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0033.覚悟を決める

 アンは、吸血鬼が憎いニャ!

 あいつが居なければアンはきっと幸せに家族と町で暮らしていたニャ。


「アン、のどが渇いたニャ」

「家に帰れば水が有るニャ」

「アンは我儘だなあ、でも、今日は嫌いなお風呂にもちゃんと入ったから、そうだね、これからもいい子にするなら明日、果物のジュースを飲みに行こうニャ」

「やったニャ!」

「もう、お父さんたらアンに甘いんだからニャ、うふふ」

「明日が楽しみニャ」


 アンはお風呂嫌いニャ。

 でも、銭湯帰りの父ちゃんと母ちゃんは特に優しいから好きニャ。

 貧乏だったけど、アンには優しい父ちゃんと母ちゃんだったニャ。


 あの日、遅くなり暗くなった銭湯の帰り道で、アン達はあの吸血鬼に出会ったニャ。


「何者だ! あやし……」


 父ちゃんは何か言いかけて止めたニャ。


 父ちゃんも母ちゃんもあっという間にあいつに魅了され、魅了されなかったアンを押さえつけてあいつの前に差し出したニャ。


「やめてニャ! 痛いニャ、離してニャ、父ちゃん! 母ちゃん! 痛いニャ!」


 騒ぐアンを、まるで物みたいに扱う父ちゃんと母ちゃんは、目の前の吸血鬼よりとても怖かったニャ。


 あいつの顔がアンに迫って来て、余りの怖さに泣きながら目を背けていると。


 首筋を噛まれ、血を吸われる何とも言えない気持ち悪さとは別に、ドロッとした悪意の塊のような気持ち悪い物がアンの体に入ってくるニャ。


 まるで気が狂いそうな嫌悪感と、でも、受け入れて楽になりたいような不思議な気持ちがまじりあいアンは混乱していたニャ。


 吸血鬼がアンの吸血を終えると、父ちゃんと母ちゃんはアンを道端に投げ出したニャ。

 道端に転がりながらアンは見たニャ。

 父ちゃんと母ちゃんは、うれしそうな顔をしながら吸血鬼に自ら首筋を差し出し血を吸われ人狼へと変貌していく姿だったニャ。


 アンは深い絶望を感じながら、半人狼の様な物に変貌する自分に危機感を覚え自分を支配しようとする悪意を徹底的に拒絶することに決めたニャ。


 それからは、地獄のような毎日だったニャ。


 人狼はあいつの命令で、5人一組で街に狩りに出かけていたニャ。

 アンは、あいつの命令に少ししか逆らえなかったニャ。


 だから、奴らと一緒に行動し奴らのする事を止められなかったニャ。

 アンにもっと力が有れば止められたのにと、今でも悔やむニャ。


 奴らは、生きたままの人肉を食らう事に喜びを覚えているように見え、たとえ子供といえど容赦なく生きたまま泣き叫ぶ人々を美味しそうに食べてたニャ。


 アンはその姿を見て何度吐きそうになったか分からないニャ。

 アンは人なんか食べられないニャ。


 でも、お腹はすくので、時々ある食べられた人たちの残した食べ物をこそっと失敬して食べて、周りをごまかし生き延びたニャ。


 たまに、両親と一緒に行動することもあったけど、父ちゃんも、母ちゃんも、他の奴らと何も変わらないのニャ。


 大好きな父ちゃんと母ちゃんは死んでしまったニャ。


 ある日、吸血鬼のあいつが強大な敵が来ると言い、戦闘準備を始めたニャ。


 その時アンへの支配力が一時的に落ちたニャ。

 その隙にアンは、洞窟の奥に逃げだして隠れる事にしたニャ。


 あいつは、戦闘準備の際、魔力を使い過ぎて倒れたみたいだったニャ。

 洞窟の奥でじっと隠れていると戦闘準備の際に召喚された蝙蝠が一匹、傷だらけでフラフラとアンの所まで飛んで来たニャ。


“もう嫌だ! 痛い痛いよう、帰りたい帰りたいよう”


 蝙蝠さんはそう言いながら泣いていたニャ。

 普通ならこの位の傷なんかすぐ治るはずニャ。

 しかし、蝙蝠さんの傷は治らないニャ。


「大丈夫、アンが付いているニャ」


 アンは蝙蝠さんを優しく抱きしめてあげたニャ。


 強烈な光があいつの居た辺りを2回照らすと、視界が暗転し、気づいたらお日様の下に放り出されていたニャ。

 抱きしめていた可哀想な蝙蝠さんは日にあたると声を出す暇も無く、灰になって飛び散らかって行ったニャ。


「きゃー! あれは何?」

「あれはきっと人狼だー! 逃げろー!」


 余りの騒ぎにアンはびっくりして逃げ出すとなぜか小さい虎の姿になったニャ。


 逃げながら周りを見ると、そこは、四角い何かが凄いスピードで行き交う不思議な場所だったニャ。

 周りの人に会わないよう避けながら、ゴミをあさったりして何日か生き延びたニャ。

 アンは鼻がいいので傷んでない食べ物を簡単に探せたのが良かったニャ。


 大きい走る箱の上に乗って楽に移動していた時、突然人が飛び乗って来て、首根っこを掴み持ち上げられたニャ。

 早いニャ!


「にゃにゃにゃ? にゃにゃするニャ! はにゃせ!」

「お前は何者だ?」


 にいちゃんとの出会いだった。


 にいちゃんはアンの中のドロッとした気持ち悪い物を取り除いてくれたニャ。


 アンから悪意が取り除かれていく間、今までに感じた事の無い快感が体を貫いたニャ! 

 アンは変な声が出そうになるのを押さえるので必死だったニャ。

 母ちゃんは夜変な声を上げていたので聞いたことが有るニャ。


「アン、好きな人と子造りすると気持ちよくて嬌声が出るニャ。でも外では嬌声を押さえないと駄目ニャ! 恥ずかしいニャ」


 母ちゃんがそう言っていたのを思い出して声をあげるのを必死に我慢したニャ! 

 アン偉いニャ。


 アンはこの時から大人の女になったニャ。

 それからずっとにいちゃんの子が産みたいと切に願っているニャ。

 ほとんどの獣人族のメスは子供が欲しくなった時から体も大人ニャ。


 人狼ではなくなったけども虎になったり、人虎になったり、出来てまったくの元通りではないニャ。

 けど何とも言えない体のだるさや気持ち悪さが落ち着きすうっとしたニャ。


 アンはこれでなんとか助かったニャ。


 でも、アンは吸血鬼を、人狼をそして、この世界で暴れている蝙蝠も決して許せないニャ。

 それが例えもと両親だったものとしてもニャ!

 

 そして今は、にいちゃんに与えられた任務をこなすニャ。

 今のアンは、その位楽にできる実力も付いたニャ。

 では、行くニャ。


 とととっと、警備している体のデカいおじさんの前にでて、おじさんの顔を見てニコーとして、にいちゃんの元にとととっと帰っていくニャ。

 振り返ると警備のおじさんが鬼のような表情で追いかけてくるニャ。


 アンは、おじさんを見た途端怖くなって必死でにいちゃんの所に走ったニャ。


 その時おじさん達の後ろからよく知った懐かしい匂いと魔力感じたニャ!


 アンの心は酷く騒いだニャ。

 まさか、まさか! 

 それは、間違いなく父ちゃんの匂いだったニャ。


 警備の人たちが兄ちゃんの力で解放されるのを見てアンは言ったニャ。


「にいちゃん、父ちゃんが居るニャ。父ちゃんはアンに任せてほしいニャ。アンがやられそうでも、手を出さないでほしいニャ」

「アン、それは危ない。俺に任せろ!」

「にいちゃん、父ちゃんは、アンが、何とかするニャ。後の連中を兄ちゃんに頼むニャ」

「分かった気を付けるんだぞアン」


 アンは覚悟を決めるニャ。


 厳しい表情でアンはマスクを上げて顔を晒すのであった。

次回更新は明日21時になります、よろしくお願いいたします。

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