0049.ハメられた
俺は街道をアンスラルドに向かってひた走っていた。
途中ハルパより小さい町や村が有ったが、どこで聞いてもアンスラルドはもっと向こうとのことだ。
そして、馬が引いているのは馬車だと思っていたが。
なんと、車輪が無く浮いていた!
速度もびっくりするほど早い。
“ぱっかぱっか”ではなく普通に“ばっからばっから”って感じで、飛ばしてるやつは、もう“どどどどど”って感じで、競馬のごとくの速度で荷台を引いていた。
魔法文明おそるべし、すでにエアカーだ。
サスペンションで一儲けとはいかないらしい。
もちろん、すべての馬車が浮いているわけでは無くよく見れば車輪の付いた馬車も沢山あって、それらは普通の速さで動いていた。
まだかなと思って走っていると巨大な街壁が見えてくる。
おお凄い建造物だ! こんなに遠くからでもこんなに大きく見えるなんて! 感動するなあ。
街壁の中だけじゃなくて外にも大きな街が広がっている。
本当の大都会だ。
俺たちが住んでる街より人口が多いかも知れない。
歩いている小さいおじさんに聞くと、あの街壁の中がアンスラルドだと言っていた。
あれはドワーフなのだろうか? 耳がちょっと尖っている。
異世界感が増して来たなあ。
今までは普通の人ばかりで獣人やエルフなどいなかったもんな。
アンが居なければ、亜人達はいない世界だと勘違いしているところだった。
農家は人が多いのかなあ?
多少走るのが早いと言っても手加減し、周りに違和感をあまり与えないように走ってきたので、思うほど遠く無かったはずだ。
街壁の近くまでたどり着いてみると。
街壁の入り口は、小さいトンネルと言うか、入り口がずらっとまるで駅の改札の様に並んでいて、そこで身分証明と入街税の支払いをやっているみたいだった。
乗り物など大きい物には別の入り口があるようだ。
人用だけでも入り口は100やそこらはあるな、
一つの入り口に20人くらいは並んでいて、そこには獣人やエルフらしき姿も見える。
エルフもいるんだな。
やはり美人なのだろうか?
楽しみだ。
さて、身分証明かどうしようか?
その辺りにいるおじさんに聞いてみた。
「あの、すみません。ちょっと聞いてもいいですか?」
「ああ、いいよ。暇だし」
「身分証明書とか持ってないんだけど、どうしたらいいかな?」
「なにっ! なんで持ってないんだ? お前何処から来たんだ? 外国か? 持ってないとアンスラルドには入れないぞ」
「どうすれば発行してもらえますかね?」
「買取商へいけ! ああ買取商はこの国の役所のようなもんだ。買取商で、期限切れによって刻印の消えた硬貨を売れば、税金を払う意思があるとして発行してもらえるぞ。まあ、直近の十日以内に殺しや盗みを働いていないか魔法で調べられるけどな。この近くで買取商があるのはハルパの町か、オボロの町だぜ」
「ありがとう。助かります」
そう言っておじさんに石貨を一枚握らせた。
「にひひ、またなんかあったら聞きな」
オボロの町はどこか分からないからハルパの町に戻ることになるな。
持ってる硬貨を見てみるが、多少薄くなっている物はあるけど紋章の様な刻印が消えている物はない。
金貨以外の通貨は一年で期限が切れて6割から8割で買い取ってもらうらしい。
まあ、2割から4割が税金と言う事だな。
しかし、フレッドの知識はちぐはぐだな。
知らない事が多いぞ。
吸血鬼にされた時に、それまでの行動やら生い立ちやらの記憶が消された様だから、いろいろな知識も間違えて消えたのかもしれないか。
一旦、ダンジョンに戻るか。
俺は疲れたよ、もう。
ダンジョンに行くと瑪瑙さんが飛ぶようにやって来た。
「おかえりー、さあ第二層に行こう!」
見るとスライム以外の魔物がほとんど倒されていた。
「兄ちゃん、お帰りニャ。どうだったニャ?」
「ああ、アンスラルドの街壁前まで行ったんだが、身分証明が出来そうにないんで帰って来た。そちらはどうだ?」
「はい、こちらは問題ありません。わたくし一人で問題ないです」
残り三人はそれぞれにスライムを攻撃している。
槍の使い方が様になって来てる気がするな。
そろそろ蛇だなやっぱり。
「じゃあ、三人で第二層にいくか」
「待ってました」
瑪瑙さんうれしそうだ。
「だが、この前みたいのは勘弁してほしいな」
「ああ、十分反省した。任せてくれ」
ほんとかなあ? 心配だなあ。
「急急如律令、式神よ我の命に従い、仮初の命を宿せ、身代わり式、地、空、探」
「急急如律令、わが前の邪を滅せよ。降魔光」
やはり、瑪瑙さんは強いし経験豊富だ。
レベルアップ時に休みさえすれば俺達よりスムーズに素早く対処していく。
普段はポンコツのくせにムカつく。
まあ、強くなることに凄く貪欲なんだろうな、他の事はあまり考えていないのだ。
「それっ! ファイヤー、ファイヤー、ファイヤー」
ああ、魔法だけでゴブリン倒しちゃった。
でも陰陽師なのに炎じゃないんだな。
「ふう、もうレベルアップだ」
出来るだけ複数いる魔物を選んで戦っているが、退治数は瑪瑙さんが一番だ、良く体がもつな。
魔物からの魔力吸収量が違うからかな。
でも、このままじゃ追い越される。
俺も気合入れなくちゃ。
おっ俺の体も熱くなってきた。
久しぶりのレベルアップだ!
もう一度瑪瑙さんがレベルアップした所で帰る事にした。
部屋で一休みしていると元気を取り戻した瑪瑙さんが手を伸ばしてお腹の前で繋ぎ、胸を両二の腕で挟み込んで上目遣いで迫って来る。
上のジャージをぬいだVカットのシャツの胸元は大きく開くことで、むっ胸の谷間が誇張されてすっ凄い!
なっなんだ? なな何をする気だ?
やばい、久方ぶりに、欲望があふれてくる。
しずまれ、しずまれ!
「なあタカ、今度の連休に沖縄へ降魔に行くんだが一緒に行かないか。もちろん、皆も一緒に招待するよ」
俺はすっかり興奮しいろいろ聞き漏らす。
えっ沖縄だって、白い砂浜、水着で戯れる美女たち、行きたい!
いやお願いしてでも連れて行ってほしい。
だが、余り食いついても駄目だな。
「付いて行ってもいいぞ」
無難に答えた。
「そうか、付いて来てくれるか。ありがとう、うれしいよ、悪魔が出るって話だったから怖かったんだ」
えっ、今の瑪瑙さんが怖いっていったい、しまったハメられた。
こういう交渉でも瑪瑙さんの方が一枚も二枚も上手だった。
と言うか、考えてみれば大した交渉は無かったな。
俺がちょろかっただけのようだ。
次回更新は金曜日21時になります、よろしくお願いいたします。
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