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0041.畑の広がる道を

 走っていると暗い林の中を抜けるように道が続いてる区間が見えてくる。


 その林に入っていき、周りから見えにくい場所になると、数人益体な感じの男たちがぞろぞろと出て来て道を塞ぐように立ち並んだ。


 こんな奴らが出てくるなら、皆に合わせてジャージとか着てくるんじゃなくてフル装備で来ればよかったかな? 

 まあいつもの長剣は腰にぶら下げてはいるけど。


 この程度ではひるまないのか? 

 勇気があるな~。


 並び立ちふさがっている奴らも今の俺と大して変わらず、皆甚平に毛が生えた程度の服装で防御力など皆無っぽかった。

 たとえ俺が弱かったとしても、長剣で切り付けられれば死人が出る可能性は高いと思うんだが。


 魔力量も大したことはない。

 あれでは身体強化もままならないであろう。


 負ける要素が見当たらない。 

 しかし、皆一様にいやらしい笑みを浮かべており、こちらを舐めている感じがひしひしと伝わってくる。


 盗賊が出るとは、アンの言った通りだな。

 なかなかに引きがいい。

 手前で減速しゆっくり歩きながら、盗賊っているもんだなっと感慨にふけっていると。


「おい、そこの子供止まりなさい。ここを通ると言うのなら、通行料を置いていけ」


 と割と優しい感じで声を掛けてきたが、探知では悪意にまみれているように感じる。

 キンッと周りの空気が張り詰める。


「(くっくっく。どこの田舎者だこいつら)」

「(山深い方から来たとは言え大した魔物などほとんどいない田舎なのにこれ見よがしに体躯に見合わない長剣なんぞつるしてるぜ)」

「(あんなの持っていれば襲われないとでも思っているのだろ? どう見ても扱えそうには見えないんだがな。だが金持ちには違いねえぜ。相手がガキとはいえ逃がさないように気を付けろよ)」


 聞こえないように話しているんだろうが俺には丸聞こえだ。

 魔物などいない田舎? 


 普通、魔物がいなければ安全なので発展するんじゃないのかな?


 そして、周りの男たちは俺達が逃げられないように囲いを詰めてくる。


 俺の方が強い事は解るが、その威圧感に恐怖と高揚を感じざる得ない。

 魔物とはまた違う、やく〇の事務所で周りを囲まれた時以来の、いやそれ以上の緊張感だ。

 俺は耐えきれず、つい相手をあおるような態度で対応してしまう。


「それは、お幾らですか?」


 くっくっく


 周りの男たちから失笑が漏れる。


「持ち金と、着ている服、持ち物全てだ!」


 アンは心配そうにこちらを見ながら小声で。


「にいちゃん、(こいつら盗賊ニャ)」

「(分かっているよ)」


 こんな奴らに気迫で負けてたまるかと俺は強気な顔で。


「それは、困りますね。そんなには払えませんね」


 と答えた。


「お前はバカか? 命が惜しければ置いて行けと言ってるんだよ!」


 ばっはっは!

 わっはっは!

 あほだこいつっ!


 と、周りの奴らは爆笑している。


「いやです。と言ったら?」


 どうせなら、問答無用で襲った方が速いだろうに。様式美か? 

 まあ、その時は俺も容赦しないが。

 前に立つ男はピクリとまゆを上げ。


「こうなるんだよっ!」


 と石でできた包丁のようなものを振り上げた。

 それを合図に他の男が数人アンに襲い掛かる。

 俺は剣を抜き男の持つ石包丁を切り上げ剣先を目の前に突き付けた。


「ひいっ!」


 本当は峰打ちでもしてやろうと思ったんだが、この剣には峰が無く両刃だったので出来なかった。

 剣を使う技術などないが、ダンジョンで鍛えた身体能力による速さが有れば、まるで剣の達人の様に見せる事も出来るようだ。

 パワーでのごり押しとも言うが。


 男が周りを見ると、すでにアンが数人殴り倒している。


「くっ、獣人だったのか!」


 そう言い男は一歩下がって両手を上げた。


「分かった! 降参だ。自由に通ってくれ」


 だが、こういった輩は無罪放免だと再犯率が高い。

 ペナルティを科しておいた方がいいかな?

 俺は男を睨みつけながら。


「襲っておいてそれだけか?」


 ぐっと刃先を顔に近づけると。


「ひっひいっ! わっ分かった。これで許してくれ。皆も出せ!」


 そっと銅貨を一枚差し出して、男たちは散開し俺たちの前を開けた。


 おや、銅貨には黄色い紋章の様な物がゆらめいているな。

 金貨とは違うぞ? 


「通ってくれ」

「アンお金を集めて先に行ってくれ」

「はいニャ、にいちゃん」


 アンがさささっと、お金を集め先に行く。


「もうこんな事するんじゃないぞ!」


 俺はそう言ってワザと無防備に立ち去ろうとした。


「バカめっ! 隙だらけだ」


 男は後ろから殴りつけながらそう言ったが。


 俺は奴らの悪意が消えてない事を探知で知っていたので、振り向きもせずスッと横によけて、すれ違い際に男の左手の小指を切り落とした。

 やはりこの剣はいい剣だ、豆腐でも切るようにスパッと指が斬れる。

 と言うか、指ぐらい他の剣でも切れるのかも?


「うぎゃあ、痛い、俺の指が、俺の指が」


 転げまわって痛がっている男の顔へまた剣を突き付け。


「で、言い残すことは?」

「しええっ、これで許してくれ!」


 男はお金が入った袋を俺に投げつけ一目散に逃げていく。


「バッ、化け物だー!」


 化け物とはまた言ってくれるな。

 俺のナイーブな心はズタズタだぜ。


 周りの奴らもそれを追って逃げて行った。


 逃げもせず周りを囲めば探知が無くても再度襲ってくるのが丸わかりなんだが。

 盗賊と言うよりは田舎の不良みたいな連中だったな。


 袋の中には銅貨二枚と貝貨と石貨が数十枚、細かいお金が無かったので助かったな。

 入っている硬貨は全て濃さこそ違うが黄色く揺らぐ紋章の様な物が浮かんでいる。


 色の濃さは何だろうか? 

 なるほど、使用期間か!

 薄くなっていって消えると使用不可なんだっけ。


 しかし、結果だけ見ると俺が悪者っぽいじゃないか。

 ちょっと罪悪感を感じるのだった。


 と言うかやり過ぎた。剣を使った対人戦を経験したかった、と言うのも少しあったが。

 流石に、盗賊の殺意に近い悪意に晒されるのは初めてで、変な興奮を抑えられなかった。

 これからはもっと自重することにする。


 少し行くと家が増えてきて、石の壁で窓も大きいそれでいてカラフルな屋根の家が道沿いに固まってある。

 石畳の道もきれいで、欧州の農村の美しい写真を見てるようだ。


 走るのをやめて、近くにいるおじさんに尋ねてみた。


「ここは、どこですか?」


 おじさんは片眉を上げ怪訝な表情で俺を見回す。


「ほお、立派な剣じゃの。まだ子供に見えるが剣士さんかえ? こんな魔物もいない片田舎に珍しいな。ここは、バーグの村じゃよ」


 また魔物のいない田舎だと言ってるな。


「魔物がいなければ住みやすいはずでは? 何で田舎なんですか?」

「おまいさん、本気で言っているのかね。良くそんなで旅なんぞしとるの。魔物を倒すのが最も素晴らしい仕事じゃろうが。優秀な者は最前線に行く。魔物のいない地域なんぞ魔力の少ない出がらしばかりじゃ。発展などとても望めんわい」


 なるほどね。かなり魔力だのみな社会なんだな。


「ご親切にありがとうございます。ちなみにアンスラルドは、まだ遠いですか?」


「おまいさんらいったいどこから来たんじゃ……。ふう。この先のハルパの町の先がアンスラルドじゃ」

「ありがとう。はい、これっ」


 俺は石貨を親指ではじき話を聞いたおじさんに飛ばした。


「おっとっと、よっしゃ! 気を付けていきな」


 キャッチした石貨を見て、よい笑顔で手を振りながら見送ってくれた。

 ゆっくりと走り出しながらアンに話しかける。


「ハルパと言うとアンの故郷か?」

「そうニャ、アンは生まれてからずっとハルパで暮して来たニャ」


「どうする、辛いなら避けて進むか?」

「そこは、気にしなくていいニャ。逆に家が有るので様子が見たいニャ」


「そうか、家まで走るか?」

「はいニャ。アンが案内するニャ」


 まだ遠そうなので、少し速度を上げて走り出した。

 道沿いにはずっと家が有り魔物などの被害がなさそうに見える。

 戦争も割と少ない世界なのかな。


 町が近づいてくると、アンは左斜めの道に折れて入っていき町西部のはずれの一軒家に到着した。


「ここがアンの家ニャ」


 石造りの平屋で古くは有るが落ち着いた佇まいでいい家だ。


「ただいまニャー」


 と言ってアンが入ると何故か中から声がした。


「誰だうちに入ってくるのは?」


 知らない人が住み着いているのか?


「お前は誰ニャ? ここはアンの家だニャ!」

「アンだとう?」


 髭もじゃの不機嫌そうなおじさんが尻を掻きながら、家から出てきた。


「フーッ!」


 アンがおじさんを睨んでいると。


 おじさんは俺をちらっと横目で見てからアンをまじまじと見た。


「ああ、誰かと思えば! お前はここの子のアンじゃないか! 生きていたのか? そりゃあ、すまんかったなあ。お前らが居なくなって三ヵ月だ。もう帰ってこないと思ってな。分かった、悪かったって。すぐ出ていくからそんなに睨むなや」


「早く出るニャ!」

「ちょっと待て、荷物をまとめるから」


 おじさんはそう言って家に入っていき、布に荷物をまとめ出てきた。


「待たせたな。俺は娘の家に戻るから心配はいらねえよ。生きていてよかったな! じゃあな」

 おじさんは片手を振りながら去っていった。


「びっくりしたニャ! 兄ちゃんわが家へようこそニャ」

「皆さんアンの小説にようこそニャ。アンの小説は皆さんの応援を心待ちにしておりますニャ」

次回更新は明日21時になります、よろしくお願いいたします。

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