0074.勇者たちの冒険 : 封印されし記憶 2
漆黒の槍の面々は洞窟の入り口を見つけ、ゆっくりと侵入していく。
見た目も魔力も普通の洞窟だ。
ゾンビが山ほど出てくる以外は。
ゾンビを斬りつけながらイムスが問う。
「アンデッド系の強ボスでもいるのかな?」
「二人はなんだと思う?」
聖光を唱えた後フレッドは茶化した。
「リッチとかいるかもよ」
メリッサがいたずら気に口角を上げ言う。
「そんなの見つけたら即撤退だ!」
イムスは、もうたくさんだと言わんばかりに嫌な顔で言った。
「俺は、グーラーあたりだと思うね」
フレッドはしたり顔だ。
ゾンビだらけなのでとにかく臭いのが分かる。
「もう出た方がいいんじゃない? 臭いに耐えられないわ」
メリッサが心底ゲーって顔をしている。
「馬鹿言え、まだ入り口だぞ。それで調査したことになるか!」
「そうよねえ。はーっ」
「俺臭い消せる魔法使えるぞ! 浄化」
淡い光が拡がり、辺りが綺麗になっていく。
「フレッド。そういうのはもっと早くしてくれ! 臭くてかなわん」
「あははは。悪い悪い」
「フレッドありがとう! 愛してるわ」
「くっ浮ついてんなよ」
「あら、イムス妬いてんの、可愛い所あるんでちゅね」
「茶化すな! なんで俺が妬かないといけないんだ? ゾンビの一団来るぞと言っているんだ」
「お、おう」
どうもこの悪意の魔力が充満した中ではフレッドの探知よりイムスの直感の方が精度が高いみたいだ。
探知はもしかしたら妨害もされていそうな気もするな。
だが三人はまだそれに気づいていない。
危険だな。
誘い込まれているような感じだ。
この先何が起こるんだ?
俺はフレッドの記憶の封印を少しづつだが解いていく。
先ほどの浄化の魔法は便利そうだな。
俺にも使えるかな? いや無理か!
かなり、洞窟の奥に進んだ頃。
「ゾンビの中にグーラーが混じっているぞ! 聖光を二連撃してくれ」
「了解」
どうやらグーラーは聖光一撃では滅びないらしい。
そう言えばグーラーがボスじゃないかって予想していたっけ。
「グーラーがこんなに出てくるなんて。これは、予想よりかなりやばいわ! マリーさんの予見どおりね。ここはもう撤退しましょうよ」
すでに遅い気もするが。
「そうだな、撤退だねここまで調べれば十分任務も達成だよ」
「なんだと! いかん後ろから人狼の集団が。挟まれた!」
「いけないイムス! 最悪だ。ここのボスは吸血鬼だ!」
「皆、何とか人狼をかわして洞窟の外に逃げるぞ。人狼は俺がやる。ゾンビは任せた」
「はい」
「食らえ! 旋雷」
イムスが人狼に向けて魔法を放った。
それはエネルギー波と電撃がまるで渦のように広がる広範囲攻撃だ。
すごい! こんな魔法もあるのか?
人狼のほとんどが消滅するか動けなくなり、残りのダメージの少ない人狼を切り裂きながら洞窟の出口を目指していく。
強いな、さすがは勇者だな。
「くっあっちから吸血鬼達が来るぞ! フレッド頼む」
「分かった! 聖炎波」
名前のごとく聖属性を纏った炎が波のように吸血鬼達に襲い掛かる。
これは弱い吸血鬼達ではひとたまりもない。
ほとんどの吸血鬼が灰になって飛んでいくが。
数人、火傷程度で牙をむき出し襲ってくる。
聖炎波に耐えたのだ。
「聖光」
中々の威力がこもった聖光が光り、残りの吸血鬼も灰になった。
なるほど、理にかなってるな。聖光は陰に入った奴らには届かない、炎は陰にも回り込んでいたので、聖炎波で数を減らし倒しきれない奴を聖光で滅したわけだ。
俺も聖炎波使えるかな?
いやこれも無理か。
旋雷も無理っぽい。
ああなんでこんな便利そうな魔法使えないのか。
だけど参考になるなあ。
多勢に無勢でどうなるかと思っていたが勇者たちは強い。
「もう少しで出口だ。今は昼間だから外へ出さえすればきっと助かる」
そこまで、危惧する程強い何かなのか?
ここまではさしてピンチでも無かったけど?
吸血鬼も人狼もフレッドの眷属と大した差は無かったようだが。
三人で掛かればフレッドぐらいの強さなら何とかなるんじゃあ。
って俺いつの間にこんなに強気になったんだ。
危ない危ない、フレッドは強かった。
あれと戦うとなると確かに危険だな。
気を付けないとね。
むっこれ以上は封印が固い。
今の実力では解けないかな。
うん、無理っぽいな。ここでフレッドは吸血鬼にされたのかな。
いや、解けたのは記憶のほんの一部だしまだ分からないよな。
「うん、ここは?」
「おっタカが思考の海から帰って来たぞ」
ああ、ダンジョンかここは。
たしか騎士団詰所に居たと思ったが。
まあいいや。
「タカ様お疲れさまでした。いかがでしたか?」
「タカ、なんか一人で百面相してるみたいでおもろかったで」
「お兄ちゃんバカみたいだったよ。あはは」
酷いそこまで言わなくても。
「うーん、何とも言えないな。少しフレッドの過去が見えただけのようだ」
「ふーん、お兄ちゃん、それで有益な事は無かったの?」
「勇者がさ、旋雷って凄い魔法使ってたよ。アンやケイ、ガウは使えないか」
「アンは使えそうだけどまだ無理っぽいニャ」
「わたくしもまだ無理のようです。ですが、必ず使えるようになって見せます」
「ポキも同じくビャ」
「後、聖炎波ってのを賢者が使っていたんだが、誰か感じる物はあるかい?」
「お兄ちゃん、私なんとなく使えそうな気がする。まだ全然力が足りそうにないけど」
「うう、杏! 羨ましいですー。かっこいい魔法、私も使いたいのに使える気がしないですー」
芽衣は小説好きだけじゃなくて中二病なのか。
まあ、実際中学二年生だし。
「可能性は薄そうだが、聖炎波はもしかしたら、だな。(くっ、僕も旋雷は使える気がしない)それで他には?」
「フレッドが漆黒の槍ってパーティ組んでいてそのメンバーで、吸血鬼がボスっぽい洞窟で調査してる記憶だけだったよ。でも強くなるとあんな風に戦えるんだって感激したなあ」
「漆黒の槍……私もパーティ組んでカッコいい名前つけたい」
やっぱり、芽衣は中二病入ってるな。
「そうかなあ、ちょっとダサくない? 意味わかんないし」
「いいのよ、響きがいいの」
妹はどうやら中二病ではない様だ。
代わりと言っては何だが悪舌病にかかってないか?
ふむ、ちょっと待てよ。
「皆、聞いてほしい。どうやら鍛えて魔力を増やすと老化が遅れたり、場合によっては常識外に寿命が長くなる可能性もあるんだ。時間の流れが常人では無くなる。もう、ダンジョンで鍛えるのは止めにしないか」
「ああ、タカ。気づいてなかったのか。僕たちはそれ位、覚悟のうえだよ」
「ぶふっふふ、それは今さらやろ。タカなんか不老不死の可能性も高いんやで」
考えなくもなかったが、出来るだけ考えないようにしてたのが不味かったか。
「そうです。お兄さん私たちは覚悟のうえです」
「そう言えば、僕の祖祖祖母なんだが、160歳で老衰する、その時まで若々しかったよ。記録には残らないが、僕らの周りではよくある事さ」
「お兄ちゃん、逆にいつまでも若いのは女の夢」
そうか、俺だけ考えが甘かったんだな。
人外だっていう現実から目をそらし逃げていた。
俺ってやっぱりダメダメだなあ。
次回更新は水曜日になります、よろしくお願いいたします。
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