0076.自然を舐めると遭難する : 封印されし記憶 3
俺達は吹雪で極寒の第四層にチャレンジ中だ。
吹雪で前が見えない! 寒い! は探知と装備で解決したし。
顔が冷たすぎる以外。
魔物も確かに第三層よりは倍以上は強いし、大きい狼に大きい熊、そして強いスケルトンやゾンビのアンデッドが群れで現れ、今までの階層でもちろん最も強かった。
しかし、アンデッドは聖光であっという間に倒せる為、熊の大群に少々てこずる程度で戦闘の難易度的にはどうなん? と思っていたが、なんとこの層は雪のせいで歩みが遅いうえにとてつもなく広かった。
その上山あり谷ありクレバス在りで探知が無いとまともに進めない。
帰りも考えると、とてもじゃないが、第五層にはたどり着けそうにもない。
まあ出てくる魔物の数が尋常じゃないのでどんどんレベルが上がっていったが。
途中でアンが旋雷を使えるようになってからは戦闘は全く苦にならなくなる。
「顔が痛いニャ、つらいニャ」
ちょっと長居しすぎたので、冷たいを越えて痛くなってしまいアンがとうとう耐えきれなくなって退却することにした。
見ると顔が凍ってどこが目だかわからなくなっている。
「すまん無理をさせてしまったな」
「大丈夫ニャ」
とても辛かったのであろうに、ぎりぎりまで耐えてくれたようだ。
まあ俺も辛かったんだけど見栄を張って先には言えなかった。
しかし、アンの事を考えれば早く俺が言うべきだったな。
対してガウは全く平気そうだった。
そう言えばガウは高級装備さえ着けていない。
しかも状態異常耐性を種族として持っているそうだ。
「吸血蝙蝠じゃなくて吸血鬼なら耐性があったはずビャ」
なんてこったい。
うらやましいな。
顔の防具を考えた方がいいのかな?
それにビバーク用の装備も。
吹雪の中蝙蝠になりガウと二人でアンを抱えて飛ぶことでなんとか第四層から帰る事が出来たのだった。
途中骨だけの鳥魔物が襲ってきて、強風に飛ばされないように飛ぶのに必死で、反撃も出来ずやられ放題だ。
くそっ!
それでも、いやー普通に歩いてはとてもじゃないが帰れないね。
飛べてよかった。
無謀な雪道挑戦は遭難の元だね。
よく分かったよ。
「あのスケルトンバード許せないビャ」
階層出口から悪魔砲を乱射し見える範囲のスケルトンバードを滅してから機嫌が直った。
「すっきりしたビャ」
アンはすぐ火魔法で顔をあっためていたが、俺は火魔法が使えないので、一緒にあたらせてもらったよ。
「あそこは、風が強すぎて火魔法もかなり近づけないと効かなかったニャ。温かくなるほど近づけると火傷したから無理だったニャ」
なるほどね。
二人とも再生能力が有るので凍傷になってボロボロとはならないが、冷たくて辛いのは変わらない。
防具に包まれている所は魔力が続く限り暖かいようだった。
第二層入り口まで帰り、そろそろ夕食時なので家に帰ることにする。
食後、またもやダンジョンに来てレベル上げだ。
聖に皆の面倒を見てもらったお礼に久しぶりに第三層へ一緒に行く。
ダンジョンに入ってすぐにホブゴブリンの団体に襲撃を受け、あっという間に眠気を伴うレベルアップ状態になり皆の元に帰る羽目になった。
その後は第二層で皆のサポートをして今日は終わりにした。
さてあの吹雪どうしてくれようか。
考えても何も浮かばなかったのでダンジョンにもいかず寝る事にするのだった。
「明日は装備屋にでも行ってみるかな」
フレッドが見慣れない部屋に入っていくのが解る。
「やあ、フレッドも呼ばれたのかい?」
「イムスとメリッサじゃないか」
「私たちは何故呼ばれたのでしょう?」
「さあ、わかんね?」
そう言いながらも彼かは期待感に顔を緩ませている。
三人は同期に勇者協会に入ったメンバーで、今まで各自色々なパーティーに手伝い及び見習いとして参加していた。
ぼちぼち入会テストも終わるはず。
三人とも良い手ごたえを感じていて自信を深めていた。
すると何か偉そうな人がドアを開け部屋に入って来た。
「教官殿!」
三人は啓礼をしてその人を迎えた。
ああ、これは夢か。
無意識に封印が少し解けたフレッドの記憶が見せてくれる夢だな。
「そんなに畏まらなくていい。君達三人は、無事入会試験の一年間を終えました。今日から君たちも見習いとして勇者協会の一員になれたのです」
「やったぜ!」「やったわ」「やっとか」
イムス、メリッサ、フレッドの三人は皆嬉しそうだな。
「ここからが本番です! これからしっかりダンジョンで鍛えて、見習いから初戦力、中堅戦力、三次戦力、次戦力を超えて主力になれるよう頑張ってください」
「おお、主力なんて夢のまた夢の様な世界だぜ!」
イムスはテンション高くなってるな。教官の説明は続く。
「ですので、これからダンジョンに入り鍛えてもらうことになります」
「よーし強くなるぞ」
「ふっふっふ、やっとだわ。やっと魔物を倒せるわ」
フレッドもメリッサも張り切っている。
どうやら、勇者や賢者などの素質があっても、ダンジョンに入って鍛えるまでは一般人とさほど魔力量は変わらないみたいだった。
今までは協会員の色々なパーティについて回りながら手伝う様子などを調べられ、人格などに問題が無いかテストされていたようだ。
そして、一年のテストをクリアした者のみ、ダンジョンに行くことを許されるのだった。
なかなか厳しく選ばれているのだな。
「入って来てくれ」
教官に呼ばれて一人の男が入ってくる。
「よう、お前ら久しぶり!」
「テツさん、お久しぶりです」
「よかったな合格出来て」
「はい、ありがとうございます」
「これからは、彼が君たちをダンジョンで鍛えてくれる。では、後をよろしく」
言い終わると教官は教室を出ていった。
「では、俺について来てくれ」
テツさんは、次戦力に当たる実力者のようだ。
彼らはテツさんに導かれて今まで入った事の無い、多重結界や障壁に守られた協会本部の中心に入っていく。
「そっちの方にお前らの新しい部屋が用意されているから後で確認する事」
「はい」
すこし行ったところから、地下に降りていき、まるで遺跡の様に見える建造物に入っていった。
「ふふふふ、これが、勇者協会の最重要機密への入り口だ。この先は邪心をある程度以上持つ者は絶対入れない」
恐ろしく力のこもった探知と障壁それを超えて中に入ると何やら見た事もない装置があった。
「これはダンジョンへの転移装置だ。これで行く」
「人の魔法でなくこの古代装置でダンジョンに行くのですか?」
「そうだ、これはここを出る時忘れるが入ってくれば思い出す仕組みだ。魔物どもからここを隠すにはこうでもしないとばれる可能性があるのだ。魔物はこういったことに興味を示さないが。もし万が一、魔物がダンジョンで鍛えた場合、人類では全く手に負えないほど強くなる可能性が高い。だから絶対ばれてはいけないのだ」
いや、部外者の俺にばれてますけど。
まあ他のダンジョンを知っているので別に何もしないけど。
むっ今回はここまでか。
あのままほっとくと吸血蝙蝠達はやばかったんだな。
そして彼らはダンジョンに転移していく。
そこまで夢を見てはっと目が覚めたら朝だった。
ゴールデンウイークプレミアム更新!5月5日まで毎日更新
頑張りますのでよろしくお願いいたします。
楽しんでいただければ幸いです。
もし、楽しんで頂けたなら。
下にある「☆☆☆☆☆」から、作品への応援お願いいたします。
面白かったら星5つ、面白くなかったら星1つ、教えていただくと指標になります!
「ブックマーク」「感想」もいただけると本当にうれしいです。
そして、一日一回下にある「小説家になろう勝手にランキング」をクリックだ。
何卒よろしくお願いいたします。