0075.ダンジョンアタック再開
皆強くなって来たので、これから第二層に皆で行くことにした。
「僕も、第三層にチャレンジしたいな」
そうだな聖はそろそろいいのかもしれない。
いや、あそこは状態異常の水たまりと敵の数が多いのがネックな所だからな。
気を付けないと聖はまた敵を一度に倒し過ぎて死にかけそうだが。
第二層は罠さえ避けられれば、問題は無いだろう。
「皆、第二層に行ってみるか?」
「やった! お兄ちゃん、やっと言ってくれた。流石に第一層は飽きて来た所なんだよ!」
「皆もそうか?」
皆にこにこと首肯する。
そうだな、今では狼や猿どころか熊でさえ簡単に倒せるようになっているものな。
俺も第三層の攻略が終わり、いつ第四層に上がろうかと考えていたし。
そしていつの間にか、皆ミルスとも談笑が出来るまでに向こうの言葉を覚えている。
皆頭がいいな。
「言語習得が皆速いな」
「なんかね、強くなっていくと物覚えもよくなっていくんだよね。あの高校って進学校でしょ。僕最初全然授業についていけなかったんだよね。でも最近分かるようになって来たんだよ」
「そうそう、おかげで大学の講義なんかも楽勝や」
「お兄ちゃんは、勉強できるから実感ないかも知れないけど、私も成績上がったのよ」
「お兄さん私もです。おかげで同じ高校へ行けそうです」
妹も芽衣も成績が上がったようだ。
「タカは男やから疎いんやろうけど、肌の艶や髪の毛の質まですごい改善されとんのよ」
「えっと私はよくわからないです」
ミルスはもともと艶っ艶だからな分からないのかもしれない。
アンもあまりわかってなさそうな顔をしているな。
なるほど、だから彼女たちはこんなに真剣に取り組んでいるのか。
「皆さん学生さんなんですね、私たちの世界では小さい頃は少しの間学校に行きますけど、皆さん位の年ごろだと貴族の子供くらいしか勉学はやっていません。大体は働いてますね」
「こっちでは、ほとんどの人がうちらの年でも勉強しとるで」
「俺達の世界には魔法が無いからな。科学を発展させるためには、皆高等教育をした方が効率いいんだよ」
「なるほどな」
異世界人のミルスへの説明なんだが、聖もその辺分かって無かったのか?
「私その科学と言うのがよくわかりませんね」
「進んだ魔法が有るとあまり要りそうにないからな」
魔法は魔力で直接作用するから内燃機関や電動機やプロペラなどは魔法に比べるとどうしても効率が悪い。
もちろん無いより有れば便利なはずだが、必要が無ければ発明されない。
だから異世界ではその方面はまるっきり進歩していない。
電子回路の様な物も魔法陣で代用出来るから発達の方向がまるっきり違うのだ。
石油や石炭ガスなどの燃料も要らず公害等がない世界。
その代わりに魔物が居て不安定で魔法の才能の有る無しがとても重要な社会となっている。
魔力が無いもしくは少ないならば魔石を使った魔道具を買うしかないのだ。
強い魔力と精密な魔力操作がないと魔道具を作る事も出来ない。
魔力の無い者には酷く生き難そうな世界だ。
痛し痒しとはこの事か?
そうだ、魔法と言えば。
「ミルス、魔法の教本みたいなのは無いか? 皆で読みたいのだが」
「私たくさん持っているので今度いろいろ見繕って持ってきます」
「ありがとうな」
「では第二層にいくか」
第二層の入り口まで来ると。
「やった! ここが第二層かぁ。たしか落とし穴があるんだよね?」
灰色で先も見えない壁から恐る恐る首だけ出して第二階層内を覗き込んでいる。
俺は第二層に一歩だけ気を付けて小さく踏み込み(二歩目には落とし穴がある)。
「これを見ろ杏子」
俺が前の床に石を投げるとバカン! と罠の蓋が開いた。
「ひええっ、聞いてはいたけどこんなのあるんだ!」
「おおっ、中は、まるで剣山のようやな。落ちると死ぬな。皆気を付けんといかんでえ」
やはり見せるのが手っ取り早いな。
「聖、頼めるか」
「ふふふ、出番だね。まかしといて。急急如律令、式神よ我の命に従い、仮初の命を宿せ、身代わり式、地、空、探」
いつもの式が罠を探していく。
「これは、便利やなあ」
「聖さん、多少見直しました」
「かわいい」
と、美香、妹、芽衣の順に感想を漏らす。
ゴブリンが出てきたので、皆が各々魔法をゴブリンに放って倒すと。
「お兄ちゃん眠い」
聖以外の3人がくらくらしていたのですぐ引き返した。
式が皆を支えるので撤退も早い。
やるな! 聖。
「後を頼めるか聖、俺達は第四層に行ってきたいんだが」
「いいよ、行ってきなよ(よし、ここで活躍してすこしでも信頼回復だ)」
「わたくしも残りますのでご安心を」
聖は下心があるようだがまあいいか。
無茶はしないだろう。
「いってきます」
「聖さんって強いのね。お兄ちゃんより強いんじゃないの?」
「いや、タカの方が相当強いよ! 使える魔法も威力が全く違うし。あの再生能力あるので一度に強くなれる量が全く違う。同じように鍛えたら死んでしまうよ。だから、タカが他の事をやってるうちに頑張って差を詰めてもあっという間に離されるんだ」
「そっか、付いて行けるのはケイ達3人だけなんだね」
「あまり離されないように頑張るしかあらへんな」
「うん」
お兄ちゃんはきっと、とんでもなく強い敵と戦っていくようになりそうだから、後ろで足を引っ張らないようにはなっていかないとね。
第三層は、オークの大群に初めて会った時や虎の魔物にも初めて会った時には非常に強いなと思ったが、今は俺達の敵ではない。
あの劣悪魔との戦いで俺は飛躍的に強くなっていた。
勇者の魔法である、遠雷を覚え、それを手加減して打てる技を習得したのもよかった。
遠距離からどんどん魔物を滅ぼしていく。
そして、オークの大群をいくつか倒しても軽いレベルアップすらしなくなっている。
このダンジョンを攻略した先にいったい何が待っているのか? ここまでずいぶんきつかったな。
などと感傷的になっている間に第四層に到着したが、ここではそんな感傷など吹き飛んでしまう。
灰色の壁からいつもの様に顔だけ出してみると第四層は吹雪が吹き荒れていた。
少し前すら見えない。
これで罠でも仕掛けられていたら誰にも発見されることも無く、一生そこで凍り付いているんじゃないだろうか?
その時は簡単に死なないこの体が憎くなるだろう。
「顔が冷たいニャ!」
「ポキは平気ビャ」
まあ超高級装備のお蔭で体は寒くないんですが。
顔は切りつけられるように冷たい。
「よし、この層も攻略するぞ!」
「はいにゃ」
「やるビャ」
遠くの方から聞こえる狼の遠吠えが俺達を歓迎していた。
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