0078.初心 : 封印されし記憶 4
「ううぅ~! 寒い! 冷たい! 痛い!」
第四層の寒さを舐めていた。
すでに顔は凍り付きまともに前も見えない。
探知で調べた状況をもとに歩いている。
アンは顔の周りに物理障壁を張っているおかげで平気そうだし、ガウはもともと平気だ。
これは、やっぱりなにか対策を考えないと俺だけヤバイ。
探知に今までにない大群が引っかかったので、俺は遠雷を撃ち始める。
それを見て、アン、とガウも遠雷と悪魔砲を乱射し始めた。
狼、熊、スケルトンの混成集団である。
だがほとんどの個体は近寄る事も出来ずに消滅していく。
いくばくかの射線を抜けてきた奴らはアンの旋雷の餌食となり消えていく、が、後方より雪の中より至近距離に突然現れたゾンビの集団が奇襲を掛けようと近づいてきていることに気づき、俺は後ろに向かって極大の聖光斬を撃ちだしてやった。
幾らか聖光斬を避けてくるゾンビを聖光にて倒してやる。
むっ聖光ってなんだか暖かいぞ。
俺は顔に聖光を集中して発生させてみた。
やった氷が解ける、ほんの少しだが痛みが緩んできた。
これで苦行ともおさらばだ。
「にいちゃん、眩しくて顔が見られないニャ」
へっ? そうか、なんてこったい! そんな弱点が。
聖光をやめるとまた顔が冷たく痛くなってくる。
そうこうしているとまた大量なゾンビ軍団が押し寄せてきた。
少し戦闘を続けると体が熱くなってきていて煙が出始める。
これはレベルアップだな。
もちろん顔も熱くなってきているので寒さは軽減されている。
アンも同じような状態で、しかもグッと眠くなってきた。
ちょっとやり過ぎたようだ。
久しぶりに眠気が辛い。
「よし撤退だ!」
しかし、魔物たちの動きが変わってきているな。
今まで共闘して混成で来たり、隠れていて不意打ちを仕掛けるなんて行動は無かったのに。
考えている内にアンの転移で第四層入り口まで帰り、そこからは自分で転移して皆の居る第二層まで帰ったのであった。
まてよ? 俺、何か重大な事を忘れている気がする。
……そう言えば買った装備にはヘルメットの様な物が一緒に有ったはずだ、普段使いには大げさなので押し入れに入れっぱなしに……。
もしかしてあれなら吹雪も防げたのでは?
ああっ俺のバカ!
皆の装備にもごつい帽子が有ったはず。
アンにも渡しておこう。
あれで防げるのかテストだよな。
やっぱり俺はバカ野郎だった。
いかん眠いくらくらする。
ダンジョンでの睡眠は不味い!
いっ家に帰らねば……。
俺は、また夢を見ている。
フレッドの記憶の封印が一部解けた記憶では、彼らは洞窟内にいるようだ。
スライムと戦っている。
ここはダンジョンだな。
このダンジョンは第一層が迷宮タイプのようだ。
「こいつ、うざいぞ。剣なども腐食しやがる!」
「魔法でやりなよ、それが正しい選択だよ」
「でも、俺は勇者だ! 剣で戦うのがメインのはずだ!」
「この馬鹿者。よく聞けイムス! 物事には柔軟に対応しなければ足をすくわれるぞ」
「はい、テツさん!」
「イムスは石頭だからねえ。くすくす」
「なにか言ったかメリッサ?」
「いいえ、何にも。きゃあ!?」
前を行くメリッサの姿が消えた!
メリッサが一人先に進んだため落とし穴に落ちたようだ。
えっ! 剣山の上に落ちて大丈夫なのか?
「いったーい! 何嘘? 凄く深いわ。助けてー」
おや? どうやら中は剣山じゃないな。
メリッサはひっくり返っていてかなり無様な姿をさらしている。
「メリッサ、気を抜いて行動するからそうなるんだ。自分で上がって来い」
「は~い、テツさん!」
「第一層には罠がたくさんある。致死性の罠ではないが、この先進めばハマれば必ず死ぬような罠も出てくる。ここで罠をどうやって避けるかを知るのも訓練だ」
「はいっ! 分かりました」
「よし、上がって来たな。今までは俺が先に進んでいたが、この先はイムスお前が先頭を歩け」
「はい、テツさん!」
イムスは先に歩こうとして
「あの、探知で罠、分からないんですが?」
「どうすればいいか自分で考えて見ろ」
「はい、テツさん!」
イムスはちらっとフレッドを見るが。
「すまん俺にも分からない」
「いいさ、これも訓練だ」
少し考えていたが、剣を抜き先で前を叩きながら進み始めた。
「そうだ、能力だけに頼るな。能力が通じない事などよく有ることだ。考えるのを放棄するな」
「はい!」
出てくる魔物は俺達が使ってるダンジョンと同じだが、そのほかの構成が違うようだ。
第二層などオープンタイプで罠が無かった。
これなら、ゴブリンがやってくる様子もつかめ対策を考える暇もある。
しかも大集団で襲って来る事もない、楽そうだ。
彼らもレベルアップの時はくらくらし始めるので。
テツさんが見極めてすぐ撤退、とフォローもばっちりだ。
必ずと言っていいほど死ぬ位痛い目に遭っていた俺とは全然違うな。
第三層辺りまでの記憶と子供のころの記憶が分かるようになったところで、その先の封印は解けなかった。
フレッドは商人の息子として生まれたんだな。
フレッドは長男だったけど賢者の素質がある事が分かったので勇者協会に預けられた。
商売は弟が継ぎ、賢者を輩出したことで家の格が上がり実家は順風満帆のようだ。
そして、前世の記憶は思い出していない様だ。
俺が封印を解いた中には地球の知識はない。
しかし、フレッド達も最初は弱かったんだな。
うん、目が覚めてきた。
ダンジョン内の様で、ガウとアンが隣で寝ている。
隣と言っても、まあ、ガウはいつもの様に立てっているのだが、アンは俺の腕に抱き付いて寝ているので、そのふくよかな胸の感触が肩の辺りに伝わっている。
淫欲もバンッ! と目覚め急速に元気になっていく!
いかんこれでは蛇の生殺しだ。
「ううん」
すりすり、すりすり
アンが寝ぼけて強く抱き付き体を腕全体に擦り付けてきた。
胸の当たる肩に俺の全神経が集中し始める。
アンの些細な動きも俺を刺激し続けていた。
いかん俺の理性が! 頑張れ理性!
こんな子供に手を出す訳にはいかん。
そこまで鬼畜じゃないはずだ。
俺頑張れ。
「タカ様、おはようございます」
どうやらケイはダンジョン内で寝こけてしまった俺達の傍に来て警戒してくれていたようだ。
ありがたい。
「くすくす、そのままアンを押し倒してみてはどうでしょうか」
「いや何言ってんの! そんな事するわけないよね」
「ふふふ」
どうやら、またケイに揶揄われているようだな。
しかし、ケイにはすべてバレているかもしれない。
ううっ、恥ずかしい。
さて、起きるか。
体を起こして立ち上がる。
うん、体調よし。
「(ちぇっ!)」
あれ、今のどこから聞こえたんだ?
アンじゃないよね?
いかん幻聴が聞こえる。
大丈夫か俺、そんなにもストレスが溜まっているのか。
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