閑話 捜査
わしは、20年以上、現場で刑事をやっていて、それなりの事件に係わってきたつもりだが、こんな不可解な事件は初めてだ。
足を棒のようにして、幾ら歩き回り聞き込みをしても、全く犯人と被害者が接触したらしい証言が得られねえ。
最近色々な所にある監視カメラには、二人ほどふっと消える様子が映ってはいても、カメラの不具合なのか? 犯人は映ってねえ!
200人以上もの人間が行方不明だと言うのにだぞ!
被害者の家に行くと悲痛な声を聴く。
親が子が友達が恋人が忽然と居なくなったのだ。
どこへ行っても気が狂わんばかりに探し回っているし、刑事さん、見つけてください! お願いします! と涙ながらに懇願される。
ただ、被害者宅の内数軒は誰もいなかった。
総出で探しているのかもしれないが、これも変な話だ。
何か引っかかるが何かわからねえ。
わしだって解決はしたい。
だが全く物証がねえ!
状況証拠ですら見つからねえ!
誰が何のためにやったのか全く想像すらできねえ!
おかしな団体が洗脳し自ら消息を絶ったとしても、係わりの有りそうな団体の活動の跡も見つからねえ。
それに246名たあ数が多すぎる。
大体2歳の子供まで家の中から家に親がいる中でいなくなってるんだ。
そんな犯行いくら何でも誰にも不可能だ!
わけが分からねえ!
そのほとんどが行方をくらませたと予想される時間に1時間程度の誤差しかねえ。
その上に最近ぽつぽつと、若い女性の行方不明が発生し、そっちも調べてはいるが物証や証言がほとんどねえ。
いったいこの町はどうなってやがるんだ!
上からは報告書を出せとせっつかれるが、何も成果らしきものが書けねえ。
わしも気が狂いそうだ!
「なんだと! 若い女性ばかりの行方不明が増えているって?」
「そうなんですよ部長」
「なんてこったい! まだ246名の集団行方不明の捜査もまったく進展を見せていないのに」
俺は頭を抱える。
刑事部長である俺に報告が入ったのは、集団行方不明が起こってから15日ほどが過ぎたころだった。
市民からの失踪捜査依頼を解析した結果、ただの家出ではないと思われれ、集団失踪とは別件だと思われる失踪が増えてきているとの事だった。
「で、その特徴は?」
「はい、失踪時間は夕暮れ以降で、一人でいる時に忽然と姿が消えた。との事です。また、聞き込みによると失踪者の知り合いは皆、美しい女性であったとの結果が得られています。後は皆共通点があまりありません」
「若い美しい女性ってなんだ? 人身売買か何かか?」
「集団行方不明と違う点は発生が短時間ではなく、偶発的である事。ターゲットがある事。フラフラと歩いて男に付いて行く様子が少なからず目撃されている事です」
「そこまで分かっていて何故特定できない!」
「男の様子は何故か誰も記憶に残っておらず。皆途中で目撃が無くなっていまして」
「ふむ、それだけ類似点があるなら、女性集団誘拐事件として本格的に捜査を開始する。人選を始めなさい」
「はい、了解いたしました」
しかし、地方の一警察署にそれ程の人員が居るはずもないのだ。
これは、長期化、するかもしれないな。
本庁の集団行方不明捜査本部にも一報を入れないとな。
「ふー!」
長いため息が漏れるのだった。
「そんな馬鹿な、なぜこれほどまでの人員で捜査しているのに手掛かりの一つも出てこないのだ! おかしいだろ! その上に女性の誘拐多発だと? いったいこの町で何が起こっているんだ?」
県警の刑事部長からの報告書に目を通して俺は叫んでいた。
「本部長、これは人の仕業ではないかもしれません。人には無理ですこんなに手掛かりを残さない犯行は」
「だったら何の仕業だと言うんだ君は?」
「私にはわかりかねます。しかし、この件は我々の仕事ではなく、未確認事件班の仕事ではないでしょうか?」
「俺は聞いたことがないぞ! そんな班?」
「警視総監の直轄班にそのような機密班があると噂に聞いたことが有ります」
「そんな、噂では動けん却下だ」
なにが未確認事件班だ。
馬鹿にしやがって。
だが俺の判断が間違いであった事が、数日後分かる事になる。
なんと、女性集団誘拐事件は被害者からの電話通報によって解決することになるが、その内容は吸血鬼による犯行と言うとても信じがたい物だった。
そして、彼女達を助けたと言う存在もいる事が分かった。
彼女たちは助けて死んだとの証言をしているが、我々から見ると嘘をついているのは明白だ。
彼女達は何を隠しているのだろうか?
本庁に連絡すると。
すぐに、未確認事件班とやらがやって来て。
陣頭指揮を執り始めた。
なんと! 被害者に発信機を埋め込むなどの非合法な事を指示し、退魔機動隊と自衛隊退魔班と降魔師という訳の分からん輩を呼ぶと言い始める。
自衛隊は県知事の了解が要るのですぐには来られないといっていたが、機動隊はすぐ来る。
全く解決できなかった俺には出番など無かったのだ。
しかし、未確認事件班は機密扱いの為表向きに俺は、事件の担当本部長として振る舞うしかなかった。
「これほどの規模の霊障は我々にとっても異常で経験がないほどだ、解らなくて当たり前ですよ。我々ですら、もしかしたら位にしか思っていなかったのだから」
と未確認事件班班長に慰められたのは……特に悔しかった。
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