0064.似た物の集まり
俺は一度ミルスの部屋に帰り、俺の説明の補足をして貰う為ガウを連れてダンジョンに移動。
皆に分かった出来事を説明し、どうしたもんかと尋ねた。
「これは、劣悪魔の仕業の可能性が高いビャ。劣悪魔はこの手の、手の込んだ割に大した事のない、いたずらが大好きだビャ。きっと簡単な願いを叶えて幸せの頂点に居る時に全てを奪って落胆するのを楽しんでから殺すつもりビャ」
「へーそうなんだ」
「小悪魔はこんな持って回った事はしないビャ。もっと直接的ないたずらや殺戮をするビャ。悪魔は人にさほど興味が無くて、それ程簡単に事を起こさないビャ。とても強いので、やるときには結構力任せな事が多いビャ」
「なるほどな、詳しいな」
「ポキはこれでも300歳の小悪魔だったビャ。もう200年ほどで悪魔に進化出来たかも知れなかったビャ。今回生まれ変わったのと同じなので今は0歳ビャ」
300歳! とてもそうは見えなかったな。
しかし、そうだとするとこれは悪戯なんだね、悪魔的には。
「[くっ、司教の奴! 卑劣だわ。でも、そこまで私が欲しいのかしら? ばれたら身の破滅だと言うのに]」
「[そこまで想像が出来てなさそうな奴だったな。何であんなのが司教なんてやってるんだ?]」
「[何でも、力のある枢機卿の次男か三男かなんからしくて、思いっきりコネって噂だわ。この辺りは田舎だし、その割にアンスラルドは大きな都市だから入れやすいんでしょうね。助祭が二人いて優秀なので大きな問題はないと聞いたわ]」
なかなかひどい話だが、裁定者とやらにある事ない事吹き込まれて聖北騎士団が無くなるのも聖北騎士団の皆が可哀想だな。
何か考えないと。
「[そうだ、水を聖水にする方法を教えてくれないか。水のままよりは疑われにくいと思うんだ]」
「[聖属性の魔法が使えれば出来ると思いますが]」
「[ああ、聖光とか使えるよ]」
「[聖光ですか? それは聖巫女や賢者の魔法。そうですか、タカは賢者でしたか]」
「[そんなご立派な物じゃないと思うけどな]」
「[にいちゃん、賢者様だったニャ凄いニャ]」
「[そう言うアンさんだって、人狼になりきらず、今は人虎なんでしょ。賢者か勇者の資質を持っていたはずですよ。聖光とか使えますか?]」
「[使えそうにないニャ]」
「[遠雷の魔法とか使えませんか?]」
異世界の言葉には魔力によるイメージが上乗せされていて、正しく受け止める事になれれば結構正確に細かな事が伝わるようだ。
特に魔法名はイメージがハッキリとしている。
俺にも遠雷がどんな魔法なのかかなり詳細に理解できた。
その上俺には本能があるので即使えるレベルまで解る。
「[遠雷、なんだか使えそうニャ]」
「[なら、アンさんは、勇者の資質があったんですね]」
「[アンが勇者…………ニャ]」
「[俺も使えそうな気がするな。あっちの岩を狙って。遠雷!]」
俺の前にエネルギーが収束していく。
収束したら前方にはじけ、直径5cmくらいのエネルギーが一直線に進んでいき100m以上は離れた岩を焦がした。
ダンジョンは破壊まではできなかったようだ。
でも、これは良い長距離攻撃の手段になる。
無かったんだよな遠距離攻撃。
ただ魔力消費激しいな1/3は持って行ったぞ。
「[アンも遠雷! ニャ]」
同じような威力の攻撃魔法が飛んでいった。
「[…………タカ、あなたはいったい何なのですか、勇者の魔法まで使えるなんて]」
「なんだか盛り上がって魔法とか撃っているのは良いのだけど、僕らにも分かるよう教えてもらえるかしら?」
なぜか丁寧な聖が怖い。
あわてて、俺は掻い摘んで説明した。
「ふうん、タカが勇者で賢者ねえ? そして、アンが勇者と。大盤振る舞いだな」
「そうでないと、吸血鬼に攫われて生きてはいないそうだ」
「勇者で賢者、お兄さんチートですね。完全に主人公ポジです」
まあ、ラノベで例えるとそうなるのかな?
「お兄ちゃん素敵♡」
いかんチート大好きな妹がそれを聞いてぽわぽわしだした。
妹はもう手遅れなのかもしれない。
どうしたらいいんだ?
「しかし、アンは勇者やってんなあ。かっこいいで!」
「美香姉ちゃん、ありがとうニャ」
「で、これからどうするかなんだが、皆の意見を参考にさせてほしいんだ」
「そうやなあ、その裁定者の前でゲブンの悪事を暴けると最高なんやな」
「ふん捕まえて、そいつらの前に差し出してやればいいじゃないか?」
聖らしくシンプルだな。
「[ゲブンはそれなりの地位ですから、無理に拉致すると教会からどんな難癖をつけられるか分かりません]」
と、ミルス、訳はアン。
多少の難癖位、聖北騎士団には戦力が有るのだから関係がないような、いや、あの真面目そうな連中だ、教会が言ってくれば取り調べくらい甘んじて受けるかも知れない。
そうなると冤罪で何されるか分からないな。
「お兄ちゃん、教会の偉いさんが見れば、ゲブンが人魔だとバレるんじゃないかな?」
「[彼は司書なので、そもそもそういった場に同席しない可能性が高いです]」
「嘘発見魔法はないのですか?」
芽衣、そうだな、聞いたことが有るような?
「どうなんだろう、確か直近の犯罪を判定する魔法は有ったよな?」
「[あれは本人が犯罪だと思ってなければ引っ掛からないわ。避ける方法もあるのよ]」
「難しいなあ」
芽衣も真剣に悩でくれている。
「ゲブンを裁定者の前に何とか引き出す方法とかも考えた方がいいかもな」
聖も、ちゃんと考えてくれているな。だが、どうだろうか?
「うーん?」
(ここで、ラノベ知識でなんとかお兄さんのお役に立たい。せっかくたくさん読んでいるんだから頑張れ私。思い出せ私)
芽衣はまだ難しい顔をして考え込んでいる。
「それも、裁定者が人魔だと見抜ける人材が来た場合有効だが、他だと厳しいな」
「[まあ、裁定者はその位見抜ける者がなる役職だとは思いますが。人魔は元人が魔物になった存在です。分かりづらい面は有るかと思います]」
「裁定者が凄く優秀なら、全てを見抜くかもしれない。その場合はこんなこと考える必要もないからな。多少頭が悪いのが来たとして考えよう」
「うーん?」
皆、考え込み始める。もしかしてこのメンバー全員、俺も含めて脳筋の集まりなのか。
強くなる事しか考えていないような気が。
何も良い案は出ないので、とりあえず聖水の作り方をミルスに教えてもらう事にした。
次回更新は火曜日になります、よろしくお願いいたします。
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