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0035.取り戻した日常

 アンは見事に人狼を倒しました。

 見ていて少しひやひやしましたけどさすがです。

 わたくしも頑張らねば。


 蝙蝠達が店から出て来るのが分かる。

 3人だわ、タカ様にしては撃ち漏らしが多いです。

 不測の事態に遭いましたね。


「奴らが出てきましたよ」

「分かってる。急急如律令、魔の力を滅ぼしたまえ。いでよ神馬」


 ヒ、ヒッヒ~ン! 


 嘶きとともに神馬が颯爽(さっそう)と転移してくる。

 なるほど! あれが神馬ですか、わたくし達よりかなり格上ですね。

 これは負ける要素が全くないです。

 瑪瑙さんとやらは中々ヤル方だったのですね。


「あ~しは、マジ付き合っていられないんですけど~」


 フシューと蝙蝠になり上方へと逃走を開始した。

 天井があるのに馬鹿な娘。


「あの飛んだ奴はわたくしが」

「では、残りを」


“なっ! 追いかけてくる。マジ信じられないんですけど~、幽霊?”


「逃がしません!」


 わたくしの方が早いですから。


「くそ、貴様ら何もんだい? おかしいだろ!」


 と中年女


「まさか、この世界にもこれ程の力が有るとはな……」


 すっかり諦めた風のや〇さん風おっさん。


「ここまでの悪事すべて見させてもらった。覚悟! 行け、神馬よ、邪悪を滅せよ」


 ノリノリの瑪瑙さんの陰陽術がさく裂し。


 ヒヒーン!


 神馬が嘶き走る。

 

 ドッドッドッ!


 ここは地下街逃げるスペースなど限られていて狙われたら最後避けようもない。


「うわあああ」

(あああっ……ふっ、この世界は我々が存在するための魔力消費が早すぎる。必要な血の量が半端じゃない。こんな強い存在がいる以上我々にこちらでも生き残る道はない。あちらに居てもすぐに発見され滅ぼされる。勇者どもは強すぎるのだ。ダンジョンでもあの男に見つかる。あんなに不味い動物の血をどこかに逃げ隠れしてすすって生きて行く位なら、早めにここらで消えるのも正解なのかもな……)


 おっさんの蝙蝠が一人神馬に引き潰されて消滅していった。


 紫頭のヤンキー女は蝙蝠となり泣きながら天井を通路沿いに逃げ。


“あ~しは、そんなのいやなんですけど~。超音波カッター”


 と魔法を飛ばす。


 その魔法は霊体であるわたくしには通じません。

 シュンッとわたくしをすり抜けていきます。


 魅了の力も飛んできますが今のわたくしには効きません。


「焼失魔法」


“うぎゃあ! マジ熱いよう!”


 紫頭の女は蒼い炎に包まれ落ちていった。


 私に勝つには接近戦で生気吸収勝負をするしかなかったのです。

 火魔法もわたくしには効きませんし。

 逃げた時点で負け決定です。

 まあ、生気吸収勝負でも負けるつもりは無かったですけどね。





 くそっ、なんでこんな奴らが日本に居るんだよ?

 こんなの知らないわよ!


 うんっ? あそこに泣いている子供が居るわね。

 あれを人質にすれば逃げられるかも?

 ついでにそのまま攫えば美味しそうな子供の血が吸えそうだ。

 いい考えを思いついたわね。

 よし実行だわ。


 泣いている子供を捕まえ、後ろから裸絞めにする。

 諦めているのか抵抗はない。


「お前ら、この子の命が惜しければ、抵抗を止めな!」

「おばさん、それ本気で言っていますか? 強さが分からないにも程がありますわよ」

「蝙蝠女、よくその子を見てみろ」


 瑪瑙さんとやらも笑いをこらえているし。


 もう仕事は済んだといった感じで、ブルルと鳴いて神馬は帰っていった。


 へっ! こいつら何を? 

 私は恐る恐る人質の子供を見た。

 何この被り物から覗いている黄色い髪の毛、普通の人じゃない!


「蝙蝠の姉ちゃん。その汚い手でアンに触るニャ!」


 ぼぉうっと、人質にしている子供が蒼く燃え上がった。


「うわあ! 熱い!」


 なんだこれは? あまりの熱さに私は子供を手放した。

 しかし、この炎は私に纏わり付いてくる。


「あっあっああ、燃える私が燃える、許して、もうこんな事しないから。人なんか襲わないから!」

「アンには、信じられないニャ」


 そうね、正しいわ、私は人からの吸血を止められそうにないわ。

 私の体に燃え移っている炎はゴォーと強く燃え上がり、私の意識まで燃やし尽くしていく。





 店舗から出た時に見えたものは燃え上がる蝙蝠とそれを見つめるアンだった。


「にいちゃん」


 アンは俺を見つけると泣きながら胸に飛び込んできた。


「父ちゃんが、父ちゃんが、アンを食べるって! アン、怖かったニャ。とっても、怖かったニャー! うわーん!」

「そうか、よく頑張ったな」


 やんわりとアンの頭をなでる。


「父さまを、見ませんでしたか? 木戸君」

「分からないが、店の中に降魔師が一人」


「やはり、木戸君でしたか。ああ皆までいいですよ。目立ちたくないのなら秘密にしておきます」

「すまん、そうしてくれると助かる。俺たちは撤退する。ありがとう。後は任せた」

「僕たちは君に助けられたし、元から僕たちの仕事だ、礼はいい」

「じゃあ、そういう事で。ケイ、アン、帰るぞ」

「「はい」ニャ」




 木戸君はどこかに消えていった。

 しかし、今回はつらかった。

 まさか、味方に追いまくられるなんて。


 対人用の式神などを持っていなかったのが原因でしょうか?

 悪霊相手ばかりで対人戦の技など練習していなかったからねえ。


 それにしても、彼らの強さ気になるなあ。

 効率的な訓練方法を知っているに違いない。

 ふっふっふ、秘密にするとは言いましたが僕は知ってしまった。

 それは変えられませんからね。

 逃がしませんよ!


 さて、父さまは店の中にいるんですかねえ? 助けに向かいますか。




「ふう、ただいま」

「おかえりお兄ちゃん、ケイちゃん、アンちゃん。ねえ、どうだったの?」


 妹は俺に縋り付きまだ涙ぐんでいるアンを心配そうに見ていた。

 しかし、当たり前のように部屋で待っていた妹よ! 

 俺はうれしいが他にすることはないのか? 


 お兄ちゃんは心配です。


「ああ、万事うまくいったよ。同級生の降魔師に正体がばれた事と、アンのお父さんが居たこと以外は」

「えっそれってどういう事?」

「それはね……」


 妹に掻い摘んで今回の事を話した。


「うう~、アンちゃん大変だったのね」

「ちょと、キョウちゃん、苦しいニャ」


 妹はアンを思いっきり抱きしめ泣いていた。




 翌日は事件も沈静化していて、学校も再開した。

 テレビやネットでは吸血鬼と降魔師が真実として存在したことに大騒ぎとなっていたが、新たな情報を見つける事は出来なかった。


「よう、おはよう」

「おはようだのう」

「おはようさん」


 ショウと冬二は先に教室にいた。


「休みが増えても夏休み明けだしやる事が無かったのう」


 ショウはまじめだな、たぶん勉強をしていたのだろう。


「えっ、そうなん。僕は休みでうれしくゲーム三昧だったけど?」


 なんで冬二の成績は落ちないんだろう?

 自分の事は棚に上がっているタカだ。


「そりゃ、俺もそうだが。これでいいのかと不安にはならんかったかのう。二人とも」

「そうだよね、この分じゃ冬休みが削られかねんぞ! 冬二」

「そんなのは嫌じゃあ!」

「そう言う意味ではないんだがのう」


 将来への不安とかみじんも感じさせない二人に、ショウはこれだからチートな奴等は! と思い深いため息をついた。


「木戸君!」

「へっ?」


 突然、瑪瑙さんが声を掛けてきて。


「昨日はお世話様でした。これからは君の事はタカって呼ぶね。僕の事は(ひじり)と呼ぶが良い! じゃあまたね。ふふん♪」


 と言いたいことだけ言うと自分の席に戻っていった。


「タカよお? これはいったいどういう事か説明しろよ! あれ程タカを嫌悪してた瑪瑙さんが上機嫌だ! 休み明けに急にこれって事は休み中にしっぽりって事だよね?」

「そうだのう、説明が欲しいのう」


 ショウは別にして、冬二はすっかり誤解して血の涙を流さんとばかりの表情で迫って来る。


 あはははは……瑪瑙さん、最後まで混ぜくってくれるな。

 さて、どう説明したもんだか。誰か俺を助けて!

次回更新は明日17時になります、よろしくお願いいたします。

第2章はこれで終了です。短めの閑話をはさんで第3章となります。

楽しんでいただければ幸いです。

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