0044.異世界観光
もう、起こってしまったことで、余り親に心配を掛けてもいけないので。
瑪瑙さんは、疲れて帰った事にし、皆で夕食を食べ即ダンジョンに戻った。
あんなことが有ったのに皆へこたれないなあ。
瑪瑙さんは見たところ正常そうだったので、ゆっくり休むように書いたメモを残してきた。
結城さんも、そろそろ魔法を使える程の魔力になってきたようようなので。
俺は妹と結城さんの二人に魔法を教える事にした。
その結果二人とも、火魔法などをを覚える事に成功し、結城さんは水魔法が得意そうで電気魔法も使える器用さをみせる。
妹は治癒魔法にも適性を示し、それらを見ていた麻生さんはまだ電気魔法が使えないので少し複雑な笑顔だった。
その後スライムを数体を槍で突き回すと、結城さんがレベルアップの兆候を示したので切りもいいし家に帰ることにした。
次の日、瑪瑙さんは朝早くから起きて元気そうにランニングに出かけて行った。
ランニングに行く前に
「おはよう、タカ。昨日は倒れちゃって迷惑かけたねえ。つい調子に乗っちゃって、ホント悪かった。ごめんね」
死にかけたとは思えない明るさで悪びれも無く言った。
「おはよう。まあいいですけど、個人の体調まで分かりませんからね? レベルが上がるときは必ず休憩を入れてくださいよ!」
「分かってるって、これからは気を付けるよ」
軽く応えて笑顔で出かけて行った。
あれは、懲りてないよねきっと。
「はあっ!」
ため息が出るぜ。
まあ何事もなく復調してよかった。
「あれっ母さん、みそ汁の味変えた? この味も美味しいね」
「あら気づいたの、今朝のお味噌汁はケイちゃんが作ったのよ」
「へ~、ケイ美味しいよ! ありがとな」
「はい、喜んでいただいて、わたくしとてもうれしいです」
それにしても魔力で物理的に干渉できるようになって間もないのに凄いな。
おや、他の女性陣が半口になってマジか~! って、顔になってるよ。
「アンもこんな味が出せるように頑張るニャ!」
アンは素直だね~、いい子だ。
それに比べて、他をどうやって出し抜こうか考えて悪い顔になってる彼女達にはアンを見習ってほしいね。
「お母様、わたくし、これから朝食を担当させていただけないでしょうか。わたくし、寝ることが出来ませんので、朝早いのは全く問題がございません」
「じゃあ、毎日交代にしましょうか、私の日に手伝ってもらってもいいから」
母さんも、朝作らなくなってしまうと、そのままずるずるケイに全部頼ってしまいそうだから折衷案を出したな。
「でも、慣れるまでは私の手伝いをお願いね」
「はい、分かりました。お母様」
「さて、今日は午前中ハルパの町を観光するか? 町中だけなら大丈夫だろうきっと」
皆根詰めすぎ!
なので、少し息抜きもさせないとね。
「えっ良いんですか? やったー! 異世界の町だー♪」
結城さんが一番に喜びの声を上げる。
「わたくしも興味が有ります」
おっと、ケイもか? 麻生さんも騒ぎだす。
「うち、お昼食べて帰りたいなー。でもお金とかないんやろう? 残念や。異世界料理興味あるわー」
「いや、あっちのお金なら結構あるよ。じゃあ食べて帰るか」
「やったー、お大臣様やー♪」
「異世界メシー♪」
「異世界メシー♪」
「やっふー♪」
変な踊りを始める麻生さん、結城さん、妹の3人。
そんなにうれしいかなー? 美味しいかどうかも分からないのに。
「下手したらお腹壊すぞ? 日本人は海外で食べてもお腹壊すくらいなんだから」
「その時は、タカにお願いや。治癒できる様になったんやろ」
麻生さんはお気楽に言うが。
「治せるかどうか分からないっちゅうに」
「銅貨二枚も有れば全員食べられるニャ。でも、ここのごはん程美味しくないニャ」
「異世界で食べるのがいいのよ!」
妹よ、お腹痛くなっても泣くなよ。
「僕は、異世界がまず飯なら帰って食べたいな。でも皆には付き合うよ」
瑪瑙さんは、相変わらず素直じゃない。
「きっと、まずいって程でもない筈ニャ。あの世界には皆とほぼ同じに見える基人の方が多くてアンの様な亜人は少ないニャ。たぶん基人の味覚は皆と似てると思うニャ」
「なら、安心かな?」
瑪瑙さんも納得したようなので異世界外食が決定した。
「じゃあそう言う事で、アンの家に転移するぞ」
「はい」
俺は前盗賊に絡まれたときのように外見で舐められても何なので、軍服に革ジャンに着替える。
ジャージの方が身軽でいいのだが仕方ない。
皆と違う格好だけど仕方ないよね。
「へー、ここがアンちゃんの家かー。ほっとするいい家ね」
「杏ちゃんありがとうニャ」
「ほたら、外に出てみようや!」
「賛成です外を歩きたいです」
麻生さんも、結城さんも、性急な奴らだな。
「では、ぶらついてみますか」
外に出てみる。
前に来た時にはよく見なかったが道は広い、三から四車線は有りそうな道だ。
二本ほど石を引いた舗装になっていてどうやらそこを馬車が通るみたいだ。
町のはずれなのか人も馬車も少ない。
「うわー凄い!」
「異世界っぽいです!」
「へー! 違うもんだな~」
町の様子は日本の様子とまるっきり違うので妹達は感嘆の声上げた。
「ちょと寂し気やな?」
まあ、この辺は町の外れっぽいからな。
「あっちが、繁華街ニャ」
「では、そっちに向かって歩こう」
俺たちはよそ者丸出しでキョロキョロしながら歩いていく。
「アンちゃん。例えばきれいな建物とかないの?」
妹は観光気分丸出しだ。
「教会とか綺麗ニャ」
「冒険者ギルドとかないの?」
結城さんはぶれない。
「聞いた事がないニャ」
「ガックシ」
ガックシって麻生さんの影響かな?
「職業斡旋所ならあるニャ」
「そこにかける」
「アン、何処にあるか分からないニャ」
「えー!」
「食事の時にでも聞いてみよう」
「よろしくお願いします」
「僕ら、周りから、じろじろ見られてないか? 居心地悪いんだが」
瑪瑙さんが、不安そうだ。
即座に麻生さんが突っ込む。
「キョロキョロしながら歩いてるからやないか?」
「違うニャ! 兄ちゃんのカッコは超お金持ちっぽい格好ニャ。それも目立つニャ。でもアンたちはジャージニャ。こんな服この辺りじゃ見ないからすごく珍しいニャ。目立ってるニャ!」
「えーそれ嫌だ~! 危険そうじゃない。お兄ちゃん服買って!」
妹様がねだってくるんだが。
「あのなあ、この世界じゃ服は高いんだぞ。なんで、俺がそんなにお金持ってるって思う?」
「私を、舐めちゃいけないね。何年妹をやってると思うのさ? お兄ちゃんの落ち着きようで結構な大金持ってることが丸わかりよ。なんで持ってるかは知らないけど」
ガーンそんなに分かり易いのか俺。
「ケイちゃんいつの間にか周りと同じような格好してる、お兄ちゃんとケイちゃんだけずるいー」
「そうだ、ずるいぞタカ」
「うちも、服ほしいわー」
「お兄さんこの辺を歩いいてても、気にならないダンジョンでも着られる服が欲しいです」
妹、瑪瑙さん、麻生さん、結城さんの順に俺を非難してきた。
これは……多勢に無勢だな。
「あー、分かったよ! 買ってやるよ! 冒険者風の装備が居るんだな?」
皆がうなずく。
「ちょっと帰ってくる」
俺はお金を取りに部屋へ帰った。
「うちも、応援ほしいわー」
「お兄さん、なろう、でも底辺にならない位の応援欲しいです」
次回更新は明日21時になります、よろしくお願いいたします。
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