閑話 お兄ちゃん
少し短いです、許して。
私には、お兄ちゃんがいる。
とても変わっているが、私には優しく、とてもかっこいいお兄ちゃんだ。
いつの頃からか、私はお兄ちゃんをただの兄妹と思えなくなったのだろうか?
物心ついた時には、もう好きな男の子だった。
「結婚するなら、お兄ちゃんと!」
真剣に思ってた。
私って、おかしいのだろうか?
「わたしもおにいちゃんすきー!」
「わたしもー」
「えー? おにいちゃんいじわるするからきらい~」
幼稚舎まではお友達もこんなふうだったのに小学校に上がるころには違っていた。
「お兄ちゃん、優しいけ~、嫌いじゃないけど~恋愛の対象には気持ち悪くって~」
「えっ、男の兄妹っているだけでうっとうしいじゃん! 私は嫌いだなあ」
「えっ、杏子、お兄ちゃん好きなの? 変なのー。まあ、お兄さん位カッコよかったら違うのかなあ」
兄妹がいる友達は皆そんな事はないと言う。
「えっ、知らないの? 兄弟で結婚なんてできないよ」
友達の一人が言った。
私はその言葉にはっとしてやっと気づいたのだ。
どうやら私はお兄ちゃんが好きすぎて家族とは結婚できないって事から無意識に目を背けていたようだった。
非常に悲しくなって落ち込んだ私は学校が終わって急ぎ家に帰るとお母さんを探した。
「ねえ、お母さん! 私、お兄ちゃんと結婚できないの?」
お母さんは困ったように言う。
「そうねえ、普通、兄妹では結婚出来ないかな。でもあなた達はきっと出来る! がんばって!」
お母さんはそう言って私をごまかした。
その時は勢いでごまかされたのだけど、その後少し年年齢があがるとそれは嘘だったと私にもわかるようになる。
母さんの嘘つき!
私はお母さんを少し嫌いになっていた。
私はお兄ちゃんを好きなのにお兄ちゃんにつらく当たるようになっていた。
結婚できないこともそうだけど、お兄ちゃんに全くその気がないことも相まってそれに拍車をかけた。
「お兄ちゃん。うっとうしいから近寄らないで!」
とか。
「お兄ちゃん、私アイス食べたいから。すぐアイス買ってきて」
とか、やりたい放題である。
それでも許してくれる優しいお兄ちゃんに私の心はズキズキと痛む。
でもお兄ちゃんを見ると心の奥から報われることのない思慕の念が湧いてきて、私はよけいに機嫌が悪くなりお兄ちゃんにあたり散らかした。
「ねえ、杏ぉ~! お兄ちゃん紹介してよ! まじ、かっこいいし~」
中学生になると、そういう友達も増えてきた。
私、本当は嫌だったけどお兄ちゃん好きがバレないように見栄を張ってこう言うのだ。
「いいよ~、うちに来なって」
お兄ちゃんに彼女が出来たらどうしよう?
自分で紹介しておいてそれは無いなと自分でも思うが、いつもドキドキした。
友達と付き合うお兄ちゃんを想うと心がずきずき痛むが、何故か体は熱くなってきたりして、一人慰めを覚えてしまう。
一度覚えてしまうと夜な夜な繰り返してしまうの。
これが気持ちよくてやめられない。
お兄ちゃんごめんなさい私いけない娘になってしまったの。
お兄ちゃんお願い! 私のこの気持ちを受け止めて。
誰とも付き合っちゃいやだ!
だが、すべて私の杞憂に終わった。
誰もお兄ちゃんにアタックできなかったのだ。
いざ告白したい友達を家に招待するとお兄ちゃんを直視すらできず、あまつさえまともに会いもしないでみんなすごすごと帰っていく。
お兄ちゃんを紹介した友達に聞いてみると、お兄ちゃんの前に出るとドキドキし過ぎて言葉が出ないって言ってた。
そう、私の知る限りお兄ちゃんに告白できた人はいない。
お兄ちゃんは自分はモテないと思い込み悩む始末だった。
本当は凄くモテているのに鈍感なお兄ちゃん。
まあ、これならお兄ちゃんとずっと一緒に暮らせるかな?
っと、自分自身の行動を棚に上げて安心し始めたころだった。
お兄ちゃんに魅了されたのは。
まあ、元々魅了されていたようなものなので、別にいいかっ!
それをきっかけに、やっと私はお兄ちゃんともし結婚できなくても、いえ付き合うことすらできなくてもいい、そう見返りなんて無理には望まなくなれた。
私が大好きなんだと、それだけで幸せなんだと自覚したので素直になる事が出来たのだ。
ああ、よかったぁ。
お兄ちゃんと昔の様に心安く話しが出来る関係に戻れて。
閑話の割り込みです。
次回 更新は変わりません