表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/261

0001.2.ミルス

結構長くてデコボコと歩きづらい登り坂の洞窟を四苦八苦しながら上っていくと、出口が見えてきた。

外から日が差していないところを見ると夜なのだろう。


洞窟の出口を出たところでザバァッと“水”をかけられた。


「ひえっ、冷たい! 何なんだ!」


俺は髪の毛から水が滴るほど水浸しだ。甚平が体に張り付いて動きにくいし体が透けて見える。

周りに沢山何かがいるようであわただしく動き回る音がする。

しかしそれは布の擦れ合う音ではなくガシャンガシャンと金属の当たりあう音だった。


「おかしい? こいつ何故に平気なんだ! 聖水が効かないとは!」 


焦った感じで余裕のない声で騒ぐ女の声が聞こえる。 


人か? 

人がいるのか? 


俺は人との遭遇に安堵した。


ん? 

聖水? 


しかしさっきかかったのは『聖水じゃないただの水』だとまた脳内の何かがつぶやく。


『聖水だとただじゃすまない』


って。変な話だな? 

ここは少し前まで吸血鬼たちがいた洞窟の入り口だぞ? 


脳内のなにかが呟くように吸血鬼にただの水をかけても意味はないはずだ。


「ミルス様、生体反応があります。アンデッドではありません」


アンデッドじゃない? 

ああ、吸血鬼ってアンデッドだっけ。

すると俺はなんだ? 


「アンデッドじゃない? すると吸血鬼の眷属ではないのか?」

「はい、そうだと考えられます。攫われたばかりの下民ではないでしょうか」


下民ってなんだ? 

ここは日本じゃないのか? 

なんだ? 

あの薄着ナイスボディの女の人は? 


そこにはプラチナブロンドを短く揃え黒いヘアバンドをした柔らかい優しい感じなのに震えるほどの物凄い美人が居た。


ズキューン! 


頭を打ちぬかれたような衝撃がはしる。

俺は現在の状況も忘れ彼女に見惚れてしまった。


「それは君、すまない事をした。誰ぞ彼を近くの村まで送って差し上げろ」

「はっ私が行きます」

「ふむ、アルバ頼んだぞ」

「はっミルス様、喜んで。ではいくぞ! そこの君」


俺がミルスに見惚れて呆けている間に。何が何だか分からない内に俺の扱いが決定したようであった。


俺の意思は全く聞かれないままだったのは何だろう? 

そう、同じ人だとは思われていない。

これが一番しっくりくるな。


アルバさんに連れて行かれた所は、あばら家が並ぶ小さな村だった。

アルバさんの有無を言わせぬ勢いについ何も聞かずついてきてしまったが、これではこんな辺鄙な所に置き去りにされてしまう! 

何とかしなければ! 


「あっ、あの」

「じゃあな、息災に暮らせよ!」


俺の言葉など全く聞こえない風に言葉をかぶせ、目も合わせずアルバさんはそう言うと。

こちらを振り返りもせず彼は去っていった。


えっええ! 

それだけですか? 

俺はここがどこかもさっぱりわかりませんよ。


とりあえず周りを見回してみると、村の外の見えづらい所にに人影が何人か見える。


一人でこうしていても仕方がないのでとりあえず話しかけてみようと思い近づいて行った。




暗いキャンプ地で松明に火を点けるように指示を出しながらも、私にはどうしてかさっきの彼が気になっていた。

なので、ミルスは彼を送っていき帰ってきたばかりのアルバに問いかけた。


「なあ、アルバ、さっきの御仁だが、本当に下民だったのか?」


下民とは犯罪を犯してはいるが一時処分を保留にされている人たちだ。


元が犯罪者なのでまともな扱いはされてはいない。

アルバは松明に火魔法で火を点けながら私の問いに答える。


「ミルス様、ここは封鎖されていて我々以外にはここに住むことで釈放された元囚人の下民しかいませんよ?」

「だが、吸血鬼に攫われたのであればその限りではあるまい。悪人には見えなかったが?」


仮にも聖女である私にはある程度の実力者の善悪を感じることぐらいは出来るのだ。

彼には悪意どころか聖なる意思すら感じたのだが? 


「そうでしょうか? 下民の服装に見えましたが」

「ふむ、なんと言うか、高貴な、と言うか、神性? みたいなものを感じた気がするし、ちょっとカッ」


はっ! 

男性がカッコよかったなどと聖女がみだりに言うものではない。


「いやいい、忘れてくれっ」


ミルスは自分の顔が熱くなってきていること感じ、横を向いてため息を漏らす。


「ふぅ~」


ミルスはアルバと話しているうちに自分に自信が無くなっていくのを感じる。

所詮田舎の聖女。

私のつたない能力じゃ分からない場合も往々にしてあるのだ。


久々に話す若いちょっと好みの男だったから勘違いしたのだろうか? 

情けないにも程がある。


がっくりと落ち込んでしまうのであった。


「? はあ?」


アルバはいぶかし気な表情で白髪の混じった自慢のあごひげを摩りながら言った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
上記の評価欄【☆☆☆☆☆】↑↑を押して応援して頂けると頑張れます!
いつもお読みいただき、ありがとうございます。

小説家になろう 勝手にランキング

上記↑ランキング↑も毎日クリックだ!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ