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0069.ハーレム男

 私たちは大きな音が聞こえた方向が怪しいと踏み、班ごとの探索を一時保留して、全員でその方向に急いで移動している。


「はあっ、はあっ、遠いな。これは郊外の山の方かも知れんな」


 はあっ、はあっ、はあっ、賢者様早い。

 付いて行くのが大変すぎる!

 疲れた。

 返事をする余裕がないわ。


 賢者様は身体を魔力強化などしている様子は無いのに凄いな。

 周りを見ると聖北騎士団の皆も疲れ切っている。


 賢者様の加減して走る速度でも誰もまともについていけないのだ。


 ドシュー!


 空に向かって攻撃魔法の光が伸びていく。


「あれは、もしかして遠雷! 誰か勇者が来ているのか?」


 きっと、タカかアンだわね。


「勇者が戦っているなら、なおさら急いで加勢しなければ。皆すまないが先に行かせてもらう」

「よっよろしくお願いしますっ」


 ドンッ! 


 空気を揺らす音と共に賢者様は一気に加速し見えなくなっていた。


 はあっ、もう走れない。

 よかった。

 先に行ってくれる。


 私は走る速度をそっと落とした。


「ぜえっ、ぜえっ、聖女様っ。凄いですね。どうしてそんなに走れるのですか?」


 少し遅れて騎士たちが追いついてきた。


「私も強くなったのよ」


 まあ、答えにはなっていない。

 だが、それ以上聖北騎士団の皆は深くは聞いてこなかった。


 それから二度ほど空に向かって遠雷の光が上がる。

 私には理由が分からないのだが、戦いが終わったと何故か確信した。


「ふうっ」


 すべて解決ですね。

 思えばあの司教との結婚問題も長かったな。

 司教が赴任するなり私を見初めて結婚すると言いだしたのだ。


 司教は結構なお年だ。

 当然周りは反対したが、司教は頑として周りの言う事を聞かなかった。

 ですが時が過ぎるにつれ、なぜか司教に従う者が段々出てくる中。


 私を教会内に置いておくのを危険と見た当時の聖北騎士団団長が、私を聖北騎士団で面倒を見る事を主張してくれたおかげで教会を離れることが出来、奴の毒牙に掛からなかったのだと思う。


 その優しかった聖北騎士団団長も第一次吸血鬼退治隊に参加して帰ってこなかった。

 団長は吸血鬼退治に参加する際に、私を団長代理に任命してから参加したのだ。

 自分が生きて帰ってこられない事を予感していたのかもしれない。


 聖女であり、聖北騎士団団長代理の立場は私を守ってくれていたが。

 もしタカに出会えなかったらと思うとぞっとする。

 確かに今回来られた裁定者の皆さまは優秀だった。


 しかし、ゲブンの掛けた隷属に気づけたかどうかは分からない。

 もし気づけないで騙されたなら、私も聖北騎士団もただでは済まなかっただろう。


 神よ感謝いたします。

 私にタカとの出会いをくれて。

 タカが元吸血鬼の眷属であろうと、異界人であろうと、きっかけが彼の魅了であろうと関係ない!

 今私は、彼の事が大好きなのだから。


 聖北騎士団の皆には悪いのですが、私は彼に付いて行きたい強くそう思うのであった。


 でも、彼、向こうでは学生だって言ってたので自重はしますよ。


 少し休憩を入れて、また爆発音のした方向に向かってゆっくりと走っていると、賢者サリウスがこちらに向かって走って来るのが見えた。


「皆止まれ、賢者様が帰ってこられた」


 賢者様も我々を見つけ走り寄っていらした。


「あちらに見える小山の頂上付近に爆破跡など戦闘の痕跡は見受けられたが、悪魔も勇者も見当たらなかった。なのでこの件は終わったとは言えない。皆すまないが班ごとに分かれて調査をお願いする。俺も独自に調査するので、だれか一人俺の補佐を頼めるか」

「それでは、私が」

「聖女様が? くっくっく、いや悪い。恋する美しい女性を、むさい俺の調査に付き合わせるわけにはいかんな。俺が蹴り飛ばされてしまう。聖女様には、要請に答えて来られる。勇者や聖巫女への対応をお願いしよう」

「はい、分かりました」


 なな、なんでそんな事がばれているの?


「では、私が」

「アルバさんだったかな、よろしく頼む」

「はっ! 喜んで」


 すでに班分けは終わっていたので、その場で分かれ私は教会に向けて歩き始めた。






「で、賢者様はなぜ、こんな田舎のこんな事件に付いて来られたのですか?」

「いやね、ここの聖女様はすごい美人と聞いたのでね様子を見に来たのだが。まさか、他の男に恋する乙女だとはね。やられたよ。だが来てよかった。司教が怪しいとは踏んではいたが、人魔や悪魔が絡んでいようとはね」

「お気持ちを察します」

「クフフフ、さあ調査するぞ」

「はい」






 目が覚めると俺はケイにお姫様抱っこをされて未だ空中に居るようだ。

 どうやら、ダンジョン方面にゆっくりと飛んでいるらしい。

 下には走って付いてくるアンを感じる。

 ガウは横に並んで飛んでいた。


 俺の体はまだ熱くて煙を出している。

 どうやら少しだけ目覚めたようだ。


「タカ様、お目覚めになられましたか?」

「ああ、まだ辛いのですぐ寝てしまいそうだが」


 俺は、霧水化を解き人型に戻った。


「落ちている所を助けてもらったのかな? ありがとう」

「いえ、わたくしあんな小物に手こずりましてお助けできず。すみませんでした」

「いや、あの劣悪魔達は強かったよ。よくやってくれた。いけない、もう寝そうだ。すまんがこのまま連れて帰ってくれ」

「はい、お安い御用です」


 ケイは輝く笑顔を見せるのだった。


 俺は、翌日も調子が悪くてベッドから出る気にはなれなかったので、他の皆だけでダンジョンへ行ったり買い物に行ったりしたようだ。


 その翌日の朝には復活していて、すごく調子がいい。

 ついシャドーボクシングをやってみたが、パンチの速度が半端ない。

 相当俺は強くなれたようだった。

 休みが一日パアになったのは痛いが、仕方なく学校へと道を急いだ。






 秋も深まったある日。いつものように、放課後には仲良し三人組が集まるが、最近は聖が一緒に集まることが多くなっていた。


「でね、その廃屋の奥には、二人の惨殺された遺体が残されていてね。その惨たらしさときたら」


 そうして今、季節外れの聖による怪談(実体験)が披露されている。


「そこに居た怨念は、惨殺されている二人ではなく、隣の家で亡くなったおじいさんの物だったんだ」


 聖は何のひねりも無く、本当の事を明るい口調で話すだけなので怖くない。

 本当の事だと知らない二人はもっと怖くない。


「えっそれだけ?」

「もう少しひねりが欲しいのう」


 冬二とショウはこれまた正直に返す。


「ぐぬぬ」


 聖は非常に悔しそうだ。

 聖は気が短いのにそんな弄り方をするとどうなるか分からないのに、よくやるな。


「タカお前は怖い話がないのか?」


 おっと無茶ぶりが来ましたよ、なぜ俺に?


「仕方ないとっておきの話だ、あれは、2年前の冬の事だ、俺の知り合いのお店の店主がや〇さんに難癖を付けられて、困っているとの相談を俺に」


「いや、その手の怖い話じゃないし。しかもそれ相談じゃなくて愚痴だし」

「冬二、そうなのか?」

「いやいや、や〇ざの苦情を中学生に本気で入れる訳ねえだろ! 聖さん本当にこんな奴でいいのか?」

「なんのことか知らんが? こんなハーレム男、気にする訳ないだろ」


 ええーまた、何言ってくれるんですか!


 聖を睨むと、てへぺろっとなり。


「おっと、そう言えば用事が!」


 と言って逃げていった。


 聖が、てへぺろとかギャップ萌えで可愛すぎるだろ。

 冬二の頭だけがグリンとこちらを向きニタアーとしながら。


「タカ、ハーレムってなんぞ?」

「ハーレムのう。色々聞きたいのう」


 あっあかん俺も逃げたい。

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