0052.沖縄へ
連休が訪れ、皆が待ちに待った沖縄行の時が来た。
両親もとても行きたそうだったが。
行きたいとは言いださなかった。
ごめんなさい、俺は心の中で謝る。
しかし、安全が保障されない旅でもある。
魔法の使えない両親に一緒にどう? とは言えなかった。
瑪瑙さんのおごりでもあるし……。
瑪瑙さんが自ら誘った妹達の事はもちろん遠慮なんてしないが。
悪魔とはどんなものだろうか?
大暴れしたときは、異世界にでも皆を連れて逃げようかとも思っていた。
そう思って練習していると、異世界を介すると遠距離移動が簡単なことが分かった。
修学旅行で行ったことのある札幌に難なく飛べた。
逃げる準備はOKだ。
そんな俺とは裏腹に皆さんは盛り上がっていた。
行きたくないか? と問われれば、そりゃあ俺だって行きたいが不安の方が大きい。
「なーなー、聖、このカッコどないや?」
「いいんじゃないか、美香。あっちはもっと暑いだろうし。その位のカッコで」
麻生さんは白を基調としたノースリーブなワンピースが良く似合い可愛くも大人っぽい色気を醸し出している。
「そう言う聖もなかなか大胆な恰好やで」
「美香さんには及びませんよ。ふふ」
「あっ感じ悪いわ」
瑪瑙さんも普段の少し野暮ったいっぽい恰好から思うより大きな胸を強調しているタンクトップにフレアなミニスカートにも見えるショ-トパンツに装いを変え眩しい美しさ。
妹はピンクのキャミにミニスカート。
結城さんは黄色いワンピースだけど大胆なカットが入っていて背伸びしている感じだ。
アンも普段着を持ってはいるけどほとんど見る事ない格好で、薄い青色の少し地味なワンピースは少し皆と趣向が違い年相応な感じだがとてもかわいい。
アン以外の皆の露出が多くて目のやり場に困るよね。
そうかアンは自分で選んだわけでは無く母さんが買って来た物だからかな?
「ねえ芽衣、どんな水着にしたの?」
「こんなのにしたんだけど」
楽しそうなのはほほえましくていいのだけど電車の中で水着を広げるなんて!
ちょっと見ているこっちが恥ずかしくなって来たんだが。
「キャー大胆!」
「杏だってそれ、すごいじゃない!」
「そうかなあ?」
「アンちゃんはどんなの?」
「アンは杏ちゃんのお勧めだニャ。でも泳いだことなんかないニャ。大丈夫かニャ?」
アンは楽しそうな皆の中で一人、不安そうで顔色も優れない。
「アンちゃん、運動神経抜群だから大丈夫だって」
「不安だニャ……」
空港への移動中の電車の中で姦しい事だ。
俺も気になって、つい聞いてしまうが、周りの視線も気にかかる。
俺は小心者なんだろうか。
皆遠出の旅行なのに荷物が少ない。
転移できることを伝えたら、要る荷物は要る時にと、俺の部屋までは大荷物を持ってきて置いてきた。
それなら、水着なんか部屋に置いておけばいいのに、などと考えていると空港が見えてきて飛び立つ旅客機も見えた。
アンは初めて見る飛行機に興奮気味だ。
「すごいニャ! 飛竜便なんか比較にならないニャ。大きいニャ。まるで伝説の白竜ニャ!」
ケイも何も言わないが見入っている。
白竜ってドラゴンかな?
異世界にはやっぱりいるのかな?
見てみたい気はするが、会いたくもないな。
空港へ着くと、待合室をスルーしてラウンジに案内された。
すげーなんか贅沢。皆がキョロキョロする中、瑪瑙さんは平然としてコーヒーを飲み始めた。
軽食や麺類も無料との事であったが皆ビビって瑪瑙さんと並んでコーヒーを飲んでいる。
「ほへー、やっぱり聖は金持ちなんやな。で、お父さんや他の門弟の方々は見なかったけど?」
「ああ、父上たちは先に行って準備してるよ」
大変だな瑪瑙家の方々。
こいつはすっかりバケーション気分ぽいけど。
「タカ、悪魔探索は夜になってからだ。それまで現場近くのリゾートで遊ぼう。タカとケイちゃんとアンちゃんは夜いつでも対処可能なように僕と待機していてほしい。後の皆は遊んでいてくれてかまわない。なんせ三人は、僕より遥かに強い稀有な存在だからね。期待してるよ!」
「任せるニャ」
「ああ、分かったよ」
「わたくしは、タカ様と共に」
なるほど悪魔祓い自体は聖を除いた面々で行って、我々はもしもの時の為にと言う訳か。
仕事が有る時はもうやばい事になってるのな。
「すると、ダンジョンに行ってるわけにはいかんか」
「済まんが、そうしてほしい」
早く終わって、しがらみ無く遊びたいな。
頑張れ瑪瑙家の諸君。
国内便なのでそう大きくはない旅客機だが何のトラブルも無く沖縄に着いた。
8人乗りの大型ハイヤーで悪魔が出たと言われる地域のリゾートホテルに乗り付け、プチセレブ感を満喫し、ホテル出てすぐ横のビーチへ集合する。
そうか、すぐに泳ぐつもりだったから水着をカバンに入れていたのか。
俺はテストも兼ねて自室に海パンを取りに帰って来た。
そして、一足先にホテルでパラソルとレジャーシートを借りて、ビーチに陣取り皆の到着を心待ちにしながらも、平常そうな雰囲気を出しつつ待った。
海がとても綺麗だ。
ターコイズブルーのどこまでも透き通るような色を眺めていると煩悩まみれな心が洗われていくようだ。
「お兄ちゃーん」
妹たちが、手を振りながら、駆けてくる。
洗い流されたはずの煩悩がそんな事は無いよと言わんばかりに湧き上がってきた。
ただの勘違いだったようだ。
妹と結城さんは中学生らしい体型で、少し背伸びした感のあるセパレートタイプの水着だ。
結城さんの方が何がとは言わないが少し大きい。
驚いたのは一番幼そうに見えるアンが最も大きかった事だ。
アンは着やせするタイプなんだな。
カラフルな感じのワンピースが可愛さをさらに引き出してる。
「皆可愛いよ、よく似合ってる」
そう言うと結城さんははにかんだ顔になって可憐だ。
そうそう、ケイは俺と一緒に設営しているうちに、いつの間にやら赤いワンピースの水着姿になっていた。
ケイは器用だなあ。
「ケイもよく似合っているよ」
「ありがとうございます」
多少ご機嫌が悪い。
ほめるのが遅かったからかな?
「やほー、タカ遅おなったなあ。どや! 似合うやろ?」
「タカ仕方がないから、見る事を許してやるよ」
は~! 二人は何と言っていいか、大人だ。
麻生さん、すらっとした体に似合う露出が多いタイプのワンピース。
すらっとしているのにちゃんと胸のふくらみがあるところがセクシーだ。
瑪瑙さんは、サンバイザーを被り、アスリート並みに鍛えた体を大胆なカットのビキニに包みその締まった体を惜しみなく魅せる。
自分に自信がある事がありありと解るそんな水着だ。
俺は二人に向かって。
「凄くエロいぜ! グッジョブ」
と親指を立てグッドのサインを出してやった。
「タカ、そんな、エロいなんて! ほんまか?」
「タカ~、女性に対してエロいはないだろう」
そう言いながらも二人は嬉しそうだ。
なんとなく反応が予想と違う。
「(ぐぬぬ、私たちにはエロイって言ってくれなかった)」
いや、妹よ中2がそんなにエロくてはいかんだろう。
高1でそんなにエロい瑪瑙さんがおかしいんだって。
そして、エロいって言ってほしいのか?
麻生さんも瑪瑙さんも事実エロいが、本来は受け狙いの発言だよ今のは。
はい、皆さん普通はいくら受け狙いでも、女性にエロいと言ってはいけません。お兄さんとの約束だよ。
次回更新は火曜日21時になります、よろしくお願いいたします。
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