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0028.学校へ行こう

 世間を騒がせた集団行方不明も何の進展もなく、次の事件も起きなかったしいつまでも学校を休校させる訳には行かなかったのだろう。

 今日から新学期開始である。


 ケイは妹の方が心配だからと、妹に付いて行くと言う。

 アンは流石に学校へは連れて行けないので悪いが留守番だ。

 俺は久しぶりに一人で外を歩いていた。

 少し寂しい気もしないではない。


 高校までは少し遠いが良い路線のバスもないので、少し離れたバス停まで行ってバスに乗っていくほどでも無い。

 さりとて自転車置き場も小さいので許可も下りず、徒歩での通学である。

 少し小高い所にあり、長距離歩いた後の上り坂は結構疲れるな。

 結構な進学校である上に何気に女子の方が多く風光明媚で美人も多い。

 つまり、まあなんだ、いい学校ではある。


「おーい! タカー、久しいのう」


 後ろから声を掛けてきたのは三ツ木正太、家の方向が同じなのでよく登校時一緒になる友達だ。

 俺はショウと呼んでいる。

 それなりに成績優秀で宿題に追われるなんてことも無いらしい。

 どちらかと言えば堅物で、女性と付き合うなら結婚前提だと思っているらしい節がある。

 それじゃ高校で彼女なんかできないだろうと、自分がモテないのを横に置いて心配になってしまう。


「よう、ショウ本当に久しぶりだな!」


 ポプラ並木の端正な住宅街を歩きながら学校へとゆっくり歩きながら駄弁る。


「そうそう、この夏は初めの頃にシューティング大会があっただけで、サバゲー無かったからのう、くそっ! 誰が集団誘拐なんかしやがったんだ! おかげで、暇で死にそうだったのう。せっかく銃を新調したのに使う機会がないのう!」


 そうサバゲー仲間でもある。


「えっ! 何を買ったんだ? 教えろよ」

「MP5を買ったのだのう。取り回しが良い感じなんだのう」

「へえ~、サブマシンガンか~。それもいいよな。聞いてると俺も欲しくなってくるな」

「早くサバゲで使ってみたいのう。でものう、もう少し落ち着くまで無理かのう? それまでは暇だのう。まあ、お前はそれでも、あちこちのトラブルに係わっていたんだろうから、暇は無かったんだろうけどのう」


 茶化すように俺を揶揄う。


「人をトラブルメーカーみたいに言うな! 人聞きの悪い」

「でも本当の事だろう。自らトラブルに飛び込んでいくのはお前位だよ! 面倒くさいだろ普通! まあお前がトラブルを作ってる訳じゃないってのは分かるけどのう」


 とあきれ顔だ。


「人助けも面白いよ! 色々ドラマが有って」

「それは全く共感出来んのう。ところでタカの事だから今回の集団行方不明にも係わってるんだろ、面白い情報とかないかのう?」


 やれやれ、と言った感じになった。

 そんな事ないよ、楽しいって、人助けも。


「ショウ、あれは吸血鬼の仕業だよ」

「ほほう! タカが言うからには、信憑性が有るのう。なるほどのう」


 これは、ふざけた話と受け取らず、真面目に反応してくれる。


「知っていても逃げられない災害みたいな物さ」

「逃げられないか、対策の取りようがないのう」

「夜、部屋の窓を例え叩くものが居ても開けないようにするといいよ。暗くなってから出かけるのもまずい」

「なるほどのう! 参考になるのう」

「それでも、相手が吸血鬼じゃなくて人狼だったら防げない」

「人狼まで本当なのか? 怖いのう」


 ショウは大げさに震えて見せた。


 校庭を横切って2階の教室に着くと四身冬二が珍しく先に来ていた。

 まあこっちは悪友と言った感じである。

 エロくて面白い奴ではあるんだが、いじけやすく切れやすい、少し扱いにくい奴だ。


 俺はそうとはあまり思わないんだが、背や顔など容姿にコンプレックスがあるようで、俺を目の敵にすることが時々ある。

 だがモテないのはお互い様だというのに困った奴である。

 まっ俺の顔は良いからな仕方ないかも知れない。


「よう早いのう!」

「おはよう、僕だって早いときもあるのさ」

「冬二おはよう、これ忘れないうちに返しておくよ」


 夏休みの間冬二に借りていた、エロ本を差し出すと、受け取りながら意味深気に冬二は言う。


「どうだった! 良かったろ?」

「お前がうちの妹に気が有ることは分かったよ」

「いや、似てるのは偶然だよ偶然!」

「やはり知っていたか」

「しまった!」

「まったく、妹はやらんぞ!」


「分かってまんがな。なあショウ」

「俺を巻き込むな冬二」

「これ妹に見つかったりしなかったのか?」


 なんだ? 冬二、見つかってほしいみたいな言い方だな。


「俺から見せたけど何か?」

「勇者だ勇者がここに居る!」

「なるほど、それが目的でこの本貸してくれたのか」

「へへへ~、でどうなったの?」

「別にどうも」


「そんな訳ないだろ! 『こんな本持ってるお兄ちゃんキモイ』とか言われなかったの? タカのとこの妹かなりきついし」


 たぶん冬二はこれでちょっとした悪戯のつもりなんだよねえ? 

 その目論見通りになったら家庭崩壊もあり得るよ? 


 俺はなんでこんな奴とつるんでいるのだろう? 

 身長とか顔で俺にコンプレックスがあるみたいで色々やらかしてくるうざい奴なのに? 


 でもなぜか馬が合うんだよなあ、不思議だ? 嫌いになれない。

 世の中って理屈じゃ割り切れない事ってあるんだよね~。


「そこまで企んでいたのか」

「だってお前ばっかり可愛い妹が居てジェラシイじゃん!」

「泣くなよ」

「だってようこいつ!」

「はあっ!」


 俺は大きくため息をついた。


「おっと、話は変わるけどよう、聞けばびっくりするぞ!」


 冬二はさっきまでの事をまるで忘れたみたいにどや顔で微笑んでいる。

 ほんっとに調子いいよな!

 どこまで本気なんだか?


「なんのう?」

「ふう、いいから言ってみろよ」

「転校生来るらしいぜ」


 転校生ねー。


「高校で転校とは珍しいのう」

「なんでも美人なんだってさ」


 冬二って、どこからそんな情報仕入れてくるのやら?


「それは楽しみだな!」

「そうだのう」

「だろ、僕に感謝しろよ!」

「なんで?」

「なんで、じゃないだろうこの野郎!」

「おっと先生が来たのう」

「じゃな、また後で」

「おう後でな」


 俺達は、慌てて席に戻る。


 先生の後に付いて転校生が入ってきた。

 真っ赤に染めたとげとげの髪と、耳に派手なピアスをしていて、口元も派手めなシャインリップ決めた、きつそうな目をした女の子だ。

 躰は引き締まっていそうなのに結構なでかい胸を持たれている。

 メリハリボディだな。


 いかんつい性的な目で見てしまう。

 俺はどうなっていくのだろうか?


 先生はいつもの様に皆を見回し、全員いる事が確認できたようなので口を開いた。


「おはよう。今日このクラスに転校生が入る。さっ、自己紹介を」

瑪瑙 聖(めのう ひじり)だ、よろしく。聖って呼んでくれ!」


 ニヤリと悪げに笑って決め顔を作っている。

 明るい、いい感じの自己紹介だったはずなんだがその派手な見栄えが悪かった。

 うちの高校って偏差値高い方でまじめでおとなしい人間が多いから、こういうカッコの奴いないんだよねえ。

 周りを見ると、ほらっ、皆引いてるし、拍手の一つもない。

 すっかり外してしまっているな。

 可哀想に。


 まてよこいつ、魔力が少しだが有るぞ!

 あっ、チラチラとこちらを睨んでる。

 嫌な予感がするぜ!


「じゃあ、瑪瑙さん、あそこの空いてる席に座ってください、では授業始めますよ教科書124ページから。相崎さん読んで」


 そういや1限は担任の授業だっけ? ホームルームから突然授業始めるんだよな、こいつ。


 瑪瑙さんは時々俺を睨んでる。

 ああ面倒くさい事になりそうだな。


 休憩になるとなぜか冬二が絡んで来た。


「そこのタカさん~あれは何ですか~?」

「あれってなんだよ。冬二?」


「とぼけんなよ! 転校生だよ! 聖さん、なんでお前をじっと見ているんだよ! あんな美人がお前に気があるなんて、ふざけんじゃないぞこの野郎!」

「うらやましいのか? なら俺の顔に成れよ! きっとそんな良いもんじゃないよ」


 冬二よ、俺だって魅了ができる様になるまで、人生で一度も女にモテた事なんか無いんだからな。

 あっ、自分で思ってて泣きそうになったよ。


「畜生! 余裕見せやがって、おまなんかな! おまなんかな!」

「何言ってんだか」


「タカ? 彼女と知り合いじゃないのかのう、なんか剣呑としてるのう」

「さあ? 初対面だよ。ショウ」

「まあ、お前はこの辺じゃ少々有名人だからのう。向こうが一方的に知ってる場合もあるかのう」

「俺そんなに有名?」

「ああ、自覚無かったのかのう」

「お前ひとりだけ、モテモテなんて許さなねえからな~。おらー外に出ろ勝負だ!」


 どこを見て俺がモテモテなんだろう。

 麻生さんの事はばれてないはずだし。

 実は陰で俺はモテているのか? 

 誰だ俺を好きなのは?

 見回してみるが、瑪瑙さんとは目が合った、しかし他にそんな気配は感じないな。

 俺、冬二にどこかで恨みでも買ったのかね?


 お昼になり、皆でお弁当を食べていると。


「ちょっといいかな、君名前は?」


 ああ、瑪瑙さん接触してきてしまったよ。


「木戸貴志ですけど」

「じゃあ、木戸君、ちょっと付き合ってくれるか」


 あらら呼び出しですよ。


「くそっ! くそっ!」


 あああっ、冬二が嫉妬で壊れそうだよ。

 ショウは面白そうに眼だけでキョロキョロと見てる。


「いいよ、これを食べたら。ちょっと待って」


 もぐもぐもぐ


 俺は、弁当の残りを一気に平らげた。


「お待たせさん」

「付いて来てくれ」


 俺は言われるがままに瑪瑙さんに付いて行くのだった。

次回更新は明日21時になります、よろしくお願いいたします。

楽しんでいただければ幸いです。

ブックマークもいただけると本当にうれしいです。

何卒よろしくお願いいたします。

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