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0066.裁定者たちの訪れ

 次の日も皆、朝早くから家に集合していた。


 ケイはもっと早くに一度こちらに戻って母さんの朝食づくりを手伝って、あちらに戻ったようだ。

 両親も慣れてきたようで気にしていないように見える。


「貴志! あなた、ケイちゃんを働かせすぎなんじゃないかしら?」


 と母さんからのお小言もいただいた。

 確かにそうだな、ケイがやる気満々とはいえ頼り過ぎている気もする。

 幽霊って寝なくて疲れないのだろうか?


『わたくし、寝ない生活を70年以上しているのでお気になさらないでください。わたくしは好きで動いていますよ。何も用事の無かった長い年月より遥かに充実していて楽しいのです』

『でも、無理はしないように、きつかったら必ず言うんだよ』

『はい』


 そうは言ってもケイはあの性格だ。

 素直にきついとは言わないだろう。

 俺がよく見ておかないとな。


 しかし、ええ娘や! ほんにええ娘や。

 なんでこんな娘が早死にしたのか? 

 運命は理不尽だ。


 もっと強くなって体を与えれるまでになろう。

 その為にはダンジョンの攻略も急がねば。

 俺は張り切って皆とダンジョンへと繰り出すのだった。


 学校やダンジョンで頑張りつつ教会の様子も探る一週間が過ぎ、今日は裁定者が街にやって来る日だ。

 いったいどんな奴が来るのだろう?


 到着は午後の予定だと言うので、午前中はダンジョンで訓練することにし。

 午後、俺たちは教会の裏にある喫茶店の様な飲食店のテラスに陣取り探知の範囲をかなり広めにとって様子を伺っている。


 教会内の隷属者は全て夜中に隷属状態を打ち消してある。

 そして、聖女が偽物とバレる事で事態が悪い方に向くのを恐れ、ミルスにも元の異界の自室に帰ってもらっていた。


 ミルスもかなり強くなっていて、もう大丈夫だろうとの判断も有る。

 もし危険なら即転移で攫い、俺たちの町に連れ帰る予定だ。


 一方教会内は隷属から解かれた人たちが集まって何やら相談していて、見に行ったガウの話からすると、どうやってゲブンを告発するかを話し合っていたようだ。


 今ここで様子を伺っているのは、ケイ、アン、ガウ、俺の4人で。

 他の皆には後で詳細を話すと説得し、俺の部屋で待機してもらっている。


 少し待っていると、空から迫る者たちが探知にかかった。

 どうやら空を飛んで結構な人数がやってきているようだ。


 バッサ、バッサと飛竜? だ! すっげえ! が何頭も飛んできて足で持っている籠を教会前の方へ投下した。


 ええっ! と思って見ていると籠はゆっくりと降下していく。


 なるほどこれも魔道具か何かのおかげか。

 凄いな。


 確かに飛竜の大きさに比べて籠が大きい。

 馬が引く空車のように重さを無くすなり、軽減するなりされているのだろう。

 飛竜は空を舞い別の方向に降りて行った。

 竜舎の様な物があちらにあるのだろうか?


 やってきた人々の中には一人俺より魔力の大きい奴が居るが、俺の探知に気づいた様子はない。


 俺たちは教会の表に回り直接確認することにした。

 教会の表に回ると見物人であふれていて、その人垣の間からちらっとしか見ることが出来なかったが。

 飛竜が落とした籠は地面に着いてなく浮いている。

 そう思うと俺達よりある意味進歩した世界だと感じた。


 数人の教会関係者と20人はいそうなごつい騎士。

 そして一人ひょろっとした金髪の貴公子が居て、その貴公子が俺より魔力が高い。

 彼一人で騎士たちを全滅できるだろう戦力だ。


 ちょっと軽そうな雰囲気の彼は、一瞬俺の方を見たが、あまり気にせずに教会に入っていった。

 中で調査なり審議なりが始まるのだろう。


 あれなら、ゲブン辺りの企み等、通じはすまい。


 しかし、俺にはもっと気になることが出来てしまった。

 探知範囲内に悪意の塊な、魔力の高い奴らを見つけたのだ。

 こいつらが、ガウの言う劣悪魔なのだろうか?。


「ガウあちら側に悪意の塊が居る。分かるか?」

「この気配は劣悪魔ビャ。どうやら結果を楽しみに来たようビャ」


 裁定者たちには悪意を感じないし、まともそうだ。


 これならミルスは大丈夫だろう。

 だが作戦が失敗したと分かると劣悪魔は暴れるかも知れない。

 最初に見たガウ程は強くなさそうだし、知ってしまったからには放ってはおけない。


「一番強い奴は俺がやる。後を頼めるか?」

「ポキに任せるだビャ」

「わたくしも大丈夫です」

「そんな奴らには負けないニャ!」

「小山の中に隠れている今のうちに接近し、町の外でやるぞ。町に入って暴れられたら困る。急ごう」


 俺達は奴らの居る方向に走り出した。


「あの連中も育てば悪魔になるのかい?」

「いいえ、劣悪魔は厳密には悪魔ではないビャ。悪魔モドキビャ。いくら育っても劣悪魔のままビャ。どちらかと言えばアンデッドに近いビャ。でも、自分では悪魔だと思ってる奴が多いビャ」


 なるほど、同じじゃないと思ってる事はよく伝わったよ。






 私は久々に聖北騎士団本部に帰ってきています。

 一週間程留守にしていただけなのにすごく懐かしい感じがしました。


 タカに連れていかれた先での経験はまるで夢のように感じて、現実感が薄い。


 しかし、私の魔力は、今までとは全く比べ物にならない程大きく育っています。

 私は、ここでは聖女様とあがめられてはいるけれど、勇者協会からはお呼びがかからない、いわゆる落ちこぼれと言う奴だった。


 才能が有る者の多くは、勇者協会に所属して魔物や魔獣との戦いに従事している。

 魔物等との戦いは人の歴史でもあり、人の天敵である奴らは破壊衝動のみに支配されていて、遭遇すれば必ず人を襲ってくる魔物等を撃退する事こそ崇高な仕事と皆認識しています。


 家、田畑、牧場など人が作った物を必ず破壊し、そこに居る人々を惨殺する。

 勇者協会が出来て組織的に反抗をし始めるまでは、ちりじりになって隠れ住み、かなりひどい目にあって来たと聞きます。


 なので、勇者協会に選ばれ戦う事はものすごい栄光なことなのです。

 勇者協会も人手不足なので優秀な者には分け隔てなく声が掛けられます。

 が、私には有りませんでした。

 比較的安全な田舎に引きこもるしかない弱き者達が私達なのです。


 コンコン。


「昼食をお持ちしました」


 エルザがやって来たようだ。

 いつもと違う緊張した趣で、その目にはうっすらと涙が浮かんでいる。


「聖女様! 私は今までゲブンに操られ、あなた様にとんでもない無礼を働いておりました。平にご容赦を!」


 と食事をテーブルに置き泣き崩れたのであった。

次回更新は火曜日になります、よろしくお願いいたします。

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