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閑話 大学へ行こう

ちょっと長いです。許されて。( TДT)ゴメンヨー

 今日はうち、ルンルンや! 

 モフモフでかわいいアンちゃんと一緒に大学に行くんや。

 張り切って案内するで~!


 そうやな、学食なんか喜んでもらえそうやな。


 朝起きたら速効着替えて、タカん()に向かう。

 なんでか言うと、うちが一人暮らしで料理苦手な事をタカのお母さんに話したら。


『それなら、毎日おいで。朝食もちゃーんと食べないと体壊すわよ。明日から朝食も食べに来てね』


 と言われて、悪いかなと思いながらも、おいしいご飯につられて今では毎朝早くからタカん家に入りびたりの日々や。


 慣れとは恐ろしいもんで、今では遠慮なんかまったくしなくなってもたわ。

 うち、大丈夫やろか?

 一般的に考えたら、かなり節操のない人やわ。

 うち、少し不安になってきたわ。


 しかし、タカん家のお母さん、凄い人やわ。

 いやな顔一つせえへん。

 うちやったら切れるかもやな。

 そう言いながら今日も早起きしてタカん家に行くわけねんけどな。


「おはよーさんです。美香やで」

「ああ、おはよう美香さん。朝食出来てるわよ」


 いつも優しいお母さんや。


「美香さん、おはようございます。いつも早いですね。今日はアンがお世話になります」

「ああ、おはようさん」


 ケイちゃんが、朝食を用意してくれる。

 ホンによくできた子や! 多少怖いのは幽霊やからしゃあないかな。

 最近では朝食のほとんどを作っとるみたいや。


 うちも、作れるようにならなあかんのやけど、中々やな。

 向いてない気がするねん。

 でも、頑張るで。

 聖にだけは負けとうないんや。


「ふわ~あ、おはよ~」

「おはようニャ」


 杏ちゃんとアンちゃんが起きてきたみたいや。


「あら、お兄ちゃんまだ来てないの~。起こしてきます~」


 杏ちゃんは妹やのに、にいちゃんラブを全く隠せへんな。

 アンちゃんは今日もかわいいなー。


「あのな、杏子。ああいう起こし方は止めろよな。美香おはよう」

「タカおはようさん」


 ああいう起こし方が気になるな、いったいどういう起こし方してんねんやろ?

 杏ちゃん過激やからなあ、何やったのか気になるねんな。


「美香、アンが付いて行って本当にいいのか?」

「いいに決まっとるやん。何言うてんねん」

「そうか、ならよろしくな」

「アン、楽しみニャ」

「アン、良かったなー」


 そう言いながら、タカがアンちゃんの頭を撫でているのを見て、うちは少しうらやましい。

 そう、撫でるのも、撫でられるのもや。


 でも流石に恥ずかしゅうて撫でてっ! とも言えんわ。

 うち、19歳やし。

 背も高いし。

 アンちゃんはうちに撫でられるの嫌がるし……。

 いや、今日は一緒に大学へ行くんやアゲアゲで行くで~。


「じゃあ、アンちゃん行こうか」

「うん、美香姉ちゃん、いくニャ」


 うちとアンちゃんは、先に出社や登校する皆を見送った後、鍵を閉めて大学へと向かった。


「アン、大学がどんな所か楽しみニャー」

「楽しみにしといてなー、近いからすぐ着くで~」


 自転車に二人乗りして、大学へと向かう。


「うわー、アン自転車に乗るのも始めてニャ」

「ごめんねバイクか車じゃなくて」

「アンこれがいいニャ」


 うふふ、うちは、嬉しくなって、自転車をこぐ力もぐっと強くなる。


「美香姉ちゃん、危ないニャ!」


 おっと、レベルをあげたせいで自転車の限界を超える速度で走る所やったな。


「ごめんごめん。普通に行こか」


 大学の正門が見えてくる。


「うわーでっかいニャ!」


 おどろくアンちゃんの反応がうれしい。

 自転車は門をくぐり、キャンパス内の駐輪場へと進んでいく。


「やあ、麻生さん、おはよう。今日授業あったかな? どうだい、俺と遊ばないか?」


 そう言いながら男が自転車の前に飛び出してきた。


 キーッ!


 うちは、慌ててブレーキを掛ける。


「危ないやないか。気い付けや!」

「ねえ、麻生さん。いいじゃないか。一緒に行こうよ」


 誰やこいつ?

 うちは知らんで。


「美香姉ちゃん、誰ニャ?」

「知らん」

「ふふ、つれないねえ。まあそう言った所も魅力なんだけどね」

「うちにかまわんどいてな」

「おや、親戚の子供か何かかい?」


 と、アンに手を伸ばそうとした。


「アンに触っていいのはにいちゃんだけニャ!」


 アンちゃんは、伸びてくる腕の服の裾を一瞬だけ軽く掴んで後ろに流した。

 

 ズサー! 


 っと男は前のめりになり転がった。


「あっあれえ? 俺なんでこけたんだ!」


 今のは普通に見たら、勝手にバランスを崩して転げた風にしか見えへんやろうなあ。

 アンちゃんやる~。


「ほな、さいなら」

「ちょまてー」


 しらんしらん、うちは知らん。


 それよりも最初どこへ連れて行ったろうかな。


 そやなー、まずは図書館かな。

 この大学図書館は無駄に荘厳やからな、見ごたえあるやろ。



「凄いニャー、綺麗ニャー、広いニャー、アン、こんなにたくさんの本を見るのは初めてニャー」

「そやろー、県内では、一番の蔵書を誇るんやで」


 良し、掴みはばっちりや。


 それから、大学内を一周し主な施設を全部見て回った。

 最後に学食や、ええ時間やで。


「大きな部屋で、大勢が勉強してたニャ。皆大人だったニャ。すごかったニャ」


 大講堂の授業が一番受けたみたいやな、アン真面目やな~。


「さあ、ここが学食やで~、お昼食べよか~」

「楽しみだニャー」


 学食は綺麗とはとても言えず、雑然としている。

 発券機には学生が列をなして並び、席をとるための荷物が机の上に載っていたりしている。

 うち達も、まず空いている席を確保した。


「アンちゃん何食べる?」

「何が有るニャ」

「そうやな、ラーメン、うどん、親子丼、牛丼、カレー、……」

「アン、親子丼がいいニャ」

「なら、買って来るからここで待っててや」

「うん」


 うちは券売機にならんでると。


「みっ美香さん、こんにちは。今日は部活出るんですか?」

「こんちは、そやな~、見学の子を一人連れて行ってもいいかな? 部長?」

「ああ、いいとも。大歓迎だよ」

「ほなら後でな」

「ああ、待ってるよ」


 そう言えば最近部活休みっぱなしやったなあ。

 仕方ないねん。ダンジョンの魅力には勝てへんねん。


 でも、今日はアンちゃんもいるし、大学と言えば部活動やさかい、寄る気ではあったんやけどな。

 心配かけてもうたかな。


 うちは、親子丼とうちのラーメンをもってアンちゃんの待つテーブルに向かったんや。なんか人多へん? 


「うわ~可愛い」「ねえどこから来たの?」「すごくきれいな黄色ね~どうやって染めたの? 帽子とって見せて」

「うにゃ~、止めるニャ」


 あかん! アンちゃんが困っとるよ。

 あの帽子脱がされでもしたら大変や!


「ちょーとどいてえや! 皆、通るで! どいてーや!」

「あっ、美香ねーちゃん。助けてニャ!」

「その娘は、うちの親戚や。遊びに来たので、大学を見学しとるんや! ご飯食べるんやから離れてくれるん」


 ぎんっと、にらみを入れる。


「ごめんね、ゆっくりしていってね」


 そう言いながら皆離れていった。


「ほ~っ」


 よかったわ。


「怖かったニャー」


 あれほど強いアンちゃんでも怖い事あるんやねー。


「さ~気を取り直して食べようや」

「いただきますニャ」

「いただきま~す」


 うちはずるっとラーメンをすする。

 すると、まあおいしいんやが主張のない味が口内に広がる。

 麺も少しのびとるわ! 


 そうや、学食はこんな味やったなー。

 チープや。


「美味しいけど、微妙な味ニャ」

「あはは、木戸家のごはんは特別美味しいからしゃーないんや」

「なるほどニャ、ケイもお母ちゃんも凄いニャ。きっと追いつくニャ」


 そやっ食の道は深いんやで。

 人の事言うてる場合か、うちも負けへんで。



 食後うちらは部室に向かう。


「ここや、ここがうちの所属する、漫才研究会や」

「こんにちは~です、美香やで」


 部室は小さいけど、真ん中にちょっと大きめな机が置いてあって、奥には凄くこじんまりした、舞台もあるんや。


 舞台には電源とか入っとらんけどマイクもあるで。


 何人かの部員が中でたむろっているな。


「おっ美香ちゃん、お久」

「その子が見学の子だね、部長に話は聞いてるよ、ゆっくり見て行ってくれ」

「ようし、見学の子も来たんだ。休憩終わりだ。張り切っていってみよう」

「ほな、次はわてらな」

「どぞどぞ、二人はこっちに座って見てな」


「何が、始まるんにゃ」

「マンザイや。……アン漫才って知ってる?」

「テレビで見たことあるニャ。あの面白い奴ニャ」


 テケテンテンテンッ


「なんニャ」

「お囃子言うてな、昔は漫才始まる前にあったんや」


 先輩が二人舞台の袖から登場する。


「コンでーす」

「ザイでーす」

「二人そろって混在でーす」


 ここは部室や、皆ネタとかばれまくっとるので誰も笑わないんや。

 その中で演るのは、心臓が強うないと演れん。

 きびしい修行や。

 しかも、今回は初顔が見に来とるんや、受けへんかったら地獄やで。


「なあ、聞いてや~、隣のおっさんがえろう怒ってんねん」

「なんでや?」

「毎日~うるさいって」


 おっ、新作やな、聞いたことないで。


「お前が騒ぐからやろ」

「いや、俺~。静かに読経してるだけやねん」

「おま、隣で毎日長時間読経されたら煩そうてしょうがないわあ、それが原因やぼけ!」


 べちんと頭を叩いた。


「美香姉ちゃん、今のどこが面白かったんニャ?」


 カッキーン! と部室が凍り付いたんや!

 うちにも分かったで。


「……そっそないなこと~あらへん。俺は~静かに唱えたんや」

「余計きもいわボケ」


 一拍間が空きはしたんやが、先輩は漫才を続けたんや。

 凄いで拍手したいくらいや。


 アンは最後まで笑う事は無かったんや。


 あれ? うちは最初簡単なギャグでも笑い転げていた気がするねんけど。


「いい加減にしんしゃい。ほな、ありがとうございましたー」


 テケテンテンテンッ。


 二人はがっくりと肩を落として席に戻ってきた。


「素直な子供に受けてこそ本物じゃ。次は俺らが行く」


 先輩たちや、後輩まで燃えて次々と壇上に上がっていった。


 しかし、長い留守番で、すっかりテレビっ子になってしまっている。

 そうプロの漫才師を多く見てきていて、たぶん色々な常識すら違う異界人のアンを、たかが学生の研究会員では一度もクスリともさせる事が出来ず、爆死者累々となってしまった。


「美香姉ちゃんは、しないのニャ?」

「うちは、……」


 そう言えば、うち、見てるだけで演ったことなかったわ。

 相方女の子がええと思って探してたら、この部には男しかいいへんかって、ふてくされてそのまんまや。


 うち、ただの観客役やんけ。

 知りとうもない真実を知ってもたわ。


「皆、ありがとさん! ほな、さいなら」


 うちは、アンを連れて逃げるように部室を後にしたんや。





「ああ、麻生さん(美香)を今日も笑わせられなかった……」

「そうだよな。新入部員の頃はころころとよく笑ってくれたのに」

「くっ今度こそ笑わせるんや!」

「そうや、しっかりウケて告白するんや!」

「俺が先にするんや!」

「俺や!」

「早い者勝ちじゃ!」


 思ったより挫けていない部員たちであった。





 ま~いろいろあったけど概ね楽しい大学見学やったわ。

 アンちゃんも終始機嫌よかったし、大成功やわ。

次回更新は新章開始で月曜日になります、よろしくお願いいたします。

楽しんでいただければ幸いです。

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