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0031.日が射さず広い人の多い所は

「きゃあー!」

「変態がでた~!」

「なっなんだ? 露出狂の集団か?」

「うわー! あのねーちゃんいい体してやがるぜ!」


 街に帳が降りる頃、まだまだたくさんの人出でごった返している地下街の一角に、全員素っ裸の異様な三人組が姿を現した。


「ちっ、うるせえな! シバいたろか? 俺達は吸血鬼だ~おそれろや~!」

「佐武木! 文句言ってないでとっとと魅了を掛けろ! 静かになる」

「へ~い関谷さん」


「あ~しらそう言うの苦手なのよね~。銅路のバカが得意だったのに~! ああ早く男の子の血を吸いたい~!」

「あるら。言いたいことは分かるが、いなくなった奴の事をいつまでも言うのはよせ! 魅了に集中しろ!」

「あいつどこに行ったんだろう? ここらの人間にゃ負けない筈なんだけどね~。あ~しらほぼ不死身やし!」


 ニュースでは集団行方不明があって死者が出た事は伝えているが、未だ未解決なため犯行の詳細の報道はしていないのだ。


「あるら!」

「はいはい! いっちょ派手に行きますかね~」


 三人はは散開し、そこらじゅうで魅了を掛け始めた。


「反対側入り口からは人狼のおっさんたちが魅了しているはずだから、あいつらに負けるなよ!」

「わかったぜ。くっふっふ」


 あるらに小学生以上位の男たちがわらわらと寄っていく。


「あーしの裸が気になるか~? 勝手に寄ってきて~マジちょろいんですけど~! ほれ、死ぬ前にサービスだ。しっかり見てよ~ん」


 がバッと胸を張り品っと躰をくねらせるとその妖艶な肢体をいかんなく魅せる。


「ふん、そうだな。裸の何が良くて悪いのか。今ではさっぱりわからんな」

「前は女の裸がチョー好きだった記憶があるのが、まるで嘘のよーだぜ! わっはっは!」


 三人の魅了によって大きな騒ぎになるわけではなく、彼らの後を表情を無くした人々がその場でボーっと立ち尽くす。

 だが、いくばくかの人は異常に気付き所々にある出口から地上に逃げ出していた。


 彼ら吸血蝙蝠にあるのは木戸貴志の性欲とは違い食欲のみのようだ。


「もう、耐えられないわ! いただきます~!」


 あるらは小学生くらいの男の子にガブリと噛み付き、血をごくごくと吸い尽くしていく。

 血を吸われた男の子はなぜか幸せそうに時折体をビクッビクッとさせながら干からびていくのが唯一の救いなのかもしれない。


「ちっ! おれもだ~!」


 佐武木も慌てて近くの女にかぶりつく。


「しょうがない奴らだ。なら俺もいただくとするかね」


 関谷も手近な幼児を呼び寄せ鋭く大きい牙を鈍く光らせた。 







 次の日の朝、起きると学校からの緊急メールが入っていることに気づいた。


 “××市の地下街で事件発生しました。今日は急遽休校とします。”

 地下街で事件だと、悪い予感がする。

 ××市は少し遠いぞ! 

 なのに休校だなんて! 

 これはとんでもない事が起こったな!


 そう言えば最寄りの広い地下街って言ったらあそこしかないな。

 いったい何が起こった?


「お兄ちゃん中学校が休校だって」


 妹とアンが部屋にやって来た。


「高校もだ、何か分かるか」

「ううん、何もわかんない」


 駄目だネットでは朝早い事件なんてニュースが更新されてないので分からん。

 こういう時はテレビに頼らざる得んな。

 テレビは信用ならんことも多いが、こういう時は即時性は高いし正確そうな気もする。


 テレビを点けニュースをやってる局を探して見ると。


 “皆さん大変なことが起こっています。自らを吸血鬼と名乗る集団が、××市の地下街を占拠しています。今朝がたの警察発表によると昨夜20時頃、警官隊が突入しましたが誰一人戻ってこず。犯人から『無駄なことをいくらしてもかまわんぞ、朝食ありがとう』との声明が上がっており。重大な事案として、総理は緊急事態宣言を△▽県に発令して、近隣の県も準じた対応を行うとのことです。また超法規的処置として自衛隊と降魔師による共同討伐作戦も検討中とのことです”


 げっ奴ら動きやがった!

 あの無駄に広い地下街でなんて、最悪だ!


「俺は行ってくる」

「お兄ちゃん私も連れて行って」

「駄目だお前の力じゃ、やられに行くだけだ!」

「にいちゃん、アンは勝てるよ、だから連れて行ってニャ」


 うう、妹にああは言ったから断りにくい。


「わたくしも憑いて行きますわよ! あの時とは違う所を見せてやります」

「あっそう言えばこれがあったんだっけ。お兄ちゃん、このマスクを着けて行って」


 偏光ミラーでギラギラの面積が大きい視認性の良さそうなマスクを出した。


「これをつけていれば身バレは少ないかもね」


 どこからこんな物を探し出して来たのか? だがありがたい。


「お父さんが何処からか買ってきたのよ、こういう事も有るだろうから持ってなさいって、私の分や麻生さんのもあるのよ。はい、これアンちゃんの」

「わあい! かっこいいニャ」

「父さんに、ありがとうって言っておいてくれ」

「いやよ! 自分で言ってよ」

「分かった」


 しかし父さん準備がいいなあ。

 いざ、行こうとして転移しようとしたが、座標がうまい事かみ合わず、直行出来ない。


 これは近くの駅までは電車で移動だな。

 思わぬ転移の弱点を発見してしまった。


 まあ転移先は気配を探知してからの方がいいので、その方が都合良いかと思い直した。


「探知可能範囲の駅まで行く」

「わあい! 電車だニャ」

「遊びに行くわけではないぞ」


 俺たちは探知可能な最遠の駅まで転移した。

 そこから電車で地下街に一番近い駅まで移動だ。


「監視カメラはわたくしがジャミングしていますので気にしなくても大丈夫です」

「さすがケイだ! 気が利くな。ありがとう!」

「戦闘状態になればその限りではございません。そのあたりはお気を付けください」


 どんどん有能になっていくケイに驚愕するよ。


「うれしいニャ~。電車はテレビでは見たけど初めて乗るニャ」


 ケイが初めて電車に乗った時のようにはしゃいでるアンを見て、短い間のケイの成長に感動を覚えるな。


「わたくしはこんな、なりですが最年長ですよ。でも、初めて見る物には感動するんです。生暖かい視線はよしてください」

「すまん、気にしていたんだな」


 俺は、アンを生暖かく見守ることにした。


 駅付近の地下街の入り口近くまで来てみると、いくつかある出入り口がすべて厳重に封鎖されていて、警官の様な人たちが右往左往しているのが分かる。


 探知で地下街の様子を伺うと、何十人もの死体。

 それとは別に、中に入った警察も他の人々も合わせた大勢が皆一様に魅了されていて、魅了されたであろう場所にとどまり自意識も無く血を吸われるのを待つか、入り口近くで侵入者を待ち伏せているか、何かを探して回っているようだった。


 いったい何を探しているのだろうか?


 広域に薄く探知の網を広げてみると結構な人数が、吸血鬼から逃れあちこちに隠れている。

 魅了された人に見つかれば捕まるからな。

 かくれるのは正解だ。

 奴らは、虐殺はせずに食料として人々を魅了し確保するのに重点を置いているようだな。

 隠れている人を発見できない所を見ると、探知能力がかなり低いのか無いのか? 余り役に立っていない様だった。


 俺は探知を使えるのになぜ奴らが使えないのかはよく分からん。

 しかし、奴らの気配の消し方は大したもので、何処にいるのかここからの探知では分からない。

 相当警戒しているようだ。


「くそっ! 居場所が分かれば早いものを!」

「タカ様、焦ってはいけません」

「そうニャ、そんなに殺気立っていてはいけないニャ」

「ありがとう気を付けるよ」


 探知には一人だがまだ隠れられず、逃げている人の反応もある。その人から助ける事にしよう。




「はひぃっはひぃっはひぃっ」


 僕はこの結構広く迷路の様な地下街を走り続けている。


 なぜ、こんな事になったのか。

 昨夜作戦会議も終わり、皆が仕事に戻ろうとしていた時にその知らせが届いた。


「何だって、地下街を吸血鬼に占拠されただと」

「父上これは大変な事態ですよ」

「分かっておる、皆を集結させ出動に備えるぞ」


 まずは警察で対処を試みるとの事だが、相手が吸血鬼では被害が増えるだけだ。

 そう抗議したが、政府の奴らは耳を貸さず、警官隊を突入させることになった。


 結果誰も帰ってこない連絡もない状況となり、自衛隊が出張ってきたが、魔力に耐性がない者が行けば、犠牲者が増えると抗議して我ら瑪瑙家と自衛隊の共同作戦となった。


 地下街に踏み込んですぐ魅了された警官隊との戦闘となったので、ここを、自衛隊に任せ我々は奥に向かう事となった。


 多少奥に入った所で7人の人影に囲まれていることに気づき、戦闘態勢に入ろうとすると。


「こんな弱そうな奴等がこんな所まで入って来るなんて無謀だろう、笑っちゃうぜ」


 とんがり頭のバカそうなやつだな。


「入り口で騒いでたやつらもすべて魅了されているのに、ふっ、ご苦労な事だ」


 いかつい男だ雰囲気からしてリーダーなのか?

 

 奴らは信じられないほど穢れた魔力を持つ怪物たちだった。

 こいつら全員素っ裸とかふざけているのか? 

 だが勝てる!


「急急如律令」


 次の言霊を紡ぐ前に隣にいる父に取り押さえられる。


「させるか! 聖よ」


 驚いた事に父や他の皆もすでに、吸血鬼に魅了されていた。

 僕には神馬の加護も有るので少々の魔力では魅了できないのだろう。


「主よこの娘は危険です」


 父が奴らの方を向いた隙にポケットの中に入っていた、光の護符を発動させ、敵の視界を奪い動揺を誘った隙に逃げ出す。


「奴を逃がすな」


 先ほどまでの仲間が僕を追ってくる。

 いったいなぜこんなことに。


 僕は、あふれる涙を拭う余裕すらなく地下街の中を走り続けるのだった。

次回更新は明日21時になります、よろしくお願いいたします。

楽しんでいただければ幸いです。

ブックマークもいただけると本当にうれしいです。

何卒よろしくお願いいたします。

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