0037.内密なはずの事情
「あらあらあら、沢山居るのね! でも夕食の材料は有るのよ。食べて行ってくださいね」
母さんは帰ってきて、人数の多さに驚きながらもこう言った。
俺は母さんが帰る前に皆に夕食どうするのか聞いたら、皆食べるとのことなので、母さんにはちゃんとメールしておいたんだがね。
「御母堂、僕が手伝います」
なんか、張り切ってるな瑪瑙さん。
料理できそうな雰囲気無いんだが、大丈夫なのか?
「私も手伝います!」
負けじと結城さんも立候補する。
まあ、女の戦いもあるよね。
「じゃあ頼もうかしら」
母さんは、うれしそうだが手間が増えるんじゃないだろうか?
俺が補助に入った方がいいのかな?
でも、狭い台所に俺まで入ると身動きできないか。
瑪瑙さんと結城さんがそう言って手伝いに行くと、麻生さんは盛大にまずいと言った顔になっていた。
今まで手伝ったことないものね麻生さん。
妹も手伝わないが何喰わない顔である。
アンはキョトンとしており、ケイに至っては。
「体さえあれば、わたくしも手伝うのに。恨めしい」
と暗くつぶやいていた。
いや、ケイそれ怖いから止めて。
だが、ガッシャーン! と盛大な破滅音が何度か台所から響いてた。
やはり俺が手伝うべきだったのだろうか?
母さん苦労掛けますごめんなさい。
麻生さんはあからさまにほっとしていた。
そして、出てきたものはカレーだった。
唐揚げやら、肉じゃがやら、聞こえていた気もするが空耳だったのであろう。
手伝いに行った二人は赤くなって下を向いている。
「くっ、料理がこんなに難しい物とは」
瑪瑙さん、本気で悔しそうだが、本当にやったことなかったんだね。
初めてなら、出来なくて当たり前だとは思うが。
「いつも通りに出来なかった」
結城さん、あれかな。
初めての台所だし、母さんとも瑪瑙さんとも初対面だしあがってしまったのかな?
「やはり、わたくしがやれれば」
ケイ、幽霊なのが辛そうだ。
幼い二人の方が自信ありげで、瑪瑙さんが雑ぜくったのかな。
ケイは見ていただけなんだけどね。
本人談、世界でも指折りの降魔師である瑪瑙さんは料理などしなくてもよかったのだろう。
「タカあなたは料理出来るの?」
怖い怖い! 睨みながら瑪瑙さんが聞いてくる。
「俺?」
俺はちょっと、とぼけてみる。
「そうそう、あなたよ」
「俺は伊達にあちこちで手助けしてないよ、食堂の厨房の手伝いなんかお手の物さ」
と、俺は明言を避ける。
嘘は言っていない。
「くっそんな馬鹿な!」
瑪瑙さんが、顔をしかめる。
おや、女性陣が皆焦った顔になったぞ。
「お兄ちゃんは料理禁止だかんね。お母さん私に料理教えて」
妹が台所に立っている姿なんて見た事ないぞ。
「いいわよ、ついでに皆習う?」
母さん、豪気だなあ。
皆に教えるって気が遠くなりそう。
「はい!」
だが、皆いい返事だった。
後日分かることなんだが。
実はアンが見事な手際で手伝いをこなし一番上手だった事が判明した。
「なんで皆当たり前のことが出来ないニャ?」
アンは、平然と言い放ち、皆に止めを刺すことになる。
「アンちゃんも料理禁止」
「そんなの横暴ニャ。アンはこっちの料理とか知らないニャ。だから楽しかったニャ。アンもやりたいニャ」
と、妹とアンの間に攻防があったとか無かったとか、楽しい我が家だ。
食後皆でダンジョンに向かう。
「楽しみだわ! どんな魔物が居るのかな?」
妹の話だと結城さんはラノベの廃読者でかなり読みふけっていたそうだ。
「えっあれがスライム? 想像より気持ち悪い。でもやる。えいっ! えいっ! えいっ!」
結城さんは、妹と麻生さんの三人は槍でスライムを小突き回す。
「ふわっはっは、これを見よ」
瑪瑙さんは、料理のうっぷん晴らしに蛇にスケルトン狼さえも浄化札の一撃で仕留めて回っていた。
「そんなにお札使っても大丈夫なのか?」
「僕は自分で書くから大丈夫さ。こんな時も有ろうかと書きだめていたのさ~、って眠い、体が熱い」
瑪瑙さんはレベルアップしたようだ。
見ると結城さんもふらふらしていたので。
二人を連れて帰る。
「ケイ、アン後を頼んだ」
「お任せを」
「頼まれたニャ」
ベッドに寝かし20分もたつと目覚め、やる気に燃えていたので。
連れて行く帰るを、今日はダンジョンの往復を繰り返すこととなった。
妹と麻生さんがレベルアップを迎えるころ今日のダンジョン攻略を終わりにした。
「こんな遅くまでやってしまったけど、二人とも時間は良かったのか?」
妹と麻生さんは、もういつもの事なのでいいけど、瑪瑙さんと結城さんは初めてだし。
「はい、今日はお泊りの予定なので」
結城さんは準備がいいねえ。
「僕は、仕事上夜いないことも多いのでね。まあいろいろな調査をやってる事になってるよ」
瑪瑙さん、そんないい加減でいいのか?
「なるほどね、まあ皆風呂にでも入ってきなよ」
「じゃお先に、お兄ちゃん」
妹は皆を風呂場に案内する。
「すみません先に浴びさせてもらいます」
うん、結城さんは素直ないい子だねえ。
男子諸君の憧れハーレムみたいに見えるが、そんな良いもんじゃあないなこれは。
気疲れするよ。
かっぽ~ん!
「ふわ~いきかえる~。風呂はえ~な~。命の洗濯や!」
「(ババ臭い女だな)」
「瑪瑙さん! 何ぞ言うたか?」
「いえ、別に何にも。いい湯だな~」
ぼろな貸家に似合わない大きな浴槽に皆で浸かっている。
風呂に浸かる彼女らの肌は桜色に染まりえも言えぬ色香が風呂に充満していた。
「杏ちゃん、広いお風呂ね? 気持ちいわ」
「両親が裸のお付き合いは大切だって言ってお風呂の大きな家を探したの」
「ユニークな両親だね。僕は温泉以外で多人数でお風呂って初めてだよ」
ざばーっ!
麻生さんがちょっとスレンダーだが結構凹凸のある躰で男みたいにがばっと湯船から出てアンに手招きをする。
「なあ、アンちゃん。体あろうたるわ! こっちきいや」
「美香姉ちゃんありがとニャ」
ざばっとアンも湯船からでる。
お風呂嫌いのアンも最近はすっかり抵抗するのを諦めたようだった。
その姿は、背も低く幼いが胸は思いの外大きい。
「アンちゃんって結構発育いいなあ、うらやましい!」
杏子は自分のつつましい胸に手を当てながら言う。
だが中学生なら別に小さい方では無い位にはある。
「にいちゃんに助けてもらってから大きくなったニャ」
「まさか! お兄ちゃんが、揉んでるから?」
「まだ揉まれたからじゃないニャ。獣人は好きな人が出来るとすぐに大きくなるニャ。はやく揉んでほしいニャ。とっても気持ちよさそうニャ。子供も欲しいニャ」
「それは、大人な発言だね」
結城さんは杏子より少し育った自分の胸を揉んでみている。
「アンたちの世界では、アン位で結婚して子供が出来てる人も珍しくないニャ。にいちゃんに助けられた時すごく気持ちよかったニャ! あれが大人の楽しみニャ」
「アンちゃんうちが揉んでもええ?」
「駄目ニャ揉んでいいのは、にいちゃんだけニャ!」
「うちのを揉んでみていいから、揉ませてーな!」
「杏ちゃんのを揉むといいニャ」
「何で私のなの? 私もお兄ちゃんに揉まれたい」
「杏ちゃん、大胆発言だね」
(えっと、発言があれ過ぎて僕、会話に入れないんだけど!)
「私もお兄さんに揉でほしいです。杏ちゃん私も揉んでもらったら大きくなるかなあ?」
「どれどれ、私が揉んであげるわ。揉まれないより大きくなるかもね?」
「いえ良いです。その内お兄さんに揉んでもらいますので」
(タカの奴、魅了者報告に漏れが有るで! きっとこの子も魅了してるんや! なんでやー。問い詰めたるんや!)
「うちも、まだ揉んでもらって無いんやな、早う揉んでほしいんやけど」
(この人らヤバイ! 僕ついていけない。僕ここに来ていていいんだろうか? 貞操の危機を感じる。体も流したし、もう出よう怖い! でも僕の胸の事には誰もふれないのは何故? いい形してると自分では思うんだが?)
妹と麻生さんは、ぼちぼち魔法が使えるほどに魔力が大きくなってきている。
瑪瑙さんは洗練された札による魔力操作に慣れているようだが。
今日のレベルアップで単体でも魔法が使えるような魔力量になってきているので、手早い魔法も練習してみたらどうかとおもう。
実は瑪瑙さんはすでに、麻生さんより魔力がかなり多く、成長が速い。
強い魔物を一人で倒せるおかげだな。
無理をしてなきゃいいんだけどな。
明日は妹には悪いが、麻生さんと瑪瑙さんに魔法発動にチャレンジしてもらうとする。
結城さんが使えるようになってから二人で始めた方が結城さんにはいいだろう。
その辺を妹に言い含めておかないとな。
麻生さんと瑪瑙さんは帰るとの事なので、俺は家まで送って行く事にした。
「夜も遅いし送っていきますよ」
「いつも、わるいなあタカ」
「わたくしは憑いて行きます」
ケイは心配性だなあ。
「僕は強いからいいけど。せっかくだ送ってもらえるか」
瑪瑙さん対人戦はそんなに強くないんじゃあなかったっけ?
「じゃあ行ってくるよ」
「行ってらっしゃい」
まずは、近い麻生さん家からだ。
「たしか、麻生さんだったか? あなた」
「はい、そうねんけど」
「麻生さん、率直に聞くが、あなた強くなってどうするつもりなんですか? 僕は、降魔師なので効率のいい修行だと思っていますけど」
「うちはな、今回吸血鬼に攫われて思ったんや、今まで知らなかっただけで世の中結構、不思議な事や危険でいっぱいなんやなと。それを知ったからには対抗策が欲しくなっても不思議はないのとちゃうん?」
「なるほど、2回目の被害者でしたか。それなら発信機が埋め込まれているはず。タカの家によく行くのは不味いんじゃ」
「それがな、ケイちゃんが、ジャミングしてくれてるんや。家には疑似発信の魔法まで掛かってるんやで」
「へっ、彼女そんなに有能なのか?」
「はい、わたくしにかかれば簡単な事です」
ケイは胸を張る。
そんな仕草は見た目通りで可愛いな。
「そっそうなんだ、へ~。じゃなくて、麻生さん、それ以外にも理由があるように見えるけど?」
「えっそれ聞いちゃう? じゃあ、ちょっとこっちで耳を貸して」
「いいよ」
「タカちょっと待ってんか」
道の隅に麻生さんと瑪瑙さんの二人は移動しひそひそと話し始める。
「(あのな、タカが吸血鬼? て話は聞いたろ。うちなタカに一度魅了されてんねん)」
「なnうぐ……」
麻生さんは大きな声を出しそうになった瑪瑙さんの口を手でふさぐ。
「ちょっと、しー。(でもな、それはちょっと気になる程度やってんけど。銅路から助けられた時にな、その姿を見たらマジカッコよくてね~。まあ年が離れとるさかい恋人になりたいとまでは思わんのやけど、出来るだけ一緒にいたいと思うてね。でも彼色々巻き込まれやすそうやん、その時に足手まといになりとうのうてね)」
「なるほど」
「(それと、一緒に攫われて助けられた娘達は多かれ少なかれ、皆彼に興味津々やったんや。あいつらには渡しとうないっちゅう独占欲も有りや。もちろんアンタにもな)」
「(ぼっ僕はそんな事ないよ~?)」
「まあええねん、そないな訳や。分かってもろうたやろか?」
「分かったわ」
「待たせたな、タカ、ほなら行こうか」
あの、無駄に耳いいせいで聞こえてたんですけど。
その内密な話が。
俺はどうしたら? と悩む内に二人を家に送り届けた。
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