくてもいいぞ!」
「いや、やるよ」
聖が前に出て
「サンダー」
魔法で一頭の熊を焼いた。
「うちも止める気はないで」
「お兄ちゃん、私も止めない!」
「私もやるわ。この位でめげていたら冒険者になんかなれないし」
皆思い思いの魔法で熊を攻撃し始める。
「あはは、やってみたら大した事あれへんなあ」
美香足が震えているぞ。
しかし、俺も負けてられない。
次は俺が倒す。
「ここの魔獣は強いわ。こんなのはボード王国には居るって聞かない。結構遠い国まで来てそうね」
ミルスの言葉に思う。
へーそんなに離れた場所に出口があるのか。
ダンジョンって完全に別空間に存在してそうだな。
「むっ、あっちに建造物の様な物があるな。いってみるか?」
「遺跡かな? 冒険らしくなってきましたよ。ワクワクします」
芽衣はほんとこういうの好きなんだな。
「じゃあ、寄って行こう」
少し歩くと瓦礫と化した街の跡らしきものが見えて来た。
すっかり木々に覆われていてもまだ大きな建物の跡が沢山残って見えるので、とても大きな街だった事が偲ばれる。
「結構大きそうな町だな」
夜になればゾンビとかが闊歩してそうだ。
「こういう所にはきっとお宝が眠っているわ」
芽衣はそう言うとあちこちを探して回り始めた。
「面白そうやな。うちも探すで」
「僕もお宝には興味があるね」
みんなそれぞれにお宝を探し始める。
「ここは大きさから見て王宮か何かだったのかもしれませんね」
ミルスは落ち着いて考察する。
ふむ、なら何かあっても不思議は無いのか?
「わたくしも探して見ます」
「ああ、頼むよ」
まあ、探知に魔力反応は無いからめったな事は起きないだろう。
「何もないもんやなあ」
少しの間トレジャーハンティングを楽しむが何も見つからない。
「タカ様こちらから地下へ入れます」
「ケイ、ありがとう」
「お兄ちゃん! そこにこそお宝が」
「うう、ワクワクしますね。お兄さん!」
「ケイちゃんさすがやなあ」
「いい装備でもあるかもしれない」
そんなの有るのかな? 聖、かなり古いぞこの遺跡。
見ると、床が崩れその下に空間がある。
ケイが光を魔法で灯し先に入っていき
「こちらです」
と招いていて、入ってみるとそこは牢屋の様なところだった。
探知してみると、地下5階ってどんだけ収監していたんだ。
城の牢だから一般犯罪者が入っていたわけでも無かろうにな。
皆がっくりとしている。
だが、地下5階の奥壁の向こうに空間があるのが探知出来たので、そこまで行って調べてみる事にした。
「ここの壁薄そうだよな」
殴れば壊せそうな気がする。
ガンッと一発殴ると石壁が砕けその先には螺旋階段がまだ地下に向かって伸びていたのだった。
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