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0062.責任取ってね

「[何か、見慣れない内装ですわね]」

「[うん、異世界ですのニャ]」

「[異世界ってなんですのー! もしかして皆さんで私を担いでいます?]」

「[いや、誰も嘘は言ってないよ。外を見てごらん]」


 俺は窓を指さした。


「[まあ! 見たこともない景色。とても大きな街ですわ。いろいろと全く違いますね。次元転移は魔人族の方々が研究中と聞いたことが有るんですが。こんなに簡単に行える方がいらっしゃるなんて!]」

「[ようこそわが世界へ! ミルス、歓迎するよ]」

「お兄ちゃん、そう言うの似合わないわよ」

「そうかなー」

「私、お母さんに一人増えたって言ってくる」


「[タカ殿は不思議な方だとは思っていましたが。異世界の方だったのですね]」

「[黙っていてすまない、話すだけでは信じてもらえないと思っていたんだ。俺はこの世界のただの学生。俺の事もタカと呼び捨ててよ]」


「[分かりましたタカ、確かに聞いても信じなかったでしょうね。この世界に来てから魔力を周りに感じられないわ。魔力の薄い世界なのね。なのに、あなた方からは強い魔力を感じるわ]」

「[その辺は食事後に説明しよう。いろいろと謝りたいこともあるし]」

「[謝りたいことねー? わかったわ。後でね]」


 俺が居ない時や今、何で皆話が分かるのかと思ったら、アンが通訳していたようだ。

 そうか、アンや、ケイ、ガウなら通訳できるんだな。


『ケイその後どうなった?』

『おばさんは、すぐ気を取り戻し何事も無かったかのように帰って行かれました。後は変化有りません』


『ケイありがとう。ガウは、何か気づいたことはあるか?』

『人魔の気配が有るような気がするビャ』

『人魔とはなんだ?』

『人魔とは、魔に落ちた人間ですビャ』

『ありがとう、ガウ』


 聖職者なのに闇落ちするとは。あれっ? ゲームやライトノベルなどではよく聞くぞ。

 昼食時ミルスを両親に紹介すると、両親はその美しさに唖然となってしまった。


「(なるほど、お前の本命はこの方か)」


 親父が耳元で囁いたのは言うまでもないか。


 何の反応もしなければ誤魔化せたかもしれないが。

 しかし、俺は顔が熱くなって、つい下を向いてしまった。

 バレバレだなこれは。


「[すっごく美味しいです! 教会は質素な食事ばかりでしたが、それを差し引いても信じられないくらい美味しいです]」


 ミルスが味の差に驚きながら、皆で食事を済ませて俺の部屋に帰り俺はミルスに説明を始める。


「[実は俺、あの討伐された吸血鬼の眷属の生き残りだったんだ]」

「[いやまって、あの時は聖水を掛けたはずだわ]」

「[掛けられたのは、聖水ではなく水だったんだ]」

「[じゃあ、あなたはアンデッド?]」

「[いや、アンデッドでも吸血鬼でもないんだ]」


 そう言って俺は剣を少しだけ抜き腕を斬る。

 すると血があふれ出て、その後何もなかったかのように治っていった。


「[血が出る?]」

「[そう、俺は生きている。切れれば痛いし吸血衝動もない。だが、再生する力があり、蝙蝠にもなれる。変な存在なんだ]」


「[そんなの聞いた事もない。でも吸血鬼退治の時に参加したブリーフィングだと、吸血鬼はアンデッドなので再生は出来ず修復のみ行うと聞いた覚えが有るわ。血も流れていないとも聞いた。逆に再生してやると滅びるとまで確かに聞いたはず。でもあり得ない! 吸血鬼の眷属になって未だに生きているなんて]」


 あれ? 再生って吸血鬼の能力じゃあないの? ミルスは深刻な顔をしてぶつぶつ言い始めた。

 やばい、壊れたか?


「[待って、思い出したわ。勇者や賢者だったなら、耐性が有りすぐには吸血鬼にならないはず。力のあるものなら跳ね返せるとも言っていたような。と言う事は、タカが勇者か賢者であれば……あり得るのだろうか?]」


「[まさかそんな、普通の学生ですよ]」

「[普通の学生は、その、そんなに、えーと、そう、しっかりはしてません。私はタカをどこかの大商人だと疑いませんでした]」


 それは、何か論点がずれているような? その上であなたの見る目が、とは言ってはいけないな。


「[タカ、あなた神気も纏えるんじゃなくて?]」

「[神気ですか、うーん今俺は神気と悪気と生気を、纏っていますよ]」


 ミルスが石のように固まってしまった。

 そして、少し間をおいて、独り言のように話し始める。


「[……そ、そんな、そんな馬鹿な。神気を纏えているのなら勇者か賢者の資質が有りますが。悪気を同時に纏えるなんて、うーん!]」


 ミルスが気絶してしまったっ為、話はこれで中断したのだった。


「[はっ、ここは?]」

「[ここは、ダンジョンです]」

「[ああ、夢じゃなかったわ。いいでしょう、百歩譲って、あなたが、特殊な人だと認める事にしましょう。で、謝ることって何ですか?]」


「[俺はさっきの世界から、吸血鬼に攫われて蝙蝠にされたわけなんですけど、吸血鬼が滅びるまで何も考えられなくてですね。出来損ないだったらしいので、魔法も使えず、自分の能力の事は何も分かってなかったんですよ]」


「[なるほど、それで?]」

「[それで、この世界の事もさっぱりわからなくて。ミルス様方から少しでも事情を仕入れようとあなた方の所に行ったのですよ]」


「[まあそんなものかなとは思ってましたが]」

「[でね、俺、その、魅了の能力が有るって知らなくて、なぜか、ミルス達を魅了してしまったんですよ。すみませんでした]」


 一回目はね。


「[それは、変ですね? 私たちは吸血鬼退治の結果調査に行ったのです。帰った時に全員、状態異常検査を念入りに行われましたが、誰も異常は発見されなかったですよ]」

「[それは、その頃の俺はスライムより弱かったですから、魅了状態は短時間で切れていたんですよ]」


「ええっ! タカってスライムより弱かったの? マジですか?」


 煩いな聖、話の途中で。

 いつの間に戻って来ていたんだ。


「そう言えば、うちにもテストで魅了を掛けたんやったな」

「私にもテストって言ってました」

「私には壁越しで見えなかったからよね、お兄ちゃん」


 ええっ、妹の奴なんでそこまで知っている。


「もしかして僕にも掛けたのか」

「いいえ、聖さんには何も掛けていません」


「[あなたが、うかつな方だって言うのはよく分かりましたわ]」

「[すいません。事故だったんです。許してください]」


 俺は必死に頭を下げた。


「[分かりましたタカ、頭を上げてください。魅了したことは許しましょう、偶然のようですし。しかし]」

「[はいっ]」

「[私を魅了した事実は消えませんので、……責任はとってね]」


 まじかー。

次回更新は火曜日23時になります、よろしくお願いいたします。

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