0030.隣の芝生はよく見える
放課後、ショウの席にいつものように集まりだべる。
「おいタカ! 昼休憩はお楽しみでしたね?」
冬二にはあれがそう見えるのか?
嫉妬も盲目だよな。
「そんな事あるか! そうならどんなに良かったか……」
「いったい何だったのかのう?」
ショウには分かっているようだ。
「さあな、俺が(集団行方不明の犯人じゃないかと)絡まれた」
「ああ、(そんなに痛い子だったのか)体を張って調べるとはグッジョブ!」
冬二は、簡単に意見を翻した。
「そうだのう、(それはかなり痛い子だったんじゃのう)どうやったらそんな考察になるのやら分からんのう」
三人は教室にいる瑪瑙さんに配慮して関係する部分を小声で言ったが、たぶん聞こえてるよね。
すまん、瑪瑙さん、ずいぶん評判を落としてしまった。
「誰かが、俺の悪口でも吹き込んだんじゃないの?」
話をはぐらかそうとしてと冬二を見る。
冬二には少し悪者になってもらってエロ本の恨みをここで返してもらおう。
「いや、そんなことしないよ、僕は友達じゃないか」
「友達が妹似のエロ本で罠に掛けようとするのか?」
「結構根に持ってるな、タカらしくもないよ」
少し悪者になってもらって許そうかと思ったが冬二は全く悪びれていないのでムカつく!
「少しは反省しろ冬二!」
「わータカが怒ったー」
俺は立ち上がり逃げる冬二を追いかける。
冬二はショウを盾にして隠れる。
「馬鹿だのう、冬二! タカに妹絡みの悪戯はタブーだと言うのにのう」
「でも悔しいんです。知ってても抑えきれないんです!」
「馬鹿だのう」
何が悔しいんだか?
たしか冬二にも妹が居たはずだ。
「隣の芝生は青く見えるんだよ」
「そんなことはない! うちの妹は太っていて不細工で、その上に我儘なんだよー。俺の苦労はお前にゃ分からんよ」
また泣き始めた。
こいつよく泣くなあ。
「顔はお前似なんだ、諦めるのう」
「それが、よけい辛いんだよ。例えば僕に娘が出来るとあんな感じの仕上がりになりそうで」
「気にするな! お前は結婚できないのう」
「あのな、僕に喧嘩売ってるのかい」
「否定できるのかのう」
「出来ない」
冬二の顔色が悪い気が。これが世に言う縦線入りか?
そんな冗談真に受けて。
冬二にとっては冗談に聞こえないのか?
「おいおい、その辺で止めてやれ! 冬二自殺するぞ」
「「リア充は黙っとれ!」のう!」
なんで、俺がリア充なんだ?
彼女なんか居たことないぞ。
まあこれからは違うかも。
ぐふふ。
「こいつ、にやにやしやがって、状況が変わってる?」
「そうだのう、タカはモテるが、気がつかない鈍感さんのはずで、それが売りな、はずだったのにのう」
「えっ? なんだって俺モテてるの、誰から? 教えてよう、友達だろ~」
「恋愛では男は皆ライバルだ自分で探しな」
「そうだのう」
「そんなこと言わず、友達だろう」
俺は恥も外聞もかなぐり捨てて冬二に縋り付く。
「ええい、うざい離れろっ。このリア充め!」
「そんなことやってると、さらにモテないのう」
と楽しくやっていると。
バンッと教室の扉が閉まる音がして、びっくりしてその方向を見ると。
廊下窓越しに瑪瑙さんが、キッと一睨みして帰っていった。
「あれは、だいぶやばいのう」
「刺されないように気をつけろっ! リア充! (刺されろ)」
「聞こえたぞ、冬二!」
「うわータカが怒ったー」
「馬鹿だのう」
何時もの学校、何時もの友達、何気ない時間が俺は好きだ。
楽しいな、こんな日々が壊れない様、頑張りますかね。
久しぶりに学校に行き友達に会ったので、遅くまで話し込んだ。
そのせいで家に帰るのがいつもより遅くなると、皆家で俺が帰るのを今か今かと待っていた。
「おっそーい! お兄ちゃん、何やってたの?」
「そうやで、ダンジョン行くでえ!」
この二人は魔力が増えれば魔法が使える事を知ると、俄然やる気を出していた。
と言うか麻生さん毎日来てるんだけど、それでいいのか?
俺は構わんけど。
「タカ様にはやはりわたくしが憑いてないと」
おいそこ! 字が違う。
「にいちゃん、寂しかったニャー」
アンはかわいいなあーよしよし。
「じゃあ、夕飯終わったら、ダンジョンに行こうか」
「さんせー」
「お母さん料理ほんまに上手やね! 毎日が楽しみやで」
まさか、麻生さん夕食目当てでここに来てるんじゃあないのだろうか?
先日、麻生さんを両親に会わせると両親はとても喜んだ。
それは俺が女性を家に連れて来た事がないからだ。
「やっと、この子にも春が……」
などと、臆面もなくほざいてくれた。
そのせいで
「アンは女性じゃないのかニャ?」
と一人傷ついた者がいた事には、俺を含め誰も気づいてない様だった。
頑張れアン。
母さんが。
「うちの娘のつもりで家に来てね、歓迎するわ」
と言った。
その流れで、夕食時、麻生さんが居れば一緒に食べることになっている。
女の子が増え姦しい食卓となる。
そう言えば父さんが残業で居ないので男は俺一人!
肩身が狭いな。
ケイは食べられはしないが、母さん以外とはコミュニケーションが取れるようになったので嬉しそうだ。
まあそれで良しとするか。
その後ダンジョンへ行き二人がレベルアップするまで戦った。
僕が瑪瑙家の霊障捜査本部に帰ると、いつものように門弟たちが迎えてくれた。
「お嬢お疲れ様です。奥で当主がお待ちです」
「分かった着替えたら行くと伝えてくれ」
そう言いながらその場の門弟たちの魔力を調べるが、皆何時も通りだ。
私の探知が狂っているわけではない。
あの男がおかしいのだ!
着替えて父を訪ねると、対策会議の最中だった。
「聖、学校はどうだったか?」
「はい、滞りなく潜入いたしました。ぼちぼちと、情報収集を開始しています」
「昼時に神馬の招喚を探知したが何事があったのだ?」
流石に父には、ばれていたようだ。
「怪しい魔力もちが居たので吸血鬼かと思い神馬様で挑みました。しかし、神馬様は、彼を攻撃せず帰っていかれました」
「ふむ神馬様が反応しなかったと言う事は、邪の者ではないな。今は捨ておけ、後で、仲間にでも引き込めばよい……次に第3班状況は?」
「はっ、それがC地区を、かなり広範囲に探知をして回ったのですが何も引っ掛かりません」
「ふむ、かなり狡猾な奴等だな、引き続き探知を続けよ。夜が本番だぞ、隅々までだ。第4班の状況は」
「はっ、行方不明者宅の中には、銅路を除いて、6軒ほど、家族や同居人の姿が見えなくなっている……」
私の報告はまともに聞いてくれないのか?
いつもと違う! と唖然としながら会議の話を聞くのだった。
次回更新は明日21時になります、よろしくお願いいたします。
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